役割分担
猪を捌く前にそれぞれの家で預かった荷物を1人分づつ出していく。
部屋割りはまだ決めてないから大部屋の端に並べておいた。
「丁度お願いしようと思ってたんです」
先ほど台所に向かったラナが出したばかりの荷物を解き始めると、なんとフライパンが出てきた。
「調理器具、一応一通りはあるみたいなんですが折角持ってきたので慣れたのを並べておきたくて」
驚く私にニッコリと微笑んだ。
まさか調理器具を持ってきてるとは…思いもよらない準備だわ!
私も荷物から解体用のナイフを取り出す。
結界があるとはいえ入口に血が落ちるのも良くないと思い裏へ回って驚いた。
木が倒れてる…根本がスッパリと切れて。
「あら?アリア、ここで捌くの?」
涼しい顔で声をかけてきたのはディボラ様。
「もう少ししたらこの辺りが広くなるわ」
そう言ってスッと手をかざす。
『風の刃』 ズザンッ…バサバサザザ…
ディボラ様の呪文が聞こえた直後、切り倒されていた木の上部、葉が繁っていた部分が切り離された。
『風の小刀乱舞』 シュンッ!ザンッ!ザザッ…ガサガサガサ…。
枝がキレイに落とされていく。
『竜巻炎舞』 ゴアアァァォ…パチパチパチ…ゴォォ…
切り落とされた枝や繁みが炎の竜巻に巻き上げられ燃えていく…。
いや!魔法、万能だなっ!!!
あとには立派な丸太が残されていた。
てか既に3本転がってた。コレ、4本目か…。
「ふう…さっき魔力補充に半分近く魔力使っちゃったから少し疲れたわ」
辺りを見渡し一息付かれてるけどレリアーナは16%で魔力が尽きたって言ってたような…。
呆気にとられ眺めていたら速く肉を捌けと言われてしまった。
ディボラ様の作業の邪魔にならないように少し離れた所で解体を始めていく。
ある程度捌いた時点で使いやすい肉はどれくらいの大きさかラナに聞くために部屋に戻ると大工道具を持ったサマナとすれ違った。
「え…誰が使うの?」
「さあ…でもディボラ様が必要っておっしゃるの」
そういえばディボラ様は丸太を作って何をされているんだろう…。
肉のサイズを聞きに行くとレリアーナがラナに採ってきた野草を渡していた。
「あ、アリア!本当に私達神様に愛されていますわ!この野草、とても美味しいんですの!サラダにも出来ますのよ」
台所は既に美味しそうなにおいが漂っている。
ラナは保存食をさらに加工してスープを作ってくれていたらしい。
「この小屋、すごいんです!蛇口から水が出るんですよ!」
ラナはスゴく感動していたが私が顔に「?」を浮かべてるのを見て脱力されてしまった。
ピンと来なかったが王都ならまだしも水道の整備がないこんな所で水が出る不思議さを説明書を読んでいたサマナが教えてくれる。
「とにかくスゴイの…これが量産品の魔道具って信じられないくらい。色々備え付けられてるし、狭いのさえ我慢出来るなら王都より快適に暮せそうですよ。魔力補充が出来なきゃ終了ですけど…」
肉のサイズを確認し、切り分けた肉をラナに渡した残りは干し肉か燻製にでもしようかと切り分けているとディボラ様がこちらへ来られた。
「保存のために凍らせようかと思って」
この人、本当に万能だな…。
塊肉はすべてお願いし、ハンパな部分だけ薄くして干し肉にしようかとラナに塩を貰いに行くとラナとレリアーナがベッドメイクをしていた。
え?ベッド、増えてる…?
「ディボラ様が作られて…ちゃんと木の乾燥もしてあるから虫の心配もないわよって笑ってらしたんだけど…」
「そういう話じゃないですわよねぇ?」
二人とも苦笑いだ。
え?あの人、侯爵令嬢なのに…逞しすぎない?
「野営用の圧縮ベッドマットが見えたから勝手に使わせて貰いましたよ」
そう言いつつサマナが木の枝を手に部屋に来た。
「クジなんで引いて下さい。ディボラ様が一人部屋、あとの2つを私達で使うので組み合わせをクジで決めましょう」
結果、私とレリアーナ、サマナがラナと部屋を使うことになった。
塩を手に日が暮れて薄暗くなってきた外を駆け足で進み小屋の裏手にある肉の元へと急ぐ。
「あら?まだ何か作業があったのかしら?」
大きい木の板に凍った肉、畳まれた皮、そして見るからにカラカラに乾燥した肉のスライスを乗せ、ディボラ様が運んで来た。
「お持ちします!!」
慌てて手を伸ばすとヒョイと板を上に上げられる。
「身体強化してるから平気よ。薄いお肉と皮も乾燥させるで良かったのよね?」
今までの令嬢としての生活より生き生きとしていらっしゃるディボラ様…。
様子を見に来たレリアーナも呆気にとられている。
魔力持ちは便利だな、スゴイななんて思いながら小屋に入ろうとした時、レリアーナにグイッと引っ張られ呼び止められた。
「魔力持ちが皆ああだとは思わないでくださいね?ディボラ様が規格外ですの!私には無理ですからね?」
同じ魔力持ちとして一括りにされては堪らないと思ったのかレリアーナの目が必死でちょっと怖い。
その勢いに「違うの?」とは聞けず私は無言でコクコクと頷くしか出来なかった。




