タイトル未定2026/05/20 02:30
梅雨時期らしい、どんよりとした曇り空。
大手菓子メーカー水田社内の営業部。
終業時刻が後十分と、せまっていた。
部内には、数名の社員達が仕事をしていた。
その中に金髪に近い茶髪をした、小柄な社員友光ちはるが、自席に座ってパソコンのキーを打っていた。
営業に出ていた社員が、少しずつ戻ってきた。
その中に、無駄にデカい大柄な馬場がいた。
馬場は、自分の席に行った。
「ただいま〜」
「お疲れ〜」
馬場の隣の席のちはるは顔を上げず、パソコンのキーを打ちながら言った。
ちはると馬場は、パソコンのキーを叩き、事務作業に打ち込んでいた。
お互い黙ったままキーを打ち続けていると、ふと顔を上げたちはるが 以前赤井が使っていた、今では誰も使っていない机を見て言った。
「赤井……戻って来なかったね」
「ああ」
顔を上げず、馬場は返事をした。
元赤井が使っていた机は、物置き場と化していた。
「友光、終わったか?」
「うん」
馬場とちはるは帰り支度をして、職場を出た。
外に出ると、静かな雨が降っていた。
ちはるはうらめしげに、どんよりとした空を見上げた。
「嘘ぉ~雨振ってる。傘なんて、持っていないよ」
ちはるの隣で、馬場は傘を広げた。
「ほれ、入れ」
「サンキュ」
なんの迷いもなく馬場の傘にちはるは入り、馬場とちはるは肩を並べて歩いた。
「馬場、用意が良いね」
「もう、梅雨シーズンだぞ。俺は常に、折りたたみを用意している」
黙ったまま歩いていると、ちはるがポツリと言った。
「赤井が出張に出て、もう二年かぁ」
「二年なんて、あっという間だな。まさか、出張先に永住するとはな」
「赤井が、自ら希望したんでしょ。直接、赤井から聞いたの?」
「いや、赤井は何も言っていない」
「どこで、聞いたのよ?」
「俺の情報網を、甘く見るな」
「なぁ〜に、威張ってんのよ」
再び黙ったまま歩いていると、馬場が思い出したように言った。
「スイちゃん、赤井が出張先に永住したこと、知っているのかなぁ」
「さぁ……スイ忙しいみたいで、全然会っていない」
若菜は以前、赤井と付き合っていた。
マスターのことを、いつまでも忘れられない若菜に愛想がついた赤井は、突然の出張の辞令を機に若菜と別れた。
馬場がちはるを見ると、傘から少しはみ出ていたちはるの肩が、雨で濡れていた。
……らしくねぇな。
馬場は、黙ったまま小さく苦笑をした。
「おい、何遠慮しているんだ」
馬場は言いながら、手を伸ばしてちはるの肩を抱き寄せた。
「なんだか、みんなバラバラになっちゃったね。昔みたく、マスターの店で会いたいね」
いつの間にか傷心になっているちはるに、馬場は小さく笑った。




