爺の朝。
【改訂版】になります!
爺の朝は早い。
鶏すらも寝込んでいる深夜4時に目が醒める。半世紀以上繰り返した体内時計は、異世界に来たぐらいじゃ全く狂わない。
それは、悲しい事に睡眠時間は関係がない。夕方に寝ようが夜中に寝ようが4時である。ましてや二度寝など全く出来ない。醒めた目はまた閉じてはくれない。以前の日課であったモーニングコールも出来ない事で生まれた暇な時間。暇を最も嫌うのが爺という人種。
辺りはまだ静けさを漂わす森の中、一人歩く。目的も無くただ目的を探しながら進む。木を切るのにも幾ばくか早い。畑もまたしかり。
水が流れる音が聞こえ、足をのばした。
手頃な石を見つけ手に持ち、川から頭を出す岩にぶつける。寝ていた魚は気絶し浮かんで来たのを素早く捕獲し捌き腸を川で洗いエラから蔓を通しまとめる。
朝食である。
家に帰る頃、辺りは青みがかる山々の輪郭を現す程に明るくなって来ており、家に着く頃には朝日が山から顔を出し始めた。
「おはようございます!」
「おーおはよう。」
家に着くと窓から身を乗り出す元気よいロキの挨拶を手を振り答える。まさか、起きているとは思わず少し狼狽えてしまう。
「何をしていたのですか?」
「魚をちとな、ほれ。」
蔓を持ち上げ川魚を見せる。満面の笑みを浮かべ窓から飛び降り、走り寄ってくるロキを見て危ないからと注意するが気持ちが嬉しいのかその表情はやわらかい。
「のう、ロキや。ちと頼みがあるんじゃが、、。」
「は、はい。なんですか?」
叱咤をくらい反省し少し落ち込み。いきなり頭を撫でられたのが、びっくりしたのか少し声は上ずっているが、声色は明るい。
「これくらいの小枝を10本程頼まれてはくれんか?」
両手を肩幅程広げる。
「わかりました。」
と走り出すロキを見送り、あまり遠くに行くなよと声を掛けるが既にその姿は無く森の中に消えて行った。
やれやれと肩をすくめ、小屋へと歩を進める。
台所に立ち、獲ってきた魚を一度真水で洗い流し塩を振り笹の葉を敷いた容器に並べていく。
10分程で作業が終わり次の準備を始める。
12畳程の小上がりの中心に一基の囲炉裏を置き、周りを取り囲む形に寝室5部屋に台所、浴室とありそれぞれ部屋を割り振っている。
囲炉裏には、灰が敷いてあり薪を並べ火を起こす。火箸を使い火力を調節していく。安定した頃にはロキも戻って来ており、静かに様子を眺めていた。ロキを呼び膝の上に乗せながら静かに話す。
「火は便利じゃが必ず儂らがおる側で使うのじゃぞ。」
そういいながら、ナイフ片手にロキから枝を受け取り形を整えていく。先端を削りそれを魚の口から挿し込み尾から先端を出す。見本を見せた所でロキに一本渡す。
見よう見まねで不慣れではあるがきちんと形を成す。
その様を横目で見ながらたまにコツを教え、他の串を仕上げていく。
準備が終わった頃には、朝日も輝いており部屋の中が明るくなって来た。頭を一撫でし寝坊助を起こしてくる様に頼み、茶の準備と魚を焼き始める。
「おはおうございまふ。」
「あぁ、おはよう。」
瞼を擦りながら今起きたのであろう人物と挨拶をかわす。頭には特大のタンコブが出来ており壮絶な攻防(一方的)が見てとれる。
椅子に胡座をかくように座り、茶を啜る姿に呆れと、心配(女子として)する。
「あーしみるー。」
囲炉裏の側に座り、串を動かし焼き具合をみる。皮の表面に空気が浮き出てポツポツと突起し始め裏返し焼き目をつけていく。その様子を見せながらロキに説明し、頃合いを見計らう。
「そろそろ飯にするかの。」
「はい、じぃさま。」
嬉々として食器を用意しに台所に向かうロキを眺める。
「では、いただきます。」
「「いただきます。」」
手を合わせ各々食していく。箸で崩して食べたり(ロキ)、そのまま食べたりしたり(駄女神)食事を様子を見て楽しむ。
「「美味しい!」」
ロキと女神が叫び!次々と食べていく。それを眺めて慌てるでないと声が途中で苦笑いに変わり笑顔になった。
目の前で、魚を取り合う二人を眺めて今日の予定を考える。
第一に畑、木の根を掘り起こし十分、乾燥させたので一ヶ所に集め燃やして、炭にする。
第二に水路、水汲みが面倒だから。最近は率先してロキが汲みに行ってくれるのだが、心配して後を付いていってしまう。
今日はこの2つを行うかの、、、。
「「ごちそうさまでした!」」
そういえば食事の最中であったな。
魚を頬張る姿を見て、ロキが心配そうな顔を向ける。
「じぃさま、体の具合悪いの?それとも、、」
横を向きながら食事を終え、もう一寝入りしようと寝室に向かう女神に聞こえる大きさで言う。
「役立たずの穀潰しのせい?」
戸に手を掛けた状態でピクッと固まる女神。
「わっ、私は着替えようと、、、な?」
「ふぅ〰️〰️ん?」
まるで小姑じゃな。
「大丈夫じゃ、ちと今日やる事を考えとってな?」
儂の言葉を聞き安堵の表情を浮かべる二柱を見て、つい口元が緩む。
「そうじゃ!ならお二人さんに手伝って貰おうかの?」
「うん!わかった!」
満面の笑みで答えるロキ、項垂れる女神。
◆
「まずはお前さんからじゃ。」
アステアは渡されたスコップと鍬を手に持ち、まじまじと眺める。
「使い方は、、、、分かるかの?」
「はい、、、で、何をしたら?」
「まず、あの方角に溝を掘ってほしいのじゃよ。」
指を川のある方角を指し示す。
女神が固まる。言葉が理解を越えてしまった。
「やりなよ?陽が暮れちゃうよ?」
ニヤニヤしているロキを只、無言で見つめる。
無言のまま、歩く。
視線はロキに固定されたまま、、、、。
視線をゆっくりと森に向け、深呼吸。
「チェストォーーーーーーーー!」
斬撃は森の中に進み川を越え、森を越え、砂漠を越え、魔王国の横を通りすぎ海まで伸びた。
「あちゃーっ」
やってしもうたな、、、、。
ロキがまじまじと斬撃の溝をみる。
「あの時、これやられてたら本格的にヤバかったかも、、、、、、、。」
「なぁお前さんや、、、、、」
「は、はい。」
勝ち誇った表情から一変し慌てる表情の女神アステア。
「誰かに当たったらどうするんじゃあぁ〰️〰️〰️!」
激を飛ばす爺に、ビックリするロキ、咄嗟に土下座する駄女神。
謝り慣れとるの、、、、、。
◆
アステアに斬撃の様子を見に行かせてる間に、気を取り直しロキと畑へやって来た。
「じぃさま、、、確かに悪かったと思うけどあんなに怒るなんてビックリした。」
「ロキよ、我々には確かに多少かも知れんがあれがこの世界に与える影響は未知数じゃ。それに、、」
「それに?」
「あの方角は、魔王国に近い。今頃、混乱しとるじゃろう。」
ロキは想像し納得した。慌てふためくクランチが目に浮かぶ。そして、今頃同僚が土下座している姿が
「さて、始めるかの?」
「はい。」
多少哀れに思うが。所詮、他人であり自業自得だからと切り捨てるロキは爺の後に続く。
「良し、着いたの。」
「それで何するの?」
一つの切り株を持ち上げロキに見せる。
「これをの、畑の中心に集めていくんじゃ。」
意味はわからないが、じぃさまが言うなら意味が有るのだろうと納得し集め始める。
切り株が抜いて有るといっても根はかなり大きい。身の丈程もある為に引きずる状態になってしまう。しかし、全く重さを感じさせない様子に爺は驚く。
雑草の根で良かったのだが、まさか切り株を持ち上げるとは夢にも思わなかった。
「じぃさま凄い!?」
って言って貰うのを期待していたので、、。
軽々と運ぶ姿を見て、やるせない気持ちになる。
「じぃさま終わったよ?」
「お、、おぅ。よう頑張ったの、偉いぞ。」
頭をワサワサと撫でる。
喜ぶロキを見て頭を切り替える。
「危ないから、少し離れておれ。」
ロキが離れているのを確認し火打ち石で火を点ける。メラメラと燃え盛る火を眺め説明する。
「木を燃やせば灰になり、それを土と混ぜるとフカフカになり良い肥料となるんじゃ。」
「肥料?」
「肥料はな、土に栄養を与える事じゃ。簡易的ではあるが、、、そうじゃの。ベッドがフカフカだと寝ていて気持ちいいじゃろ?」
「うん!フカフカのお布団は正義!」
食い気味に反応するロキに若干、引き気味に答える。
「それはの、野菜も同じなんじゃ。美味しい野菜が育つ魔法じゃの。」
「そうなんだ。出来るといいね!」
視線を火に向け、納得した様子で答えるロキの頭を優しく撫でる。
「そうじゃの。」
◆
「本当に申し訳ない!」
土下座の女神を前に、頭を抱える一同。謁見の間にて、事の顛末を聞き安堵と呆れの空気が満たされる。
「なら、、、敵意無しって事ですね?」
「はい、、、、。」
申し訳なさそうに答える女神を見て、被害の報告を待つ魔王が居た。
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