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ハリボテロミオの夏の夢  作者: 矢倉


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20/22

第四幕:代役

「……蘭だが、足にヒビが入っているらしい」


 そう言ったのは、監督だった。

 突然の事故。あの後、僕たちは会場の事前準備を終えると、学校に引き返してきていた。稽古場には、重い空気が漂っている。無理もない。まさか、大会直前に主役が怪我なんて……。


「明後日の本番だが、蘭を出すことはできない」

「えっ……」

「じゃあ、どうするんですか?!」


 稽古場がざわつく。当然だ。……このままでは、棄権するしかない。せっかく、ここまで頑張ってきたっていうのに……。


「それについては、蘭と話し合った。朱里」

「はい!」


 突然、朱里さんの名前が呼ばれ、返事をして朱里さんは一歩前に出る。幸い、朱里さんにはかすり傷一つなかったらしい。けれど監督は、蘭くんと何を話し合ったっていうんだろう。


「蘭は、お前が代役に相応しいと思う相手がいるなら、そいつに代役を任せたいと言っている。……誰かいるか?」

「蘭くんの代役……ですか?」


 急な監督の提案に、朱里さんは一瞬目を丸くするも、すぐに少し目線を下ろして考え始めた。けれどそれもすぐに元に戻すと、ぐるっとゆっくり部員の顔を見る。そして、僕と視線が重なった。


「どうだ?」

「ロミオ役、ですが……玲央くんにお願いしたいです!」

「え?」


 突然のことに、僕は言葉を失う。再度、稽古場がざわついた。当然だ。みんなからすれば、僕はただの照明係。ロミオなんて大役、できるわけがない。それなのに、朱里さんは一体何を言ってるんだ。


「そんな、僕……ッ!」


 無理です。そう言おうとした時だった。


「……やります」


 口が、勝手に動く。


「やらせてください!」


 そう言って、僕の手はメガネのツルに指を添えて、ズレを直す。……それは、アルがメガネを直す時の仕草だった。


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