ふたりで
窓のない金色の鳥籠の中で、私たち二人の時間は、驚くほど穏やかに、そして深く流れていった。
それは、お互いの魂の傷口を確かめ合うような、静かな対話の時間だった。
アレクセイの強い希望で、私たちは夜、同じベッドに横たわり、そっと手を繋いだまま眠りにつく前のひとときを過ごすのが日課になっていた。
繋がれた彼の大きな手は、かつてのように私を縛り付けるための鉄の力ではなく、どこか子供が母親の温もりを求めるような、切ない優しさに満ちている。
「私はね、エリカ。もっと早くに、君とこうして出会いたかった……」
暗がりのなかで、アレクセイはぽつり、と寂しげに呟いた。
若くしてヴァルトシュタイン公爵家の莫大な権力と爵位を継いだ彼の人生は、華やかな外面とは裏腹に、壮絶な苦悩に満ちたものだった。周囲から向けられるのは、容赦のない過度な期待と、隙あらば引きずり下ろそうとする悪意に満ちた視線ばかり。誰一人として「アレクセイ」という一人の青年の素顔を見てはくれず、ただ完璧な最高権力者であることを求められ続けてきた孤独。
彼の口から静かに語られる過去の苦悩を聞くたび、私は繋いだ手に少しだけ力を込め、彼の痛みにそっと寄り添った。
「私も……レナードの他に、こうして誰かと深く関わることがございませんでしたわ」
私もまた、自分の過去をアレクセイに打ち明けた。
幼い頃からレナードの狂気に囚われ、彼の激しい独占欲のせいで、外の世界や他の人間と関わる機会をすべて奪われていた日々。私の世界にはレナードしかおらず、だからこそ、彼の暴力すらも「そういうものだ」と受け入れるしか、生きる術がなかったのだ。
「私たちは……お互いに、ひどく狭い世界で生きてきたのですね」
「ああ、そうだね。けれど、私は今、この窓のない部屋が、人生で一番愛おしい場所だと思っている。君がこうして、私の話を聞いて、隣にいてくれるからだ」
アレクセイは嬉そうに、そしてどこかホッとしたように微笑み、私の手を愛おしそうに握り直した。
人を許し、受け入れることしか知らなかった私の人間性は、今、レナードの歪んだ依存を甘やかすためではなく、アレクセイの凍えた孤独を温めるために使われていた。
こうして二人で静かに話し合い、お互いを知る時間は、私にとっても、これまでの人生の間違いを癒やしていくための大切な、かけがえのない救いとなっていた。壁の向こうで、釈放された赤色の影が、どのような狂気を孕んでこちらへ近づいているかも知らずに




