追放先
各家を回り、マジックバックを持ってこられた事を伝えるとまぁ喜ばれた。
どの家も使用人総出で荷物を追加で用意し、大慌てで鞄に突っ込んでいく。
そして、ディボラ様の家に行く前に一番うちから遠いキュアン子爵家に行くと一番始めに寄ったローリー子爵家の使用人たちが馬で訪ねて来た。
「良かった!間に合った!」と言いながら使用人たちが馬に積んでいた荷物を私に預けてくるので布袋ごと鞄に詰めていく。
なんでもサマナが一番はじめに立ち寄ったのが自分の家だと知ってすぐに買い物の指示をしたらしい。
「平民の服があった方が良いでしょう?マジックバックがあるって言うから街で買えるだけ買ってきて貰ったの」
そしてディボラ様の家には第二王子の手の者がいるだろうとここ、キュアン子爵家に持ってくるように指示していたらしい。
「かっしこ…」
サマナは物知りで私達の中では一番賢いとは思ってたけど…え?私が脳筋気質なだけ?
エムセイノ家の周りは若干物々しい。
なんと第二王子御本人がいた。
「本当に親に挨拶したら出ていくか見張るためにいるんだ!驚いただろう!?」
ドヤ顔で偉そうにしている王子の顔が何か腹立つ。
「少し時間を稼いで」とサマナが耳打ちし、マジックバックを持ってそっと気配を消す。
サマナは隠密…まではいかないが侍女の中では情報収集を担当する予定なので気配を隠して移動するのが上手い。
どう時間を作ったものかと思っていたがサマナが私達の間から消えた事に気付いたディボラ様が第二王子が偉そうになじってくるのを上手く長引かせてくれたので私達は並んで立っているだけで良かった。
やがて満足したらしい。
「ふん!今更しおらしくしても遅いがな!」
などとご満悦になり私達に馬車へ乗るよう命令してきた。
「ん?一人足りなくないか?」
ヤバい、バレた!?
「ここにおりますが?」「うわっ!!!」
ギリギリセーフだったらしい。
「セドム王子殿下、《《国際問題》》になっては事ですのでケーノ大平原の国境へ参ろうかと思いますが宜しいでしょうか?《《国際問題》》の心配は無い地が無難だと思いますので」
アディがくどいくらい『国際問題』を強調する。
ケーノ大平原というのはどこの国にも属さない大陸のほぼ真ん中にある中立地帯だ。
ここなら確かに国際問題に発展する心配はない。
何故どの国にも属していないかと言えば複数のダンジョンがあるから。
ダンジョンは資源でもあるが放置していると中から魔物が出てきて災害の元凶ともなり得る所。
近場に幾つもある地は世界広しといえここだけだ。
そこで各国は複数のダンジョンを抱え、魔物の徘徊が当たり前のケーノ大平原は中立地帯とする条約を交わした。
危険はあれどダンジョン外の魔物は素材を、ダンジョン内の魔物は宝石や鉱石、アイテム等を得られるのでどの国もケーノ大平原と隣接する国境の街や村は冒険者で賑わっている。
どうせ追放されるなら自由に動きやすいケーノ大平原と接した国境が良い、というのはアディのアドバイスだ。
魔物はいるが国境沿いに移動すれば最小限のリスクで周辺の国にも行ける。
それに必要であれば冒険者も雇いやすい。
「お…おう、ケーノ大平原…いいんじゃないか?国際問題は…うん、マズイな…」
ダンジョンと魔物徘徊の地というイメージが強いからかセドム王子は逃げ腰だ。
そんな風にいちいちビビるなら国外追放なんか言わなきゃいいのに。
「アディ…お前…姉もいるのに中々に冷酷なんだな…」
ビビるセドム王子ににっこり笑顔を返すアディ。
おーおー王子の顔、引きつってるわ。
アディは私も魔物討伐が出来ることを知ってるからセドム王子が思うみたいに冷酷なわけではないんだけど…そりゃ黙っておくよねー。
そんなビビってた王子も不安げな様子を隠し切れないレリアーナ、サマナ、ラナの三人を見て復活したらしい。
「ふふふ、許しを乞うなら今のうちだぞ!?次のパーティの時に僕とリーナに跪き誠心誠意謝罪するというならチャンスを与えてやってもいいんだがなぁ!?」
腹立つ顔でふんぞり返ってのたまった。
三人は…チラリとディボラ様のお顔を見てから目を閉じキュッと唇を引き締める。
「ディボラ様の名誉の為にも覚えなきことで謝罪など出来ません」
「私もです」「同じくですわ」
三人の決意を帯びた物言いに気圧されるショボ王子。
「ふんっ!そんな死にたいならサッサと馬車に乗れ!国境の外に放り出してやる!」
こうして私達が追放される先はケーノ大平原と決まり、セドム王子の配下に守られながら?狭い馬車で向かうこととなった。




