表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したスワンプマンは過去の栄光に思いを馳せるか?  作者: 紫 和春


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

32/36

第32話 テスト勉強

 5月に入ると、授業中に教員から次のような言葉が頻発する。


「ここ、テストに出します」


 そう、まもなく中間試験の時期である。新和光高校は二学期制の学校で、期末試験までに中間試験が2回あるのも特徴だ。それだけで36世紀が特殊な環境であることが言えるだろう。

 そんなこともあり、学校全体でテストという空気感が醸成されていく。それは長屋たちも例外ではなかった。


「ヨウ君、ここ教えてー?」


 テスト前の期間は、部活動は休みになる。しかしそれは文芸部には関係ないとも言える。そのため、長屋たちは文芸部でテスト勉強をしていた。


「数Ⅰ? ならまだ簡単な方じゃない? 教えることある?」

「ヨウ君ひどくなーい? うち頭よくないって前にも言ったじゃーん」

「ならなんでこの高校にいるんだ……? いや、俺も転入してきたから人のこと言えないが……」

「そんなに教えてほしいなら私が教えてあげますよ」

「えー、茜っちは厳しそーだしなー」

「そうやって私のこと目の敵にするの止めてくださいよ!」

「まぁまぁ、茜も、高崎さんも落ち着いて」


 長屋が二人のことをなだめようとする。


「陽介君は私のことが一番じゃないんですか!?」

「そ、そりゃ茜が一番だよ」

「でもうちのことも大切にしてくれるっしょ?」

「それは、そうだけど……」


 黒須と高崎に詰められる長屋。優柔不断さが仇になってしまっているようだ。


「ていうかさー」


 高崎がノート類をほっぽり出して、ソファにあったクッションを抱きしめる。そしてふとした疑問を長屋にぶつける。


「ヨウ君ってうちのこと苗字呼びなんだね」

「ギクッ」


 思わず擬音語が口から飛び出してしまう。


「ねぇねぇ、うち彼女なんだよね? なんで?」

「なんでって言われても……」


 そこに正妻(づら)した黒須が上から目線で答える。


「陽介君は意外と恥ずかしがり屋なんですよ。でも私はそれを越えた存在なんです。つまり偉いんですよ!」


 そういって腕組みし、ドヤ顔で高崎のことを見下す。


「うわー……。そういう私が本命ですって顔、正直女性受けしないから止めといたほうがいいと思うよ」

「私は女性受けしようと思ってないので問題ないでーす!」


 謎のマウント合戦が始まった。ので、早急に長屋が撤収させる。


「はいはい、喧嘩はそこまで。俺は茜も高崎さんも大事にするから」

「じゃあうちのこと名前で呼んで?」

「うぐっ……」


 高崎は潤んだ瞳で長屋のことを見る。さすがにこれ以上は逃げられない。


「ま、マリ……」

「~~~っ! はいはいはい、もう一回!」

「……マリ。もういいでしょ」

「もっともっと! うち、もっとヨウ君のこと好きになりたいから、何回でも呼んで!」

「ハズいよ……」


 そんなことを言っていると、放送が流れる。


『完全下校時間となりました。生徒の皆さんは、速やかに下校してください。繰り返します……』


 それに唆されるように、校内に残っていた生徒たちが廊下を駆けていく音がする。


「……俺たちも帰るか」

「えー、うちはもっとヨウ君と一緒にいたーい」

「高崎さんはせめて学校の規則を守ってください」

「ぶーぶー」


 そんなことを言いながらも、三人は文芸室を出て下校する。

 高崎は電車通学なので、校門ですぐにお別れだ。


「それじゃあヨウ君……」


 そういって高崎は長屋のことを正面からギュッと抱きしめる。突然のことで、長屋も黒須も動けなかった。

 そして数秒、十分にハグしたことで満足した高崎は、そのままパッと離れて駆けだしていく。


「また明日ねー!」


 そのまま高崎は駅の方面へ走っていった。

 その状況を呆然と見ていた黒須が、ようやく意識を取り戻す。


「ななな、何してるの陽介君!?」

「えぇ!? 俺!?」

「そーだよ! 私が一番なのにぃ……!」


 そういって黒須は泣きそうな顔をする。


「あああ、茜……」


 長屋は完全に慌ててしまう。そんな状況につけ入るように、黒須が長屋のことを上目遣いで見る。


「このまま陽介君のおうちに行かないと泣いちゃうかも……」

「え゙……?」


 思わぬ言葉に、長屋はたじろぐ。


「そ、それは……」

「だって、あんなに高崎さんとイチャイチャしてたんだもん。私だってそのくらいしないと不公平だよ……」

「ぐっ……」


 正論である。しかし、年頃の男女が二人っきりで一つの部屋にいるというのは、間違いが発生するかもしれないリスクが存在する。


(どうする……?)


 長屋が長考に入る前に、黒須が決めにかかる。

 長屋の制服の裾を掴んで、アピールした。


「ダメ……?」

「う……っ」


 好きな人からの甘えモード。正直勝てる気がしない。

 先に白旗を上げたのは長屋であった。


「いいよ……」

「やった……っ」


 そしていつものように、長屋と黒須は手を繋いで帰り道を行くのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ