銃と目的③ 考えすぎて楽しんでいたら、死にかけます!!
もう1話、20時前後にあげる予定です。
バン、バン、バン、バン!
「よし、射撃は終わりだ! 次は戦闘訓練だー!」
「いやー……もう少しやらない……」
「ダメだ、今日は張りきってシゴいてやるからなー!」
この無駄にノリノリな感じが、余計にムカつく!!
ゼロはそう言いながら壁へと近づき、壁面のセンサーに指を押し当てて指紋認証を行った。ジーッという重い駆動音とともに壁がスライドし、壁一面に設置された訓練用の仕掛けが姿を現す。
「うわ……この場所見るだけで、寒気がしてきた……」
「ははっ、安心しろ! 今日もみっちり鍛え上げてやるよ!」
「ホントにクソだな!!」
俺は、1週間前と同じようにひたすら飛んでくる攻撃を避ける体勢に入った。
最初は順調にかわしていたものの、時間が経つにつれて足が重くなってくる。今日は前に比べてまぁまぁ避けられている気がするが、やっぱり掠ったり当たったりすると、容赦なく激痛が走る。
「くそっ……! 相変わらず容赦ねぇな!」
息が上がり、汗が目に入って沁みる。
必死に体を動かしながら、俺は心底思った。
……もう帰りたーーーーい!!
それから、恐らく2時間は経った頃――。
「よし、今日の訓練はここまでだ! 帰る準備するぞ!」
「はぁ……はぁ……はぁ……、あぁ、バカか?……ちょっとぐらい休ませろよ」
「バカとはなんだバカとは!……まあ、よく動けてた方だしな。ほら、タオルと水だ」
俺は投げ渡された水を飲み干すと、ゆっくり荷物をまとめた帰る準備を始めた。
疲れた体を引きずるようにして練習場を出て、暗い階段を上り、地上にある車の前へとたどり着く。
ゼロが慣れた手つきで車のドアを開けた。
「乗っていいぞ」
「わかってるよ!」
ドアの前に立ち、車に乗り込んだ。
ゼロが乗り車はゆっくりと動き始め15分ぐらい立った。
走行音とわずかな揺れを感じながら、俺は静かに口を開く。
「ねぇ、師匠」
(……やっぱりか)
「お前、ゼロじゃねぇだろ」
「………………」
男が少し黙ると驚いたかのように言った。
「そんなわけないだろ! 戦闘訓練で疲れすぎて、頭でもおかしくなったか?」
「まぁ、そりゃそうやって嘘言うわな。じゃあ教えてやるよ。俺がなんであんたを『ゼロじゃない』って確信したか、その理由をさ」
ゼロの姿をした男の喉が、緊張でゴクリと鳴った。そのかすかな音を聞き逃さず、俺は畳みかけるように言葉を重ねる。
「まず、俺が最初に疑いを持ったのは、車の運転と……地下訓練場の場所を一瞬迷ったことだ」
俺は指を立てながら、淡々と突きつける。
「まず運転だが、本物のゼロならもっと荒々しい運転をして、いつだって俺の首を痛めさせてくる。それに訓練場に関してもそうだ。俺が初めて一緒に行った時ですら一回も迷わずに行ってたやつが、たった1週間来なかったくらいで入り口を探すような真似、するわけがねぇんだよ」
すると、今のいままで黙って聞いていた男が、苛立ちを隠すように口を開いた。
「……だが、そんな二つなんて、いくらでも言い逃れができるだろ。たまたま今日は安全運転したい気分だったかもしれない。場所だって、たまたま今日限ってど忘れしてただけかもしれねぇ」
「まぁまぁ、落ち着けって。いま言ったのは、あくまで俺が違和感を覚えて『疑った理由』だよ。俺がそいつを『確信』に変えた理由……それは射撃場での『ハンドガン』って発言だ」
「なんだそれ。銃のことを英語で言っただけだろ? もしかして『本物のゼロは英語じゃなくて日本語で言うから』なんて、そんなふざけた理由じゃないだろうな」
「あぁ、違うよ……そもそも本物のゼロはな、俺の前でそれを『銃』とすら呼ばねぇんだよ」
「……はぁ?」
「まぁ、そう思うよな。あいつは俺に変な気を使ってるのか何なのか知らねぇが、俺の前じゃあ一度だって『銃』なんて言葉を使わないんだ」
男の顔から、微かに余裕が消えていく。
「……だが、それだけならまだ――」
「いや、まだある。今日の戦闘訓練だ。いつものゼロなら、一度当てて痛めた場所を集中的に狙って攻撃してくる。だがあんたは、わざわざ全体へ打撃が散るように、まんべんなく当ててきた」
俺はそこで言葉を切り、不敵に口角を上げた。
「そして……これが一番の決定打だ。さっきの『師匠』だよ。俺はあいつを一度だってそんな風に呼んだことはねぇ。もし本物なら、俺が『師匠』なんて呼んだら調子に乗って大喜びするはずなんだよ。なのに……お前はすんなり受け入れただろ? どうだ、これを聞いてもまだ嘘をつき通すつもりか?」
「一つ聞いてもいいですか?」
その声は、もはやゼロのものではなかった。全く聞いたこともない、冷たく低い男の声だ。
本物の声を捨てたその音を聞いた瞬間、俺の胸に驚きと恐怖が一気に押し寄せてくる。
「なぜ、このタイミングで話したのですか? 見破っていたのなら、話す機会などいくらでもあったでしょうに」
「……じゃあ逆に聞くけどさ、どこで言えばよかったと思う? 人気がなくて武器が山ほどある地下室か? それとも、絶対に逃げ場のない戦闘訓練場か?」
「…………」
少しの沈黙が流れた後、男はぽつりと返した。
「確かに……一理ありますね」
そう言うと、男は静かに車を路肩へ止めた。
俺は思わずゴクリと唾を呑み込む。
「ですが、一つだけ残念なお知らせです。……さっき貴方が言った『逃げ場がない場所』というのは、この車内も同じですよ」
男が素早い動作で右手で銃を取り振り向きざま、こちらへ銃口を向けてきた。
だが――俺は不敵に口角を上げた。
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