タイトル未定2026/05/20 06:36
大学の講義を終えた流花と友人の速水渚は、トイレの洗面台に立っていた。
流花は手を洗い、渚は鏡に向かってリップを塗っていた。
「佐野君とは、うまくいっているの?」
「友達の延長みたいな感じだけど、楽しくやっているよ」
鏡で自分の顔を見ながら、渚は答えた。
流花と渚と、背が高く都会的な男性二人の佐野と田中は大学で知り合い、四人でいつも行動をしていた。
佐野は出会った時から渚に好意を持ち、自然に渚と付き合うようになった。
リップをポーチにしまいながら、渚は言った。
「大学一年の時だっけ?流花ちゃん、田中君と噂になっていたよね」
思い出しながら言う渚を、流花はハンカチで手をふきながら声を上げた。
「噂?」
「噂になっていたよ。田中君が流花ちゃんに壁ドンしたとか、告白していたとか」
「あぁ、そんなこともあったね」
まるで他人事のように言う流花を、渚は見つめて言った。
「流花ちゃんって、ホント異性に関心がないよね。バイト先のマスターとは、どうなったの?」
流花はハンカチをしまいながら、つぶやくように言った。
「……マスターと、つきあっているよ」
一瞬フリーズをしたように固まった渚は、思わず両手で流花の両肩を掴んで声を上げた。
「つきあっているの?ちょっ、ちょっと!」
渚は流花の両肩を掴んだまま、流花を押しながら歩き、そのまま流花を壁に押した。
その時、トイレの個室から女生徒が出てきた。
渚が壁に流花を押しあてている姿を見た女生徒は、驚き顔で見つめていた。
「誤解しないでね!」
流花は慌てて言い、渚を引っ張ってトイレから出ていった。
トイレから出ると、渚は落ち着きを取り戻していた。
廊下を歩きながら、渚は流花に聞いてきた。
「つきあっているって、いつから?」
「えっと、一年生の途中からかな」
流花達は、既に大学三年生になっていた。
「そんな前から、つきあっていたの?何も教えてくれなかったじゃない!」
「そうだっけ?」
不思議顔で言う流花に、渚はため息をついた。
「もぉ〜なんで今まで、黙っていたのよ」
「お互い忙しくて、会うのはバイトの時だけだし。そのバイトも行ったり行かなかったりだし」
「まぁ、忙しいのはわかるけどさ。教えてくれたって、いいじゃない」
「わざと言わなかったわけじゃないよ」
「まさか、忘れていたとか?」
黙り込む流花に、渚は言った。
「あぁ!やっぱ、忘れていたな!何気にのろけないでよ!」
「のろけ?」
不思議顔の流花に、渚は呆れて言った。
「流花ちゃん、本当につきあっているの?」
「うん……」
「じゃあ、私が選んだ服を着て、マスターと出かけたりした?」
流花と渚が一緒にショッピングモールの服屋の店舗で、渚が流花の洋服を選んだことがあった。
しかし渚が選んだ服は、流花のクローゼットの中に眠ったままだった。
「もしかして、私が選んだ服一度も着ていない?」
渚に図星を突かれ、流花は黙り込んだ。
「あの服、流花ちゃんも可愛い〜って言って買ったじゃん」
「可愛い服だから、思わず買ったけど……」
「あの服着て、出かければ良いじゃん」
「う……うん……」
「マスターと出かける時は、あの服を着て出かけるんだよ」
渚の決めつけるような言葉に、流花は恥ずかしそうにうつむいた。




