第9話 獣人の少女
シルフィーが連れてきた少女ニーナ。彼女にはネコ耳と尻尾があった。
「あれ?なんでわかったの?」
ニーナは驚いた様子でイツキを見る。
「イツキはね、私の魔法が効かないのよ」
ニーナはシルフィー同様に変身魔法がかけられていて、普通の人にはネコ耳と尻尾は見えないようになっている。
しかしイツキには何故かそれが効かないのだ。体質なのか何なのか理由は不明だが、イツキには元の姿が見える。それがきっかけでシルフィーと知り合うことになったのだ。
「ニーナはね、最近ダンジョンで保護されたのよ」
シルフィーはニーナについて話し始める。ニーナは最近ダンジョンで見つかった。
ダンジョンで異世界人が発見されたのは久しぶりで、今世間では騒ぎになっているらしいが、イツキは全く知らなかった。野良ダンジョンのことで頭が一杯になっていたというのもあるが、元々そういった世間の話題には興味がなかった。
見つかった異世界人はまずダンジョン管理局で保護することになっており、同じ異世界人であるシルフィーが手を回し、彼女の担当になっていた。現在ニーナはシルフィーの変身魔法で姿を変え、過ごしていた。
「本来なら探索者になってもらうのがいいのだけれど、ニーナには少し事情があってね…」
ダンジョンで見つかった異世界人の多くは向こう側で元々探索者のような仕事についており、こちら側にきた場合も探索者やダンジョンに関わる仕事に就いていた。
しかしニーナはとある事情によりそれが難しい。だが、このままシルフィーが面倒を見続けるにも限界があった。シルフィーは現在、正体を隠しておりそのことを知っている者は少ない。担当者とはいえ、いつまでもニーナと一緒にいることはできない。
その時、イツキが田舎に引きこもった話を思い出す。そこは人里離れた緑豊かな落ち着いた場所。それにイツキはシルフィーの正体を知る数少ない信頼できる人物。ニーナも安心して任せることができる。
「という訳なのだけれど、お願いできるかしら?」
シルフィーの話はニーナをイツキの家で保護して欲しいということだった。
さて、どうする。いきなり見知らぬ女の子と暮らす。正直不安しかない。
今までボッチだったイツキには正直荷が重い。探索者時代もソロだったし、今まで共同生活などしたことがない。その上、女の子ときた。不安しかない。
野良ダンジョンがバレた訳じゃなくホッとしたが、これはこれで難しい相談だった。
「……」
不安そうな目でイツキを見るニーナ。
そうだ。彼女はいきなり見知らぬ異世界に一人できて頼る人もいない。それに訳アリらしい。イツキも似たような境遇だった。その気持ちはわかる。
「ま、何とかなるか」
イツキはニーナを受け入れることに決めた。
不安もあるが、考えようによってはいいこともある。ニーナに野良ダンジョンの運営を手伝ってもらうのだ。
ダンジョンで見つかったのだからニーナもおそらく探索者だった思う。事情により探索者はできないとはいっているが、あの野良ダンジョンなら何とかなるだろう。それに山の見回りをしてもらうだけでも十分助かる。やることはたくさんあるから、できることをやってもらえばいい。
重要なのは野良ダンジョンのことを黙っててもらうこと。これだけ厳守してくれればいい。
「わかりました。その話引き受けましょう。よろしくニーナ」
「うん、よろしく!」
イツキはニーナを預かることになった。
これで話はまとまった。あとはニーナの引っ越しについてなど、詳しく詰めていくだけ。と油断していたのがマズかったのか、
「…ところでイツキ」
シルフィーがイツキに問いかける。何だかもの凄い嫌な予感がする。
「私に何か隠してない?」
「えっ?」
冷汗が出る。
「そうね、例えば野良ダンジョン見つけた、とか」
あ、ヤバい。バレてる。




