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転生したスワンプマンは過去の栄光に思いを馳せるか?  作者: 紫 和春


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第18話 ナンパ

 数日が経過して金曜日。この日も授業が終わり、長屋と黒須は一緒に教室を出る。

 あれ以来、登下校の時は並んで歩いている二人。まだ少し不器用だが、なるべく長く手を繋ぐようになっていた。


「ねえ陽介君」

「ん、何?」


 長屋も少し成長したようで、黒須に対しては自然な応対ができるようになっていた。


「明日、土曜日でしょ?」

「そうだね」

「その……、デートとかどうかなって……」

「うん……。うん? デート?」


 思わぬ言葉に、長屋は少し驚いて聞き返す。


「うん、デート」

「あー、うん……。いいよ」


 特に悩むことなく、長屋は決断する。


「やった……!」


 黒須は小さくガッツポーズをする。


(かわいい……)


 そう思うのも束の間、長屋に一つの心配事が降ってきた。


「デートはいいんだけど、定番のデートスポットとか知らないなぁ……」


 36世紀における知識が不足している上に、そもそもデートのやり方や楽しみ方を長屋は知らない。心配になるのも不思議ではないだろう。


「そんな緊張しなくて大丈夫だよ。デートとかお出かけってお互いが楽しめるのが大事だからっ。陽介君は陽介君のままでいいんだよ」


 それを聞いて、長屋は久々に肯定された嬉しさというものを思い出した。


「……確かにそうだね。ありがとう、茜」

「それくらいお安い御用だよっ」


 そういって黒須は胸を張る。

 その後、集合場所と時間を決めて帰宅した。

 その日の夜、長屋は数少ない私服を床に並べ、吟味していた。


「うーん、この組み合わせが一番マトモに見えるかな……」


 そもそもファッションに疎い長屋。以前男性のいる服屋で上下のセットで購入したことで、ある程度マシな恰好ができるようになっていた。今回はそのセットをそのまま着るつもりだ。


「失礼のないように……。でも楽しむのを忘れずに……」


 そんなことを呟きながら、長屋はベッドに入り眠るのだった。

 翌日、集合場所である最寄りのショッピングモールの広場に長屋はいた。

 簡単に外見を整え、心臓を高鳴らせながら、時間を気にしていた。集合時間の15分前のことである。

 数分後。まだかまだかと待っていると、とある女性が長屋に近づいてくる。そして声をかけてきた。


「ちょっと君、今ヒマだったりする?」


 長屋が顔を上げてみると、そこには長屋より少し背の高い大学生くらいの女性がいた。


「……何ですか?」

「もしよかったらなんだけど、お姉さんと一緒に遊ばない?」


 そこまで言われて、長屋は瞬時に理解した。女性による男性へのナンパであると。


(そりゃ男女比が壊れているから、女性のナンパ師がいてもおかしくはなよな……)


 冷静に状況を把握し、長屋はナンパを躱そうとする。


「間に合ってます。あと、人の待ち合わせしているので、帰ってください」

「いいじゃん。そのお友達も一緒に遊ぼうよ。絶対楽しいから」


 面倒だな……と思った長屋は、一つ溜息を吐く。


「あのですね、そもそも知らない人と関わるなって幼少期から言われているのに、それを無視して声をかけてくるのってデリカシーがないですよね? 仮にあなたと自分が知り合いだったとして、馴れ馴れしく会話するのも非常識だと思いますよ。複数ある段階を全部すっ飛ばして仲良くしてくれるなんて幻想だと思ったほうがいいですし、そんなことをしてくるあなたは異常人格者って思ったほうが賢明ですよ」


 長屋は早口でまくし立てるように、思ったことをズバズバと投げかける。

 ナンパしてきた女性は、数秒ポカンとした顔をしていたが、次第に不機嫌というか悔しそうな表情になる。


「クソッ! こっちが迂闊に手を出せないのを良いことにボロクソ言いやがって! 地獄に落ちろ!」


 そんな捨て台詞を吐いて、女性はその場から立ち去った。


「なんだったんだ今の……。いや、ナンパなのは間違いないんだが……」


 困惑している長屋の元に、今度は見覚えのある女子が近づいてくる。黒須だ。


「陽介君、大丈夫? 何か変なことされなかった?」

「茜、俺は大丈夫。ただのナンパみたいだ」

「それならいいけど……」


 それでも黒須は、心配そうに長屋のことを見る。

 その光景を見て、長屋は思う。


(ナンパされた女子ってこんな気分になってたんだなぁ……)


 気持ち悪いとかはないが、ただただはた迷惑なだけである。男子だが女子の気分を味わう長屋であった。


「さて、ナンパの件は終わりにして、デートでもしようか」


 長屋は仕切り直して、黒須の手を優しく取る。


「……そうだね」


 黒須もようやく笑顔になって、答える。

 黒須は薄い桃色のワンピースにベルトを巻いて、デニムの上着を羽織っていた。初夏の匂いが近づいてきた今の時期にピッタリな服装だ。

 黒須は手を握ったまま、反対の手を長屋の腕に回し、体を長屋に密着させる。これで、どこからどう見ても若い男女のカップルに見えるだろう。

 そうして二人はショッピングモールの中を散策する。

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