表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
縁の下に咲く花達  作者: 光希 佳乃子
25/31

第24章


午前中、生放送のリハーサルと打ち合わせがあった。


桜さんも「ERIS」のメンバーも、いつもと変わりなく打ち合わせに参加した。


俺も、桜さんたちよりも少しだけ遅れて打ち合わせに入った。


いつもと違うのは、リュウの顔色が悪かったこと位だが、ここ何ヶ月も、リュウの調子が悪かったり、心ここにあらず、といった様子なので、周りのスタッフは心配しつつも、その状態になれつつあった。


何よりも、リハーサルや本番が始まればリュウは普段と変わらないパフォーマンスを見せていた。そう言う意味では信頼されているのだ。


打ち合わせ現場の俺達の側には、杉崎さんもいた。


杉崎さんも、いつもとさほど変わらない様子だったが、その目は少しだけ、充血しているようだった。泣いていたのだろうか?


それとも、「ERIS」のメンバーに何か説得されたのか、それは判らない。


いずれにしても、せめてこのコラボ企画が終わるまでは、杉崎さんと一緒に頑張っていきたい、と思った。


それは、桜さんのマネージャーとして。一緒に一つの物を仕上げてきた仲間として。


企画終了の時を、一緒に迎えたかった。




やがて、打ち合わせが終わり、桜さんと「ERIS」の曲のリハーサルに入った。


さっき、あんな事があったので、桜や「ERIS」のメンバー達の動揺や精神状態が心配だったけど、それは杞憂だったようだ。


リハーサルだから、多少、身体の力が抜けている様子だったが、何の問題もないリハーサルだった。


俺と憲一さんは、カメラに映らない場所で、並んでリハの様子を見ていた。


桜さんは、さっきまでの表情とは打って変わった、ピアニストの表情をしてピアノを弾いている。いつ聞いても、人の心を掴み、そして心が洗われる演奏だ。


そして、その伴奏に“ERIS”の歌声が重なる・・・この曲も、何度聞いただろう・・・リハーサルや本番、それ以前のレッスンもつき合っていたので、普通じゃ信じられないほどの回数、聴いている。


何度聞いても、心に響き・・・飽きることがない。


「この曲も・・・あと少しだな」


「そうですね」


憲一さんの言葉に、俺は頷きながらそう答えた。


「なんかさぁ、長いようで、あっという間だったな」


この企画が始まったのは春先。確か冬の寒さが和らいだ頃だった。そして、今は、もうすぐ夏だ。


この何ヶ月か、この企画とずっと向かい合っていたが、俺達が向かい合っていたのは、これだけじゃなかった。


七海さんと知り合って、彼女が襲われて・・・その事件や、犯人を捜して・・・


まだ、何も終わっていない。


企画の成功も、七海さんの事件の真相も・・・七海の身の安全も・・・まだ、何一つ、手に入っていない。


そして俺は・・・それらのどれも、落としたくない。全て、手に入れたかった。


自分自身の為に・・・


「・・・昼休憩・・・」


憲一さんはぽつり、と言った。俺は憲一さんの顔を見た。


「俺は桜に付きそう。

桜の身に何かあったら大変だから、な。杉崎さんは、“ERIS”の側にいると言っている。

それから・・・大沢から伝言だ」


大沢。


そう言われて俺は息を呑んだ。


憲一さんは、俺の耳に口を近づけ、そっと耳打ちした。


数秒後。


俺は頷いた。すると憲一さんは、何かに満足したように、頷いた。


「頼むぞ」


「はい」


それだけ、答えた。そして胸の内で、今憲一さんから貰った情報をくれた大沢さんに、心から感謝した。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ