表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したスワンプマンは過去の栄光に思いを馳せるか?  作者: 紫 和春


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

34/36

第34話 事件

 3534年5月9日。和光市の一部を占領するように存在する、大日本共和国陸軍の朝霧駐屯地。ここには第一師団が駐屯しており、また大統領直轄の特殊作戦部隊である神空隊も駐留している軍用地だ。

 そんな駐屯地の、まだ朝日も昇ってきていない頃の時間帯。薄暗いものの、自主的にランニングを行っている軍人もチラホラ見受けられる。

 この日もなんの変哲もない一日になる。はずだった。

 軍用車両が置かれている駐車場で、大爆発が起きる。その破壊力は凄まじいもので、爆風で周辺の車両、建物の壁、窓、そして吹き飛んだ破片でかなり広範囲に被害が広がった。

 幸いなのは、まだ朝の早い時間帯であったため、民間への影響が少なかったことだ。その逆を言えば、駐屯地にいた軍人のほとんどが、軽傷以上の傷を負ったことになる。

 それはまさに青天の霹靂。そして首都防衛を担う戦力を半分以上喪失したことを意味している。

 日本中がこのニュースを知るのは、爆発から約2時間後の通勤通学の時間帯であった。


「ねぇねぇ、今朝の爆発聞こえた?」

「聞こえたよ。花火みたいな感じだったけど」

「YYだと、基地の近くにあった家が吹き飛んじゃったみたい」

「怖いねー」

「ねー」


 長屋が登校中、そんな話が聞こえてくる。長屋もYYで爆発事故のことを知った。アプリ内では被害を受けたであろう住宅の写真や、爆発事故の前後を切り取った動画が拡散されている。


「事件だか事故だか知らないけど、穏やかじゃないねぇ……」


 その他ネットニュースで情報を集めながら、長屋は思考を整理させていく。


(こういうのは軍内部で不穏な動きがあるという証拠。もしくは汚職が蔓延っている証左とも言える。どっちにしろ、共和国軍は今後の活動に大きな影響を食らってしまったな……)


 スマホをポケットにしまい、学校に向かう長屋。その道中で黒須と鉢合わせする。


「あっ、陽介君」

「茜、おは……」


 長屋がそこまで言いかけて、急に昨日のことを思い出す。長屋と黒須はキスをしたのだ。

 そのフラッシュバックとも言うべき反応で、長屋は思わず黒須から顔を背ける。


「陽介君……?」


 黒須が心配そうに長屋のことを見上げる。それが余計に、長屋の意識を黒須の唇に持っていくのだった。

 長屋は目をそらし続けながら、黒須に今の感情を伝える。


「い、いや。そういえば昨日、き、キス、したよなぁ……って」


 そう言ってチラリと黒須のことを見ると、黒須もようやく気が付いたようで顔を赤くしていた。


「よ、陽介君……。そういうのはもうちょっと……、分かりにくい感じにしてくれると嬉しいんだけど……」


 黒須も黒須で、恥ずかしさがあったのだろう。手をパタパタとさせて顔に風を送っている。


「そ、そうだよな。彼氏と彼女なら、キスくらい普通にするよな……」

「そ、そうだよ。何言ってるの陽介君……。あ、あははー……」


 そういって二人は、ちょっとカチコチしたまま学校に登校した。

 校門を潜り抜けようとした時に、正直会いたくなかった人物と会う。


「おっはよー、ヨウ君!」


 後ろからタックルするように、高崎が抱きついてくる。


「ぐほぁ!」

「ちょ、ちょっと高崎さん!?」

「あ、茜っちもおはよー」


 あっけらかんとしていた高崎だが、瞬時に何か異変を感じ取る。


「ん? ヨウ君と茜っち、ケンカでもした?」

「い、いやぁ……?」

「け、ケンカはしてないよね……」


 少々ギクシャクしているが、辻褄は合っている二人。それでも高崎は怪しんでいる。


「うーん……?」


 長屋と黒須のことを注意深く見る高崎は、一つの推理にたどり着く。


「もしかして二人とも……、ちゅーした?」

「ぶふぉ!」


 その言葉を聞いて、長屋は思わず噴き出してしまった。


「あー! うちに内緒でちゅーしたんだー!」

「ちょっ! 声がデカい!」

「うちだってヨウ君とちゅーしたいのにー! ちょっとは我慢してるのにー!」

「分かった! 後でしてあげるから! マジで止めて!」


 長屋は必死になって高崎の言動を止めようとする。一方情緒が壊されて号泣モードに移行している女子をなだめるのは容易なことではない。

 言葉での解決は無理と判断した長屋は、思い切って高崎のことを抱きしめる。


「えん……」


 突然の抱擁に、高崎の脳はフリーズする。


「後でちゃんとしてあげるから、今は我慢してくれ、マリ」


 周囲の目など気にしている余裕はなく、高崎の耳元で小声で囁く。それが効いたようで、高崎は落ち着きを取り戻した。


「後でちゃんとちゅーしてくれる?」

「もちろんだよ」

「絶対?」

「絶対」


 そのように約束を交わしたところで、高崎は泣き止んで長屋の腕に抱かれていた。

 しかし、新しい脅威が発生してしまった。黒須である。


「陽介君? 私とはそんなハグしてくれたことなかったよね……?」


 笑顔であるが、明らかに顔の一部が引きつっている。


「あ、茜……。茜にも後で言うこと聞くから……」

「本当に?」

「本当だよ……」

「じゃあ約束ね?」


 正直恐怖のオーラが漂ってきており、怖いという印象を植えつけられた長屋だった。

 そして多数の生徒がいるなかでの痴話喧嘩と不純異性交遊まがいの行動で、学校中が噂で持ちきりになったのである。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ