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追放したんでしょ?楽しく暮らしているからほっといて  作者: だましだまし


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9/28

一方、セドムの従者

第二王子付きの従者となって早3年と半年ほど…。

おかしい。

近頃そう思うことがもの凄く増えた。


第二王子セドム様といえば、日常はちょっぴりお茶目で天然というか…少し抜けていらっしゃるけど親しみやすさがある方。

仕事となれば一転いつの間にか書類を終えてらしたり、王太子様の側近たちが気付かないような点まで配慮し気を配るような細やかなサポートが出来る優秀な方…だった。

そう、過去形。


あのパーティからおよそ一週間。

どうも優秀さの面が陰を潜めっぱなしなのだ…。


執務室へ向かっている最中、侍従のナヤード様を見掛けた私は王太子様の使いから渡された手紙を伝言付きでお渡しする。

「とにかく急いでくれ、と必ずお伝えするようにとの事でした」


それを聞いたナヤード様は眉間に皺を寄せ、ため息を吐きつつ頷いた。

「分かった…お伝えしよう」

まるで苦虫でも噛み潰したかのような表情だ。

「何かあったのですか…?セドム様、具合が悪いようには見えないのですが最近仕事を溜めてらっしゃいますよね…?」


私は今のように手紙などのやり取りでひとっ走りして離れる事はあるが基本的にメイドたちと共に命じられた雑用をこなしたり近くに控えている事が多いのでナヤード様よりプライベートな時間は共に過ごすことが多い。


そこで最近時々「ん?」と思う…何か引っかかるような発言が増えた。

そして机に積み上げられていく未処理の書類の量が不自然なほどに増えているのである。

今まで私室に書類が積まれるなんて滅多に無かったのに。

国王様不在で余程お忙しいのかと推察したがその割に疲れてる様子は感じない…。


一言で纏めると最近のセドム様には違和感がある。

私はその原因を知りたかった。


「ウィル殿…少しボヤいても構わないだろうか?」

私は近くの従者控室に彼を招き入れお茶を差し出した。

「休憩されても良いと思います。私も一休みしますので」

頭でも痛むのか眉間をグリグリと指で抑えながら礼を言いつつナヤード様が座った。

「これは夢の話なのだが…」

冒頭に付ける『夢の話』というのは保険だ。

不敬罪になるような内容ということに私は思わず唾を飲み込む。


ナヤード様の話すセドム様は酷かった。

今までの仕事ぶりはなんだったのかと思うほど足を引っ張り続け、無茶を仰っている。


今まで直接の補佐に就いていたのは婚約者であったディボラ・エムセイノ侯爵令嬢だったが、今はリーナ・ファミー伯爵令嬢を就かせているらしい。

勝手に、独断で。


この直接の補佐というのは第二王子と同等、つまり王族向けの仕事を共にするポジションである。

本来は王に許可された婚約者や親族が務める席だ。

それへ独断で令嬢を座らせるなど、まずそこから言語道断。


そしてそれからはもう最悪だという。

支離滅裂も通そうとするし、仕事はほぼ全て側近や侍従たちでこなすしかない状態だそうだ。


しかし王子やそれに準じた人の確認や判断がいるものも多い。

それらの仕事は溜まっていく一方で執務室に置いてると邪魔なので私室に積まれるようになったのだという。

サインや確認印を押すだけの仕事はするらしいが、何も内容を見ずにサインしてしまう有り様で…そこまで言うと頭を抱えて突っ伏した。


特にリーナ嬢の思いつきやワガママを通そうとするので執務室は混乱に次ぐ混乱でてんやわんや、なのに当の王子は異常事態の自覚がない。

もう…ダメだ…私はセドム様を見誤っていた…。

突っ伏したまま唸るようにナヤード様はそう漏らした。


「ウィル殿…夢の話のことだが誰にも言わないでくれよ…」

ガックリとした様子で執務室に戻るナヤード様を見送り本当にセドム様がダメなのか?ダメなのはリーナ・ファミー伯爵令嬢だけでは?とあれこれ想像しながら私も掃除のためセドム様の私室へ戻る。


すると執務室におられるはずのセドム様がいるではないか。

「おぉウィル、どこに行ってたんだ?」

「申し訳ありません。執務室まで王太子様の使いからのお手紙を届けに行っておりました」

慌てて腰を折り、暗に王太子様からセドム様へお手紙が届いている事を伝えたのだがその返しは「ふーん」と素っ気ないものだった。


おかしい。

以前ならすぐ確認するなど気にされたのに。

そんな違和感を私が抱いていることなど気付かれることなく楽しそうに私に命じられた。

「ウィル、今日からリーナの従者になってやってくれ。お前がいいらしい」

「はい…?あの…それはファミー伯爵に仕えよということでしょうか…?」

まさかの城勤めクビ宣告に私は思わず動揺してしまう。

しかし違った。


「いずれリーナを婚約者に据えるから城に滞在してる間の世話をしてやってくれ」

え、どうしよう。理解が追いつかない。

王子の婚約者を決めるのは王の裁量だ。

彼女が次の婚約者になると内定していたなど聞いた事などないのだが?まさか勝手に言ってる…?

「あの…その人事をお決めになられたのは…どなたで?」

「? お前は俺の従者だろ?俺の一存で決められる相手だろうが」


あぁ…ダメだ。この方、分かっていないのか…。

王宮勤めの使用人の人事が第二王子の一存で自由勝手にできるわけないではないか!



あのパーティから今日で一週間。

追放先がケーノ大平原ということは国境を越えて恐らくまだ2日くらい!

今ならそう遠くへ行ってないはずだ!

探してディボラ様にお戻り頂かなくては…!


私は王太子様に陳情すべく他の使用人の声も集めるため走り出した。

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