美味しい話
「さいっふぉお…」
蕩けそうな顔でとろけるチーズがたっぷり乗った温野菜とソーセージの盛り合わせを頬張っているラナはちょっと小動物のようだ。
私もクリームのシチューを頬張り、その濃厚さに驚く。
「こんな美味しいチーズ、食べた事ないわ…!」
ディボラ様もラナと同じ物を食べて感激していた。
「そうでしょう!ここは大平原にある3つの村で一番乳製品が美味い店なんすよ!」
遠慮なく大きい肉の塊を注文して食べてるガナが嬉しそうに笑う。
「ここ、本当は案内しないんす。目の前に牛を置いてる店のがキレイで新鮮な牛乳を使ってるように見えますから」
そういえば村の中に牛がいたのを遠目に見た。
「ここは馬車の停留所からも遠いし知ってる人だけのお店なんですけどレリー様には召し上がって欲しくて」
ターナもシチューを食べながらニコニコと話す。
お肉がゴロゴロしている一方野菜が少なめなのは肉は魔物から穫れるけど野菜はどこかの国境を越えて街まで仕入れに行かなきゃいけないかららしい。
「なんでこんなに美味しいの?」
レリアーナがお肉ときのこのバター焼きを頬張りながら二人に聞くと二人は顔を見合わせ何か迷っていた。
目線で何かやり取りし、決着がついたらしい。
「実は…ここの牛は魔物の血が交じってるんすよ」
「「「「「!?」」」」」
「ほらー驚きなすったぁ~。だから止めとけってのにー」
ターナが窘めるようにガナを責める。
「だってよぉ~…魔物の肉は普通に食うのに乳はダメっておかしいだろうよ~」
ガナはしおしおとショボくれながら小さく肉にかぶり付いた。
凹んでも肉は食べるのね、なんて思うと笑ってしまう。
「ビックリしたのはそこじゃないの。魔物なのにお乳をくれるんだと思って」
笑ったついでにそう言うとガナの元気が復活した。
「あぁ!混血だけど気性は大人しいらしいんすよ!草だけでなく植物系の魔物も喰っちまうらしいすけど…人間には懐くってここの主人が話してました!」
魔物との混血牛…それは確かに珍しいだろうな。
この堪らなく美味しいクリームは是非広まって欲しいけど難しそうだ…。
「そういえばターナはどうして馬車に乗ってたの?」
ラナが不思議そうに聞く。言われれば確かに。
「あー…たまに稼ぐためにダンジョンに潜るんです。この辺じゃ森のダンジョンが一番稼げるんで…。でも混んでるともっと酔うから野宿して朝の空いてる馬車で戻ってるんですよ…」
「情けねぇ話し…オレよりターナのが強いんで…」
なるほど、死活問題…。
「そだ!ご馳走なったお礼に…コレ!見たことありやすか?」
ガナが沢山付いてるポケットの1つから取り出したのは爪の先ほどの小さな魔石だった。
「魔石って聞いたことありやすか?結構貴重で珍しいんすよ!ちっこいですが良かったらどうぞ。魔物が出た時に投げれば魔物はコイツを追っかけますからお守りになりやすよ!」
そういってその魔石をレリアーナに渡そうとする。
「貴重ってことは大事な収入源じゃないの?」
ディボラ様がガナを止めた。
「まぁ…そうなんすけど…このサイズなら幾らにもならないんで…」
何とかレリアーナの為に渡したいと思っているのかガナも引かない。
義理人情に厚いタイプなんだろうか?
「なら換金方法を教えてくれない?」
ディボラ様はそう言うとおもむろに鞄から大きめの小石ほどの魔石を取り出した。




