見つかった小屋
ガサガサ…ガサッ!
茂みが揺れる音に緊張が走る。
皆を背に回らせ剣を構えて襲撃に備え…飛び出して来ると同時に一閃を放った。
ジャシュッという音と共に血が吹く。
ドサッと倒れ込むように地面に伏したのは少し小柄な猪だった。
「猪とはツイてます!」
私は顔が半分裂けているその猪の首を血が抜けるよう切り落とす。
「「ひっ…!」」
何人かが小さく悲鳴を上げた気がするが貴重な食料だし気にしない。
「血の臭いで魔物が寄って来ると危ないわ。早く小屋を探すわよ」
血を切って鞄に詰めるのを見届けたディボラ様が皆に声をかける。
その言葉でやっと草摘みが終わった。
ふと猪の出てきた茂みの奥を見ると何かがこんもりとあるように見えるではないか。
「あれ、そうじゃないですか?」
ラナも見付けたらしい。
やっと見付けた小屋は思っていたより劣化していて何とか建物の形を保っているようなボロボロな状態だった。
しかし恐る恐る入ると小屋と言うには中が広く、部屋は大部屋が1つに小部屋が3つもあり、一番大きな部屋にある台所スペースには立派なカマドや石窯まであった。
かつて仮住まいでなく誰かが暮らしていた事が伺える。
「んー…外から見た大きさと中の広さに差がありますね…。この小屋、恐らく魔道具ですよ」
小屋をひとしきり見て回ったあとサマナが記憶を辿るように言った。
魔道具とは私の持っているマジックバックに似て非なる物だ。
ダンジョンで手に入る事が稀にあるのは同じだが、もっと魔力を持った人間が多く魔法が身近だった時代は人の手で作られもしたらしい。
旧時代の遺物としてどこの国も見つかれば大体王家が保管しているほど貴重なものである。
「魔道具ならどこかに核があるはずなので探しましょう」
「核?それってどんなの?」
サマナに聞くとため息をつかれてしまった。
「学園時代に授業で習いましたよー。丸い宝玉のはずです。磨かれた魔石が核として使用されている…でしたよね?」
ラナが苦笑いで教えてくれるが覚えていない。
「ラナ、合ってますわ。アリア様、丸いツヤツヤしたものを見付けたら良いのですわ。このサイズの魔道具ならかなりの大きさのはずですもの」
ピンと来てない私にレリアーナも助け船を出してくれる。
魔物が出ても対応出来る私とディボラ様が外を、他の三人が中を探すとディボラ様がそれらしいものを見付けた。
それは丁度顔位の高さにあり、うっすらと光っている。
ただ、それは今にも消えそうな弱々しさだった。
「こんなにも荒れるくらいだから相当古いだろうに…いつからあるのかしら?よく魔力が持ってたわねぇ…」
観察しながら感心するサマナにレリアーナが
「そう言えばダンジョンのある地域は空気中に混じっている魔力が濃いって昔本で読んだ気がしますわ…吸収してたとか?」
と返す。二人ともよく分かるななんて感心する私。
「確かにこの森、魔力がそれなりにあると思うわ」
強い魔力持ちは魔力を感じることが出来るという。
ディボラ様がおっしゃるなら間違いないだろう。
「じゃあ…もしかして何らかの理由で主が帰らなくなったけど森の魔力を吸収して形を保ってたのかな…。魔力が尽きたら消えるだろうし…。ディボラ様、これに魔力を込められますか?」
「やってみるわね…。どうやるの?」
ディボラ様がペタリと手鏡ほどの大きさの核に触れたけど何も反応を示さない。
マジックアイテムであるこの鞄のように触れるだけではダメらしい。
「すみません、そこまでは分からないです…」
困るサマナにレリアーナが分かるかもしれないと答えた。
実はディボラ様以外にレリアーナも実用的な量の魔力を持っている。
「私、魔法薬を作る時に魔力を込めるから…それと同じなら出来ますわ」
そうしてレリアーナが魔力を込めると消えそうだった核の光がぼんやりしたものとなった。
なにやら数字が浮かび動き…そして『16%』となったところで数字が止まった。
「…もう…魔力がほとんどありませんわ…」
レリアーナの魔力切れで補充されなくなり止まったらしい。
レリアーナが手を離すと浮かんでいた数字も消える。
「レリアーナ、私にもやり方を教えてくれる?」
「はい…!まず体内を循環する魔力を手に集めてー…」
私も、自分の魔力が少しでも足しになればと思い一緒に聞こうと思ったが説明の冒頭部分で断念する。
元の魔力が少なすぎて体内の魔力なんて相当調子の良い時しか感じないからだ。
サマナとラナもそうなのか目が合ったとき、静かに首を振っていた。
ま、普通そうだよね。
パァァァ…。
ディボラ様が魔力を込め始めると宝玉のぼんやりした光が強くなり再び浮かんだ数字がすごい速さで再び増え始める。
やがて『100%』と表示が出た時、数字の下に再起動を問う一文が現れた。




