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いつもの笑顔、特別な日

待ちに待ったデートの日の朝、私はいつもより早く目が覚めた。

「エリカ様、今日のお召し物はどちらにいたしますか?」

「そうね……レナードは、あまり派手なものより、落ち着いた上品な色合いが好きなの。この淡い若草色のワンピースにしましょう。髪も、彼が可愛いと言ってくれた編み込みにしてもらえる?」

鏡の前に座り、私は専属のメイドに念入りに支度をお願いした。

髪の結び目一つ、リボンの位置一つにも妥協したくない。少し気合を入れすぎて、メイドがクスリと笑うほどだったけれど、これには私なりの理由がある。

レナードは王宮騎士団の分隊長として、毎日、血の滲むような厳しい訓練を重ねている。貴重な休みを削って私に会いに来てくれるのだ。そんな彼の前に、半端な見た目で現れるわけにはいかない。何より、私を見て嬉しそうに目を細める彼の顔が見たかった。

仕上がった鏡の中の自分は、いつもよりずっと華やかで、少し気恥ずかしい。けれど、胸の高鳴りは抑えられなかった。

約束の時間ぴったりに、男爵邸の呼び鈴が鳴る。

私はそっと胸に手を当てて呼吸を整え、お気に入りの靴を鳴らして玄関へと向かった。

扉が開くと、そこには背筋をすっと伸ばしたレナードが立っていた。

「……あ」

彼の姿を見た瞬間、私は思わず声を漏らしてしまった。

普段、任務の時は厳格な騎士服、普段の打ち合わせでは落ち着いた上着を羽織っている彼が、今日は驚くほど仕立ての良い、仕草一つで美しく翻る上質な外套をまとっていたからだ。髪も丁寧に整えられ、心なしかいつもより大人びて、息を呑むほどに見栄えが良い。

レナードもまた、玄関に現れた私を見た瞬間、その端正な顔をカッと赤く染めて立ち尽くした。

「エリカ……。その、とても、綺麗だ。君のために新調した貝細工の髪飾りも、その髪型なら、きっとよく映える……」

彼は照れたように視線を泳がせながら、自分の仕立てたばかりの上着の袖に触れた。

「実は、君に格好悪いと思われたくなくて、少し……いや、かなり気合を入れて仕度をしてきたんだ。だが、君を前にすると、なんだか私が浮いているような気がしてくるな」

「ふふ、そんなことないわ。私もね、レナードに可愛いって思ってもらいたくて、朝からメイドを困らせるくらい気合を入れすぎてしまったの」

お互いの顔を見合わせる。

いつもよりずっとお洒落をして、いつもよりずっと緊張して、だけどお互いを喜ばせたいという気持ちが空回りしている。その事実が愛おしくて、私たちはどちらからともなく、小さく笑い声を上げた。

「お互いに、気合を入れすぎてしまったわね」

「ああ、そうだね。……でも、嬉しいよ。君が私のために飾ってくれたことが、何よりも」

レナードはそう言って、いつもの優しい、穏やかな微笑みを浮かべた。さっきまでの緊張が解け、いつもの私たちの空気が戻ってくる。

彼はそっと私に歩み寄り、完璧な所作で右手を差し出した。

「さあ、行こうか。我が最愛の婚約者殿」

「ええ、喜んで」

その手を取った時、私は心から安心していた。

約束さえ守れば、彼はこんなにも優しく、誇り高い私の騎士なのだ。この穏やかな時間が、ずっと、ずっと続くのだと、私は疑っていなかった。

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