初めての訪問者。
【改訂版】になります!良かったらよろしくお願いいたします!
少しの人に読んで頂けたら幸いです!
森ノ塔、最下層。そこには一人の老人がいる。
甚平を着込み座布団に腰を下ろし、茶を啜る。
やる事が無いのか、ちゃぶ台に肘を突き手に顎を乗せて一人呟く。
「我輩は、暇である。仕事がもう無い。」
ポツリと虚空へと答え、溜め息を漏らす。
職場はある!自宅だか。
やる気はある!無職だが。
トホホホ、、、、、。
端から見ればその背中は、とても寂しい。
やる事がある内は、まだ良かった。その為か、部屋の隅にはお手製の轆轤や、木彫りをしていたのであろう木屑が散らばった作業台などが、置かれている。
内装もある程度、凝った造りになっている。暇なのでトンカチやタガネで岩が剥き出しになっていた壁や天井に至るまで全て手作業で整えた。
壁を切り抜き照明置き、間接照明の様な物を作ってみたり、天井にシャンデリアをぶら下げてみたり(直ぐに撤去し隅へ)、部屋全体に簀を並べその上に畳を並べたりした。
12畳程の広さ、何回か広げようかと本気で考えたのだが、なんとか思い止まる。
これ以上、広いとかなり寂しいし、落ち着かない。
「別に寂しくなんか無いんだからね!」
壁に反響し、自信が居たたまれなくなる。
気が付くと遂に作る物(仕事)が無くなっていた。
◆
仕事は言わば洞窟管理(自宅)。
世に云う、自宅警備員ではないかの?
あっ、儂定年してるから年金じゅき、、、。
、、、誰がくれるのかの?
87歳職探し、やるせないの、、、、。
神となり、金は無用の長物になったが事が起きれば多少必要になるじゃろうて。
どうしようかの?国々でも周り偵察でもするかの?そこで噂を流して、、、。
森の塔の地下には財宝がわんさか眠っている。と噂を流して、、、
誰がくるか。いや、誰が信じるか。
子供でも信じないの、、、。
体育座りして考えていると、名案が浮かぶ!
ならば、魔王を語りこの塔は魔王城として放っておけぬ状況にするかだ。幸い穴に放り込んだ獣達は儂の言うことを、理解してくれる位の知能はあるしな、、、。
ならば、と立ち上がり様子を見に行くか!と思い至って重い腰をあげる。
薄暗い通路を抜けた先に、最初に放り込んだ熊が居た。子供を産んだようで三頭程の小熊がじゃれあっていた、、、。
戦わせるのちょっと気が引けるの。
各層を見て廻れば、番を見つけて仲良く寄り添っている狼やら丸まって寝ている大蛇など色々な種が各々平穏に暮らしている様子が見てわかる、、、、。
却下じゃな、縄張りを守る為の争いは仕方なしだが、こやつらに戦え!と言える程、儂は鬼じゃない。
むしろ、この幸せそうな雰囲気を壊せる奴が居れば連れて来い!説教してやる。
拳を握りしめ憤慨する。盛大なブーメランとは知らずに。
はぁ、そんな事を考え溜めを付いていると、、、
一匹の小熊が、興味深そうに走って向かってきた。クリクリの眼が、撫でろと催促する様に儂の右手に頭を擦り付ける。
小熊の高さまで、腰を下ろし頭を撫でる。少しゴワゴワしているが、決して不快では無い撫で心地。
気持ち良さそうに目を細める姿を見て笑みが溢れ、慌てて詰めよって来た母熊が、頭を垂れ不敬を咎める様な視線を小熊に向ける。
睨まれて縮こまる小熊を見て、肩を竦めながら良いのじゃと話をし頭を撫でる。遠巻きから見ていた他の2頭もぎこちない足取りで歩み寄って来た。
幸せな時間を堪能した後、見廻りを再開し歩きながら一人思う。動物は嫌いでは無いが、好き好んで買うほどの事でも無い。それが人間だった頃の儂であった。
命が終わらぬ身になってからでは、あまりにも多くの死を見る事になろう。なれば、儂には何が出来る?
より良い死の幸福を贈ろうではないか。
死して儂が導こう。約束するぞ?
洞窟内のみにだけ向ける神の祝福。
より良い死は何か?死んだ事の無い儂にはわからぬ。しかし、生まれながらに人は罪人であり、生が償う期間であり、死とは罪を許された時であると誰かが言った気がする。
その時、鼻をほじっていて良く聞いてなかったがそんな感じであろう。今なら少し分かる気がする。
より良い生を、、、かの。全く異なる2つは、実は同じ様なものの気がする。
生き続ける事は、死に向かうことじゃ。
面倒じゃから、毒にでも耐性を付けて貰うかの!健康寿命じゃな!
辺りがオレンジの光に包まれる。眩しくは無い暖かい光に動物達は辺りをキョロキョロと見渡し、爺を見て納得する。
まるで春の陽気の様な光が洞窟内を包む。
いつの間にか、動物達が集まって来ていて爺に感謝を述べている様なあるものは、すり寄り。またあるものは、頬を舐める。
それを一身に受け止める爺からは、寂しさが消えていた。
作業を終え、一息つく、、、。
結局、振り出し。しかし、何処か満更でも無い様子。
「仕方ない、国でも見て廻るかの?」
再び、外に出る。
めっちゃ人の家の前で、戦ってた。
開けた扉をそっと閉め、自室に戻る。
◆
モニターを作り出し玄関の前の様子を眺めながら茶を啜る。息を漏らしボーと眺めて居ると後ろから視線を感じ振り返る。
一つの点があり、広がるとそこから人が出てきた。
「お初にお目に掛かります。私、帝国の宰相を努めております。名をクランチと申します。」
闇から現れた青年は、声高らかに自己紹介を始めた。
見た目はタキシードを着込み髪は毒々しい程の紫。左目に傷跡と義眼が嵌め込まれている。
怪しさプンプンの見た目とは、裏腹に腹に持つ一物が気になる。
「で?何用かな?」
短く返事をし、相手を見極める様に見る。ここまで誰にも気付かれず来たのだ。能力だろう少し警戒していた。
正直、部屋に向かう途中から気付いていたがあえて無視をしていた。相手の出方を伺っていた。害なすなら敵になり即座に対応したが、そうではなさそうなのだ。多分、事情があり此処に来た大義名分とは別の向こう又、見極めようとしている視線。
「皇帝に会って頂きたく、参上致しました。」
「大義名分は良い。目的を言え。」
儂の意図が伝わったのか、笑みを深め先程より、少し危険な雰囲気でこちらを見つめる。
「転移者であられますか?」
「半分正解、半分不正解じゃな」
意味がわからないのか。考える素振りを見せて正解がわかっているが、信じられないと言う表情で言葉をつぐむ。
「調整者であられますか?」
「調整者をわからぬが、粗方正解じゃろう」
警戒が霧散し、驚愕が顔に現れる。ならばと、
片膝を着き頭を垂れ苦しそうにポツリポツリと言葉を紡ぐ。
青年の豹変ぶりに少し驚くが、黙って聞き入る。叶えるかどうかは別として何か複雑な事情があると見て聞かぬ訳にも行かなくった。暇だし。
「私は、、、、、」
と共に、悲痛の表情を浮かべる者に非情ではあるが客観的に話を聞き入る。先程とはまたうって変わった国を思う臣下がそこに居た。
自分は、実は魔族である事。そして、なぜ帝国に居を置いている事。悲願がある事を、、。
話を聞き終わり、確かに解決可能なのは出来るであろう者は他にはいるであろうが、儂なら確実に出来る。
しかし、同時に迷う。長期此処を離れる事、管理者としてやってもいいのか?儂も若ければ迷わなかったであろう。
困って居る人が居れば、それを打開する力があれば、それを振るう若さが、、、。
「年とはとりたくないものよな、、、」
「、、、、、。」
ふと先程の事を思い出す。生とは死を逝くもの。
ならばと、これくらいのお節介は良いじゃろ。
視線が、ぶつかり不安な表情を向けられる。了承とばかりに静かに笑みを浮かべ頷く。
思いが伝わったのか、一瞬驚きの表情を浮かべすぐに涙で青年の顔が崩れた。
ずっと探し求めた人物に巡り合えた事の安堵と共に、、、。
「安心するのは、まだ早いじゃろうが、、まったく」
こやつの思いもわからんででは無いがの。優しく見つめるの眼には、子供の様に泣きじゃくる優しい魔族が映っていた。
本番はこれからである。
呆れ半分嬉しさ半分。やれやれと肩を竦めながらしかし、その目には嬉しが勝っていた。
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