第8話 知人からの呼び出し
イツキが呼び出しを受けてから、翌日。
イツキはダンジョン管理局に向かうため、朝早くに出発した。約束は午後からだが、ここからだと時間がかかる。早朝とまではいかないが、一般的な通勤時間くらいには出ないといけない。
今の家からだとやっぱり遠い。元々、この家を購入した時点で引きこもるつもりでいた。なのに呼び出しを食らい、また戻る羽目になるとは思っていなかった。これについては想定外だった。でもこんなことは頻繁に起こることでもないだろう。今回だけの我慢だ。
数時間かけて目的地に到着する。
イツキを呼び出した人物がいるダンジョン管理局は、イツキが以前通ってたダンジョンの横にある。
ダンジョン横に併設された建物がダンジョン管理局。立派なビルがそびえたつ。
通常は最低限の人員で運営しているので、ダンジョンの近くに小さな事務所が建っていて、そこで受付や着替えを行なう。
しかしイツキが拠点としていたダンジョンは高ランクのダンジョン。大きなダンジョンには人が多く集まる。そのため対応する職員の数も多くなり、建物も大きくする必要があった。
イツキを呼び出した人物はダンジョン管理局の職員としてここで働いていた。
早速、彼女に会いにダンジョン管理局へ向かう。入り口で受付を済ませると奥の部屋に案内される。数分待つと、
「お待たせ。久しぶりねイツキ」
やってきたのはブロンドヘアをまとめ上げた制服姿の女性。相変わらずシゴデキオーラが半端ない。
「お久しぶりです、シルフィーさん」
クールで知的な女性の名はシルフィー。イツキの数少ない知人の一人で、イツキを呼び出した人物だ。
「そういえば今も正体隠したままなんですか?」
「ええ、今のところ私から正体を明かすつもりはないわ」
イツキの目の前に座るシルフィー。 実はシルフィーはただの職員ではない。彼女にはある秘密があった。
この世界には異世界人が存在している。
ダンジョンは異世界に繋がっているらしく、時々異世界人が迷い込んでくる。シルフィーもそんな異世界人の一人だ。変身魔法で姿を変えてはいるが、その美貌までは隠しきれていない。
エルフ。ファンタジー定番の登場人物。それがシルフィーの正体だ。シルフィーはこちらの世界にいる異世界人の中でも古株で、今はダンジョン管理局の職員として働く他、迷い込んだ異世界人のサポートをしている。
イツキはそんなシルフィーの正体を知る数少ない人間の一人だった。
「早速なんですけど、用件を聞いてもいいですか?」
イツキは話を切り出す。
シルフィーの事情を知る数少ない人間であるイツキは、以前にもシルフィーから直接依頼を受けることがあった。その内容は大抵厄介なものが多かった。今回の内容も面倒なのは間違いないだろう。
「今連れてくるから少し待っててちょうだい」
「連れてくる?」
そう言うとシルフィーは部屋を出ていった。何だか嫌な予感がする。
数分しない内にシルフィーは戻ってきた。そしてその後ろにもう一人。シルフィーが連れてきたのは一人の少女。
「えと、その子は?」
イツキにその少女と面識はなかった。
「彼女の名前はニーナ。ほらあなたも挨拶して」
「うん、私ニーナ。よろしくね!」
「はじめまして、俺の名前はイツキ。よろしく」
元気に挨拶する少女の名はニーナ。年は15,6だろうか。小柄で茶髪の明るい女の子だ。しかし普通の女の子にはない特徴があった。
「あのシルフィーさん、彼女って…」
「ええ、そうよ」
ニーナの頭にはネコ耳、そして体の後ろから尻尾がゆらゆら見えていた。
「ニーナは異世界人よ」




