act19 戦闘
そんな広間から出掛かった所で、扉横から剣を手にした配下の者達が襲い掛かってきた。
「な、なんだ! テメー等! 何しやがる!」
バステトが叫ぶ。
「これは何のつもりだい、シャルフ様?」
祖母ちゃんは振り返り問い質す。
「フフフフ、秘密を知ったお前達を僕がこのまま帰すと思うのかい? お前達は此処で処分される事になったのだよ!」
「処分? あたし達を殺すと言うのかい?」
もう好青年といった表情は消え、卑怯そうな表情が現れていた。これが彼の本性だったようだ。
そして周囲から武器をもった部下たちが現れ、僕等はその圧力から部屋の中央に戻らざるを得なくなってしまった。
入口で武器を預けてしまったのもあり僕等は丸腰だ。ちょっと拙い状況である。
「や、やっぱり、あんた達が盗賊だったんだね、そして、この国が盗賊団が作った国だというのも本当だという事だね……」
祖母ちゃんが周囲を見回しながら問い掛ける。
「ふふふふ、まあな、そこの所は大凡当たっているよ」
「でもさ、疑問があるんだよ、貴方達の目的はスノードラゴンに捧げられた奉納品を奪う事だったって事だろ? 盗賊なら奪って直ぐに逃げれば済む事じゃないか? 何で態々スノードラゴンに仕返しされそうなこんな場所に国なんかを作ったりしたんだい?」
祖母ちゃんは首を傾げる。
言われてみれば確かにそうだ。態々こんな場所に国を構えなければ襲われるリスクも、僕等のような冒険者に討伐依頼をする必要もなかっただろう。
「ふふふ、それは、我々の真の目的が奉納品を盗むことではないからさ」
「えっ、真の目的だって?」
どういう事だ?
「ああ、真の目的だよ、僕等の目的は、とあるお方の為に、この地の守護者たるスノードラゴンを倒すことにある。ふふふ、つまりこの国はその為の橋頭堡とか前線基地といった位置付けだという事さ」
「えっ、前線基地?」
僕も祖母ちゃんも理解が追い付かず首を傾げてしまう。
「じゃあ、奉納品を奪った行為も、スノードラゴンに喧嘩を吹っ掛ける為のものだったって事なのかい?」
祖母ちゃんは改たまって問い掛ける。
「ふふふ、そういう事になるな」
シャルフ領主はニヤリと笑う。
「そ、その、とあるお方って…… 一体?」
祖母ちゃんは戸惑いながら問い掛ける。
「ふふふ、それは、スノークイーン…… 雪の女王様さ。僕等はスノークイーン様の支配エリアを広げる為に、この場所に城を作ったんだよ、そしてスノードラゴンを駆逐しようとしているのさ」
「な、なるほど、ロートス王国といい、このペルージャ王国といい、ひっくるめてスノークイーンの支配下だったという事か…… そしてニヴルヘイム内で更なる支配領域の拡大を目論んでいるという訳だね……」
「そういう事だ」
シャルフ領主は改まりふうと大きく息を吐いた。
「さてと、お喋りは終わりだ。お前達を処分させてもらおう、この後、スノークイーンの所に向かうと聞いていたが、行かせる訳には行かないしな……」
周囲の部下だけでなくシャルフも剣を引き抜いた。
「嫌な感じだね、お前達も、その背後にいるスノークイーンも…… 色々悪い思惑が感じられてならないよ、現在あるニヴルヘイムの秩序を壊し、混沌や混乱を引き起こし、そしてニヴルヘイムを支配しようと目論んでいる。これは何とかしないと駄目みたいだね……」
祖母ちゃんは独り言のようにぼそりと呟いた。
「何をボソボソ言ってやがるんだ! 死ね!」
背後から部下の一人が剣を振り下ろしてきた。一番後方に立っていたハルシェシスは、それを躱して剣を持つ手ごと脇に挟み抑え込む。
「もう、危ないわね……」
そして、さり気なく相手の頬に肘での攻撃を喰らわした。
「ぐああああああああっ、こ、こいつ反撃してきやがったぞ!」
襲ってきた男は口から血を吐きながら唸る。
「馬鹿! 油断をするからだ! こいつらは武器を持っていない丸腰なんだぞ。さっさと殺してしまえぃ!」
「了解だ。ボス!」
部下たちは僕等を取り囲みつつジワリジワリと距離を詰めてくる。今度は一気に襲ってくるつもりらしい。
「掛かれ!」
掛け声に伴われ一斉襲い掛かって来た。
「舐めんじゃないわよ!」
ハルシェシスは徒手で構え、そして剣を躱しながら手刀で首を打ち、拳で腹を殴り捌いていく。
「仕方が無いね、むうううううん!」
祖母ちゃんは掌に魔法力を集中させ掌から炎を放っていった。
「ほら、バステトちゃん、ハンスちゃんも、剣を受け取りなさい」
部下たちが落とした剣をハルシェシスが拾って手渡してくる。
「うん」
「ああ、剣がありゃあ百人力だな」
バステトはニヤリと笑った。そして受け取った剣を使い独楽のように動き回り切り伏せていく。
「ちっ、こいつら武器を持っていなかったくせに、それなりに戦いやがるぞ」
僕に関しては殆ど活躍していないが、ハルシェシスが、バステトが、そして祖母ちゃんが敵を蹴散らしていく。
いつの間にか周囲の敵は倒れ伏し、戦えそうな者はシャルフ領主、傍にいる女性、その他数名だけになっていた。
「ぐぬぬぬぬぬぬぬぬ…… よくも我が部下達を……」
シャルフ領主はギリリと歯噛みした。
「もういい、お前達は引け、もう僕が相手をする。皆下がっているんだ!」
そう言いながらシャルフ領主は剣を構える。
「ねえ、あたしは杖が無くても少しは魔法が使えるし、ハルシェシスも徒手での戦闘も出来る。そして他二人には武器が手渡った。それほど不利な状況でもなくなったけど、まだ戦う気なのかい?」
祖母ちゃんは説得するように問い掛ける。
「そうみたいだな、僕とした事が誤算だったな。武器を持っていなければ戦えないだろうと考えてしまったよ。だが、その誤算も僕が戦えば払拭出来る。そう最初からそうしておくべきだったんだ……」




