表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハリボテロミオの夏の夢  作者: 矢倉


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
23/31

第五幕:楽屋

 大会1日目は、他校の演目を観覧して終わった。いつもだったら楽しく観られるのに、この日は何も頭に入って来なかった。ほとんどの部員が学校に戻って自主練をする中、僕は1日目が終わるとすぐに自宅に帰って寝た。三匹も、僕の気持ちを察してなのかとても静かで、あまり僕と話をしなかった。

 そして、大会2日目……僕たちの公演の日だ。重い足取りでざわつく楽屋に入ると、僕は震える手でロミオの衣装に腕を通す。幸い、蘭くんと背格好が一緒だったので、手直しをほとんどしなくてすんだ。鏡台の前に座ると、僕はメガネを外して、髪の毛をセットする。と言っても、軽く整える程度だ。すると、


「……玲央、お前大丈夫か?」

「うん……なんとか」


 僕を心配して、汐恩が声をかけてくれた。当然だ。今まで裏方しかしていない僕が、いきなり主役の代役をすることになったんだから。


「まさかお前が代役なんてな……」

「そう、だね……」


 僕は鏡越しに汐恩を見る。汐恩は、ただまっすぐ僕を見ていた。


「……でも、あの演技なら大丈夫だ!自信持てよ!!」


 そう言って、汐恩は僕の背中を叩く。


「うん……ありがとう」


 あれは、僕が演じたわけじゃないけど……とは言わなかった。言えるわけがなかった。これから舞台に立つのは、僕じゃない。アルだ。だから緊張もしていない。むしろ、変に気持ちが冷めていた。


「実はさ、俺……スッゲー嬉しいんだ」

「嬉しい?」


 なんで?と、汐恩を見れば、汐恩は僕の方を見てにかっと笑った。


「お前さ、昔色々あっただろ?だからまた舞台に立ってくれて、嬉しいんだよ……」

「汐恩……」


 汐恩は、僕の過去を知っている。知っていて、ずっと変わらずに僕と接してくれた、大切な友人だ。だからきっと、汐恩なりに思うことも色々あったんだと思う。それをずっと僕に言わないで、友人として接してくれたんだ。なのに、


「俺……実はさ、また舞台に立つお前を観たかったんだ……。お前が舞台に立つために、陰でめちゃくちゃ頑張ってたの、知ってるから」

「……そっか」


 なのに僕は……これからその親友を、裏切るのか。


「ったく、なんだよその返事は!シャキッとしろよ!!!」


 そう言って、今度は僕の背中を思いっきり叩く。


「ッ……たっ!」

「ほら、集中、集中!!!」


 きっと汐恩なりに、僕に喝を入れてくれたんだろう。背中が、ジンジンと痛い。いや、痛いのは……背中だけじゃない……か。


「……うん。ごめん、僕、ちょっとトイレ行ってくる……」


 そう言って、僕は楽屋を出た。後ろからは、早く帰ってこいよ!と汐恩が聞こえたけれど、僕はその声に返事をしなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ