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あの日から数日後。

服飾店から「ドレスと上着が仕上がった」との連絡があり、私とレナードは、次に二人で出席する予定の王宮夜会を心待ちにしていた。

彼の色である赤と金のドレスに袖を通すのが、本当に楽しみだった。

レナードも騎士団の激務の合間を縫って、私に「愛している」「早く君の赤ドレス姿が見たい」と何度も熱烈な手紙を届けてくれていた。彼の情緒も今は落ち着いていて、穏やかな日々が流れていた。

――しかし、破滅はあまりにも静かに、そして完璧な形で訪れた。

「エリカ、大変なことになった……!」

ある日の午後、実家の兄が青い顔をして私の部屋に飛び込んできた。その手には、王宮から届いたばかりの公式な書状が握られている。

「レナードが……レナードの所属する王宮騎士団の第一分隊が、国家反逆罪の疑いで拘束された!」

「え……?」

頭の中が真っ白になった。

レナードが、国家反逆?

そんなはずはない。彼は誰よりも真面目で、騎士としての誇り高く、現国王への忠誠を誓っていた。

「何かの間違いよ! レナードがそんなことをするはずがないわ!」

「分かっている! だが、彼の分隊が管理していた機密文書が、敵国へ流出した証拠が見つかったらしい。しかも、その流出経路の書類には、ご丁寧にレナードの直筆のサインと、彼の実家である子爵家の刻印が押されていたんだ……!」

兄の言葉に、全身の血の気が引いていくのが分かった。

サインと、刻印。そんなもの、レナードが自ら押すはずがない。誰かに嵌められたのだ。

「そんな……じゃあ、レナードは今どこに!?」

「王宮の地下牢だ。面会は一切許されていない。子爵家もすでに兵に囲まれ、家宅捜索を受けている。このままではレナードは処刑、子爵家は取り潰しだ。……そして、我が男爵家も、反逆者の婚約者の実家として連座を免れないかもしれない」

世界がガラガラと音を立てて崩れていく。

あの優しく、気高く、私なしでは泣いてしまう私の騎士が、冷たい地下牢に囚われている。

今頃、彼はどれほどの恐怖に震えているだろう。「エリカに捨てられる」「一人にされる」と、暗闇の中で絶望しているに違いない。

「私が、王宮へ行って説明します! 彼はそんな人じゃないって!」

「無駄だ、エリカ! 男爵家の力では王宮の門番に追い返されるのがオチだ。我々には、彼を救う手立てが何一つないんだ……!」

兄の悔しそうな声が響く中、私はただ、自分の無力さに涙を流すことしかできなかった。

私がどれだけ彼を愛していても、彼の揺りかごになろうとしても、この圧倒的な現実の前では、抱きしめてあげることすらできない。

その時だった。

我が家の執事が、信じられないほど震える声で、部屋の扉を叩いたのは。

「――旦那様、エリカ様! 大変でございます。ヴァ、ヴァルトシュタイン公爵閣下が、当家にお見えになりました……!」

アレクセイ・フォン・ヴァルトシュタイン公爵。

貴族の頂点に君臨するその御方が、なぜ、反逆者の婚約者がいる我が家へ?

混乱のなか、父と兄、そして私は、生きた心地がしないまま応接室へと向かった。

扉を開けると、そこにはあの日、卒業パーティーの出窓から見下ろしていたのと同じ、極夜の海のような瞳を持つ男が、優雅にソファーに腰掛けていた。

「突然の訪問、許してほしい。男爵」

アレクセイ公爵は、美術品のような顔に完璧な紳士の微笑みを浮かべ、怯える私の家族を一瞥した。そして、その冷徹な視線を、真っ直ぐに私へと定めた。

「単刀直入に言おう。……君の哀れな狂犬を、救ってほしくはないか?」

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