忠臣クランチ
【改訂版】になります!よろしくお願いいたします!
「この話は、私が帝国ではなく魔王国にいた頃まで遡ります。」
座布団に腰を下ろし、ポツリポツリと思い出すかの様に少しでも詳細に、伝えようと言葉を選びながらそして時折、涙を拭いながら話始めた。
「そう、、あれは今から三年位前の事です。
語り始めたクランチを一柱の老人は、真剣な表情で聞き入る。
◆
遡る事3年前、、、、。
一人の姫が、産声をあげこの世に生を受けた。
もしかしたら何日も時間が過ぎたのではないか?と錯覚さえしてしまう程、永く感じた。
出産による激痛なのか、時折、王妃の叫び声が廊下まで響き渡る。部屋の外には椅子が用意されており、そこには魔王のログ-クーデラが腰掛け、その横に控えていた。
魔王様は、いつもの落ち着いた雰囲気など見る影もなく、そわそわしていた。内心クランチも穏やかでは無かった。
長い、、、長過ぎる。
もとより魔族とは産む事に大した抵抗が無いと言えば語弊があるが、角や尻尾など付いていて当たり前であり。それも1時間もすれば無事生まれる事がほとんどで、難産など私も書物ぐらいしか見た事しかない程である。
私が呼んだ書物では幼体にして翼を持ち子宮のなかで翼を広げてしまい難産となった話だ。その時は、慎重に翼のみを切り落としなんとか生まれて来れた。
仕方ないがまた生えてくると信じ。
待つ事しか出来ない自分が憎い、、、、、。
つい、拳に力が入る。
手助けに行っても何の役に立たないならまだしも、邪魔でしかない。そんな自分に苛立つ。しかし、自分以上に辛い御方が私の横に居るのもまた、事実。
しかし、なんて声を掛ければ良いか分からない。
先程から祈るかの様に胸の前で手を組んで、時折聞こえる王妃の悲鳴にドアの方を向き、また祈る。そんな事を繰り返している。
もう何度目かも分からない程、悲鳴の後に待望の声が廊下に響く。
自然と、手が魔王様の肩に触れ目が合う。
多分酷い顔だったろうと今になって思う。なにせ魔王様の顔が滲んで見えないのだから、、、、。
扉を開き、出来る限りの笑顔で魔王様に入室を促す。
魔王様は慌てる様に駆け込み。母子の無事を確認する。
部屋の内部には、メイド長をはじめとした。メイド達と助産婦の先生が疲れた様子で立っている。
それより先程から魔王様が目に涙を浮かべ、姫と王妃を抱いている。
「無事で良かった、本当に良かった。」
従者達も疲労の色が濃いが安堵の表情を見せているが何故か表情が暗い。
不思議に思い姫君をみてみる。一つの胴体から歪に手3本、足は一本のみであり頭は辛うじて一つだが二人がぴったりと引っ付いている様にみえる。あまりの衝撃で意識が飛びそうになるがその様な事を全く気にしない魔王様と姫の様子に我々が不敬であったと思うと同時になんとかせねばと気持ちを切り替える。
転生者と転移者には特殊な能力と叡知があり、その者達ならばと思考を巡らす。
「クランチちょっとよいか?」
不意に呼ばれた事に対し、虚を突かれ只魔王様の目を見る事しか出来ぬ私に。目を伏せ一緒について来る様に促すされ退室し、執務室まで無言でついていく。
執務室に着き開口一番、
「どうすればよい。いや、よかったのだろうな」
いつもの自信と覇気は跡形も無く。只、今にも泣きそうな顔を浮かべ藁にもすがる思いが、手に取る様に伝わってくる。
「妃様を安心させる為には、、、」
言葉を紡ごうど思った矢先、それは違うだろ!とそれは何の解決にはならない!只、問題から目を背けているだけだろう!と心が否定する。
「後、私にお任せください。必ずやいつか、、、いくら時間が掛かろうが必ずやお救い致します。」
涙を浮かべながら今まで王に対して向けていた穏やか表情ではなく姫様の為ならば、何でもすると硬い意思が籠った瞳を向ける。
「頼む。」
短くも臣下の意思を汲んだ。一人の父親が居た。
臣としてこれ以上の誉れは無い、なんとしてでも王に、妃様に、生まれて来て下さった姫君を救うと、、、。
「御意。」
臣下の礼で応えた。
それからの行動は早かった。影に潜む従者達と共に各国の情報収集を行う為に、魔王の下を去る。
いつまで続くかわからない孤独の戦いはこうして始まった。幾多の試練を乗り越えて帝国の宰相になるそれはまた別の話。
そして私は一度、野に下り魔王様の悲願でもある。姫君をお救いする為の旅にでました。以上で私の話は終わりです。お救い頂け無いでしょうか?何か対価が必要でしたら、私の命でも何でも喜んで差し上げます。」
先程から調整者様は何やら考えているご様子。時折、
「年とはとりたくないものよな、、、」
断られてしまう、、、どうすれば、どうすればいい。やっと姫君を助けられるお方にたどり着けたのに、、、、、。
肩にそっと何かの熱が伝わる。
思わず肩に目をやり、手だと確認できる。
手から肩に、、、、、肩から顔に、、、ゆっくりと引き寄せられる様に目が合う。
目を見たら分かる。優しくそれでいて、安心させるようにに何度か頷く神様に、肩の荷が降りた様な安心に胸中のつかえが取れたように熱いものが目から頬に伝った。
「安心するのは、まだ早いじゃろうが、、まったく」
少し呆れた様子の溜め息混じりの声が聞こえる。
それに対し心の中で、謝罪した。
すいません、、、、もう少しだけお待ち下さい。もう少しでこのクランチ、、、元に戻りますから、、、。
◆
場所は魔王城、城門前。
小高い岩場の上に大きい洋館の様な城に、外壁は白い下地に青い模様が施されとても魔王の城とは思えんわい。詐欺じゃろ?
と内心毒づく。
塔の様に高い双柱に鉄の門扉が付いており、重々しい。ありゃ取り付けた奴は力持ちじゃな。
人影が二つ、前に現れるや否や敬礼をし、クランチから衛兵に懐から出した一軸を受け取り一人が城の方へと走って行った。
それは、自分がクランチである証明と王にお目通り願う内容である。直接会って言えば良いが離れて。早三年、焦る気持ちを抑え形式を重用した。
魔王から許しを得て早速、謁見へと段取りが次々と進む。あまりに早い段取りにクランチの顔から笑みを溢れる。
焦る王が優しき王が目に浮かぶからだろう。準備が終わり臣下の礼にて待つ、どの様に平静を保とうするがその顔から出る嬉々としたオーラが滲み出ている。
早足が聞こえ、王座に雑に座る。
その慌ただしさに、苦笑いを浮かべる。
「息災であったな!してどうであった!」
声を聞けば解る。あの方だと。
「ハッ、解決できる。唯一の御方をお連れしました。」
許しがなく、頭を下げたままのクランチに一瞬疑問に思うが、直ぐに理解し咳払いを一つし、お前はそういう奴だったと三年前を思いだし笑みを浮かべる。
変わらぬ様子の友に、嬉しさを覚える。
「面をあげよ。」
「ハッ」
彼が魔王に仕えてから久しく見てない笑顔がそこにあり。王として、友として嬉しく思う。
「直ぐにでも、姫君の元へ向かいとうございます。あと、申し訳ありませんが、彼の者に対して詮索は、、、。」
「あいわかった!ついて参れ!」
我が子の事もあるが、無理して来て頂いたのであろう御仁、そして、何よりクランチが連れて来た御仁に無粋な真似はしたくないと思い至っての快諾。
謁見の間を出た魔王は、一人の翁と目がある。
全身に鳥肌が立つのを感じる。呼吸すら忘れてしまう程であった。
何秒、もしかしたら何時間もの時間が経ったのかもしれない。膝付きそうになりそうになるが、なんとか思いとどまる。気持ちを抑え頭を下げる礼を取る。
それは一重に娘への愛故に、一刻も早く助けたいという親心である。
「助けて、、、、、下さい。」
王の豹変ぶりに、クランチは慌てるが、理由は王が一番わかっている。そう思い直し、横に並び再び頭を下げる。
「お願いいたします。」
その様子に、肩を竦めながら軽い声が廊下に広がる。
「良いよ」
良き親(王)だな。良き臣に恵まれ、良き従者に恵まれとるな。そんな事を思い王の後ろ控えている従者と臣下に手を振り応えた。
◆
成る程、確かにこれは難しいの。目でみてベッドに横たわる少女をみる。二つの肉体に対して心臓が一つ。切り離せば直ぐに死ぬ、切り離してる最中に死ぬかも知れない。思考を巡らす。
自発的に生きれば、切り離すだけで良い。しかし、命の創造とは難儀じゃの出来なくないが影響が計り知れない。神としては、まづかろうな。
同時に、この神のイタズラを許せない。あやつでは無い他の者か。ならば、喧嘩を売ろうではないか!後に会うであろう神を想像し悪い笑みを浮かべた。
「一つ、使える体はそのまま使うぞ。二つ、何があっても受け入れろ。体には傷は残るであろう。」
王妃が思わず、小さく悲鳴をあげる。それを、王が抱き寄せ頷く。
「まぁー悪い様にはせん。儂に誓ってな!」
◆
2週間後、元気な子供の声が中庭に響く!
その姿を見て、未だに従者と臣下は涙を流し、王妃と王はその様子を見て肩を竦めるが元気に走り回る子供達を見て、笑みを浮かべる。いつか夢見た光景だと言わんばかりに、、、、三年を取り戻す様に。
「「じぃーじぃ!!」」
「ほれ!どうした?」
「ヘビしゃん!」「ムカデしゃん!」
「ルコル、ルルア噛まれても知らんぞ?」
「「だいじょうぶだよぉ〰️」」
二人の頭を撫でて笑い掛ける。
少し雑な撫で方ではあるが二人は喜ぶ。
手が離れる。
蛇とムカデが、飛んで行き爺に噛みつく。
「あっ痛ぁ〰️〰️」
その様子を見ていた一人が駆け寄る。
「じぃじ、だいじょうぶ?いたいの?」
その気遣いに、嬉しくなり頭を撫でる。
「ココルは、本当に優しいなぁ〰️」
褒められたの嬉しいのか、目を細め微笑む。
そこには血は繋がっていないが、三人の孫娘達に遊ばれている爺が居た。それはとても幸せそうであり、誰が見ても孫と爺であった。
「「じぃさまだーいすき!」」
「ほっほっほっ!」
中庭には今日も、クッキーの焼き上がりを知らせるベルが軽やかに鳴り響く。
ありがとうございます!
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