追放の地
国境の門から外に出る事でやっと第二王子の寄越した者たちと離れることが出来た私は大きく伸びをした。
「皆さん…巻き込んでごめんなさい。でも、あまりにも腹が立って我慢出来なかったの…。皆さんの事はきちんと隣のザナー国の親戚に保護してもらいますから安心なさって下さいませ…」
申し訳無さそうに私達に頭を下げられるディボラ様。
「気にならさらないで下さい!実は少しワクワクしてるのです」
「それに我が国の恥をご親戚とはいえ他国に漏らすのは…本当、恥だわ…恥ずかしいですわ」
「どうか共に居させて下さい」
「守って頂く事になるかもしれませんがお役に立てる事もあるかと思います!」
私達は口々に離れるつもりがない事を口にする。
「実は私、ここには何度か家族で来ておりまして…。ディボラ様、身を潜めますか?所在を明らかにしておきますか?」
私の言葉に皆がどこか納得したような顔をする。
そして所在を明らかにするならケーノ大平原の中にはどこの国にも属さない冒険者の村があると聞いたことがあるので探しだしそこで滞在すればいいと考えていた。
が。
「…潜むことも出来るの?」
ディボラ様の意外な返答に皆の視線が私に集まる。
私はニコリと笑ってガナート国の国境門のある壁に沿った方向を指した。
「あちらに…あそこに森があるのが見えますか?」
私の指差した先には遠目に木々が見えている。
「ここから1時間近く歩けばあの森に着きます。あの森の奥には『惑いの森』と呼ばれるダンジョンがあるのですが、浅い地は魔物も居ますがほぼ普通の森です。ダンジョンへ行くルートから外れた場所ならば潜んで暮らすのに良いのではないでしょうか?」
こうして私達は森を目指すこととなった。
歩きだして割とすぐに冒険者たちがテントを張っている拠点を通りがかる。
「ここならテントを張っても魔物に襲われにくそうですね。着替えませんか?」
そう言ったのはサマナ。
確かに冒険者とすれ違う度に視線を感じる。
女ばかりで身なりの良い格好をしているのだから襲ってくれと言っているようなものかもしれない。
私達は彼女の使用人たちが用意してくれた服に着替えた。
「流石ローリー家の使用人だわ」
レリアーナが感心したように声を上げる。
「それにラナ、スゴイわね。こんな着慣れない服の着方も知っているのね!」
自分の家が用意したのにサマナは1人で着ることが出来なかった。
私はなんとか着替えられたので、ラナの見様見真似で皆の着替えを手伝う。
ローリー家の使用人たちはただの平民服も用意してくれていたが大半が冒険者用の衣服を準備してくれていた。
鞄の持ち主として魔力を通している私が手を突っ込むと頭に何が入っているか浮かんで取り出せるのだが、布袋ごとに上下1セットづつ入っていたので取り出しも楽だった。
ついでに皆が用意した持ち物を確認すると残念ながら皆の荷物の大半である衣服は役に立つ機会が無さそうだ。
ふと、ディボラ様の屋敷で危険を犯してまでサマナが使用人に用意させ詰めたものは何なのだろうかと確認する。
するとドレスが一組の他は歩きやすそうな靴と主に下着類だった。
なるほど、確かにディボラ様もこれは自分のを使いたいだろう。
森についた私達は木々と平原の境に沿って歩みを進める。
ダンジョンの入口へと続く冒険者たちに踏み分けられ出来た森の奥へと続く道を素通りし、岩がゴロゴロと落ちている地帯が見えてから森に踏み入った。
「どこかを目指して歩いてるんですか?」
ラナが不安そうに聞いてくる。
「確かあの岩のある地帯の近くに小屋を見たことがあるの」
小屋を探しながら奥に入り過ぎないよう、魔物や獣を警戒しながら歩いていると「あっ!」とレリアーナが声を上げた。
皆に緊張が走るが当の本人は嬉しそうに駆け出すではないか。
「ちょっ…!離れたら守れないよ!」
慌てて全員で追いかけると急にしゃがみ込む。
追いついた私達を満面の笑みで振り返り迎えた彼女の手には何やら摘まれたばかりの植物が握られていた。
「アリアさん!袋!この服が入ってた袋を出して下さいませ!」
目をキラキラさせているレリアーナに気圧され渡すと嬉しそうにまた残りの似た草を摘み始めるではないか。
「レリアーナ…?」
普段比較的大人しい彼女がテンション高く急に謎行動を取り始めた事に日頃冷静なサマナが戸惑っている。
「これは薬草なんです!すごく効能が高くて高価な物なんですよ!」
近くにまだ生えてないかと探すレリアーナに「手伝います」とラナまで加わってしまった。
あれ?もしかしてディボラ様も視線で草探してない?
「あの…とりあえず…小屋、探そ?」
こんな危機感も不安感も無い私達だけど一応追放された初日である。




