タイトル未定2026/05/20 06:40
翌朝マンションから出てきた、マスターと大門。
大門は茶色のランドセルを背負い、緑色の横断バックを持ち、肩には黒色の水筒を下げていた。
マスターの傍らには、黒色のクロスバイクがあった。
黒色のヘルメットをかぶり、黒色の縦型のリュックを背負っていた。
それまで実家の診療所に行くのに、徒歩で通っていたマスターだったが、ここ最近マスターは自転車通勤をしていた。
「今日から遅い帰りだけど、おまちさんが帰った後、一人で留守番できますか?」
「うん」
「大丈夫ですか?」
「七海とジョギングしたいから、七海が帰ってくるまで待ってる」
大門が言った後、大門の友人の游太がやってきた。
「おはよう!」
「あっ、游太君。おはよう」
游太は、大門の側に近寄った。
マスターも大門と同じように、挨拶をした。
「游太君、おはよう」
「おはようございます」
游太は軽く頭を下げて、挨拶をした。
大門と游太は揃って「行ってきま〜す」と言って、肩を並べて歩き出した。
その横を自転車に乗ったマスターが、颯爽と駆け抜けた。
マスターの実家にある診療所は患者を受け入れる準備が整い、診察室の奥の窓際で、看護師の園田亜美と久保由美が、備品の補充や、採血の準備をしていた。
採血の準備をしていた亜美はマスターの診察室の担当で、小柄でハッキリした性格。
備品の補充をしていた由美は、亜美と同じく小柄で亜美より二歳下だった。
おっとりした性格だが、仕事は亜美に引けを取らず、院長の診察室を担当をしている。
仕事上お互い苗字で呼び合うが、二人きりの時は、名前で呼び合っていた。
二人はマスターのことを「先生」と呼び、マスターの父親のことを「院長」と呼んでいた。
備品の補充をしていた由美が言った。
「先生、最近自転車通勤をしているね」
「うん、うん。知ってる?最近の先生、結構筋肉付いてきたんだよ」
「そうなの?先生って、線が細くて華奢なイメージだけど」
「同じ診察室にいるから、わかるんだ。腕とか凄いんだよ」
院長と同じ診察室で仕事をする由美が、うらやましげに言った。
「良いなぁ亜美ちゃんは。先生の診察室で、仕事ができて」
「へへへ〜良いでしょ〜」
「私は院長だから、いつも緊張しているよ」
亜美と由美は、朝から女子トークで盛り上がっていた。
そんな時、二人の背後から大きな声が聞こえた。
「あらぁ~楽しそうね。私も仲間に入れてよ」
亜美と由美は驚いて振り返り、慌てて挨拶をした。
「師長、おはようございます!」
背が高く、ロングヘアーを頭の高い位置で団子にして、白衣を着た紫野緑がいた。
「院長の悪口?私も、混ぜてよ」
イタズラっぽく言う緑に、亜美と由美は笑った。
笑いが収まると、亜美が言った。
「先生最近、自転車通勤をしていて、そのせいか前より筋肉が付いてきたって、話をしていたんです」
「あぁ、確かにそうね」
緑は腕組みをして、頷いた。
「先生、彼女ができたのかな?」
亜美の言葉に、由美が声を上げた。
「えぇ~先生に、彼女ぉ?まぁ、先生に彼女の一人や二人くらいは……でもぉ、先生に彼女なんて……やだなぁ」
「先生の、ファンだもんね」
楽しそうに話をする亜美と由美を、緑は笑顔で静かに見守っていた。
実家の診療所に着いたマスターは、父親の車が置いてあるカーポートの隅に自転車を置き、ヘルメットをハンドルにかけ、自転車に鍵をかけた。
診療所に併設している実家に二階の自分の部屋で着替えをしたマスターは、階段を降りて診療所に行った。
受付と待合室の前を通り、自分が受け持っている診察室に入る。
マスターが受け持つ診察室の奥の窓際で、緑と亜美と由美の三人がいた。
マスターに気がつくと、挨拶をした。
「おはようございます」
「おはよう」
マスターはパソコンが乗った机の椅子に座り、パソコンと向き合った。
緑は亜美と由美から離れ、マスターの側に立った。
「先生、自転車通勤が続いていますね」
マスターは、作業をしながら言った。
「もっと早く自転車に乗ればと、後悔しています」
「看護師達が、言っていたわ。先生マッチョになってきたって。自転車通勤と言い、どう言う風の吹き回し?」
窓際で準備をしている看護師の亜美と由美を、マスターはチラリと見た。
その視線に気が付いた緑は、腰を少しかがめてマスターの耳元で言った。
「わかった。流花ちゃん……でしょ」
「わかっているなら、聞かないでください」
パソコンのキーボードのキーを打つ手を止めず、マスターは冷めたように小声で言った。




