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転生したスワンプマンは過去の栄光に思いを馳せるか?  作者: 紫 和春


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第49話 スワンプマン

 黒須たちの前に立ちふさがるように、変身した長屋は敵性勢力と相対する。敵の数は、銃で武装した人間だけで約100人、巨大ロボである格闘サポーターは10機ほどだ。


「ようやく俺の本来の力を見せる時が来たな」

「陽介君、まさか一人で戦うつもり……!?」

「無茶だよ、ヨウ君!」


 黒須と高崎が長屋のことを止めようとする。


「心配してくれてありがとう。だが、ここでコイツらを止めなければ、早かれ遅かれこの国は崩壊するだろう。俺がこの国を存続させる楔として示さなければならない」


 そういって長屋はファイティングポーズを取る。


「生み出されたスワンプマン(仮初めの肉体)ではなく、本物の長屋陽介として。あの日から始まった罪を償うために。俺は戦う」


 長屋の覚悟は決まっていた。


「お前、大統領の何なのよ!?」

「大統領を殺す前に貴様を殺す!」

「我々に歯向かう者は全て朝敵ぞ!」


 好戦的な敵ばかりである。それに、どうあがいても戦うしかないらしい。

 先に動いたのは上京区の連中であった。


「天誅!」


 そういって手にしていたマシンガンを乱射する。


「ふんっ!」


 長屋は両手の拳を地面に向かって打つ。拳が当たった場所から流体となった金属がせり出してきて、乱射された弾丸を防ぐ。その流体金属は数センチの金属板となり、黒須たちの前に壁としてそそり立った。


「皆はここで待っていてほしい」

「陽介君……」

「これが終わったら、ちゃんと話をしよう」

「ヨウ君……」


 黒須と高崎が後ろ髪を引いてくるが、長屋はそれを振り解いて前に進む。

 すでに乱射によって混乱が起きている前線で、長屋はズンズンと歩いていく。


「いやぁぁあ!」


 新日本婦人会に所属している予備役軍人たちが、波のように長屋へと押し寄せる。


「フンッ!」


 長屋は突進してくる予備役軍人の攻撃を流して、止めて、カウンターを決める。四方八方から押し寄せてくる打撃を受け流し、銃弾を受け止め、そして確実に仕留める。

 しかし命は取らない。致命傷を与え、行動不能にしていく。とは言っても、ただのパンチが数トンにもなる。こんなものを食らって平気な人間はいない。

 やがて新日本婦人会の予備役軍人たちが全員倒れると、次にやってきたのは上京区の連中である。先ほどの予備役軍人たちのバラバラな攻撃とは違い、組織的な動きで長屋に攻撃してくる。


「ここはコイツでいこう」


 そういって左手を前に出す。その手首からカシャッと何か棒状の物が飛び出す。それを右手で引き抜く。それは長物のように棒となり、そして完全に引き抜き終わると若干弓なりになった刀となった。

 その様子に狼狽えることなく、上京区の連中は隊列を組んで銃撃を集中させる。


「ヤツの胸を狙え! いくら未知の金属でも破断はするはずだ!」


 そんな考えで銃撃を集中させるが、それが逆に長屋の狙いを冗長させる。狙われている胸の前に刀を置き、銃弾を防ぐ。その上、明らかに見た目以上の強度を持っている刀は刃こぼれすらしているようには見えない。

 そのまま長屋は隊列に向かって走る。刀を振り上げ、一振り。その走りと一太刀は目に見えないほどの速さで行われ、隊列一つが一瞬で壊滅した。


「第6班がやられた! 目標は2時方向!」


 そのように、他の隊列と連携を取って長屋のことを攻略しようとする上京区の連中だが、そんなもの最初からなかったように高速移動を繰り返していく長屋。それもそのはず、イナーシャルブースターエンジンによって長屋周辺の慣性が制御され、圧倒的な速度を実現している。このシステムによって、100メートルを移動するのに1秒もかからない。

 その圧倒的速度によって、長屋は数十人もいた上京区の連中は壊滅してしまう。

 倒れこんでいる人々なんぞ最初からいなかったように、クーデター軍の巨大ロボが接近してくる。


『この野郎、たった一人でこれだけの相手を壊滅させやがった』

『狼狽えるな。我々は鋼鉄の箱に入っている。そう易々と攻撃されるわけがない』

『総員、気を抜くなよ』


 10機の巨大ロボは、長屋を包囲する。しかしそんな状況であっても、長屋は焦ってはいなかった。


「では、こちらも必殺技を繰り出すとするか」


 そういって長屋は刀を消滅させ右手を前に出し、左から右へスッと動かす。すると、黒須たちの所で待っていたバイクが急発進する。そして長屋のそばで止まる。

 バイクに跨った長屋は、そのままグリップを捻ってエンジンを唸らせた。そのままタイヤを空転させながら発進する。

 バイクを駆って巨大ロボの周りを走り回る長屋。そんな長屋を追い詰めるべく、クーデター軍は視線機銃を使って長屋のことを狙う。しかし巨大ロボに隠れるように走り回る長屋により、フレンドリーファイアがどんどん起きる。


『オイッ、どこ見て撃ってんだ』

『ワリィ、でもアイツちょこまかと鬱陶しいんだよ』

『こうなりゃ踏みつけろ。サポーターの重量があれば簡単に潰せるはずだ』


 クーデター軍は射撃を止め、長屋を踏みつぶすべく地団駄を踏み始める。

 それこそ長屋の狙い通りであった。巨大ロボの方がわざわざ不安定な一本足になるのを狙っていたのだ。

 すぐに近くにいる巨大ロボに突進する。バックルの左上側を3回叩くように押し、必殺技を発動する。


『ヘリクゼン、パンチ』


 右手に未知なるパワーが溜まり、それを巨大ロボの足にぶつける。このパンチはイナーシャルブースターエンジンによって増幅された特大のベクトル操作である。

 さすがの巨大ロボでも簡単に吹っ飛ぶ程の運動エネルギーを与えられ、巨大ロボの1機は隣にいた巨大ロボも巻き込んで倒れ込んだ。

 それを複数回行い、巨大ロボの山を作り出す。

 長屋は少し遠いところにバイクを停め、そしてバイクから降りた。


「さぁ、フィナーレといこうか」


 そういって両手をバックルの前で交差させるようにスキャンさせ、右上側を3回押す。


『ヘリクゼン、ハイパーキック』

「はぁっ!」


 長屋がジャンプすると、スーッと上昇していく。そして巨大ロボが見える一望できる場所まで上昇すると、そのまま斜め下方向に勢いよく進んでいく。

 足を出してキックのポーズで速度が上がる。そして巨大ロボの山に吸い込まれていった。

 そのまま巨大ロボたちを貫き、長屋は地面を滑る。そして巨大ロボたちは爆散した。

 燃える巨大ロボを背に、長屋は立ち上がる。それは21世紀の長屋の罪を精算するような光景だった。

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