第3話 よし、黙っておこう
野良ダンジョンの調査を始めて第5階層までやってきたイツキ。
第5階層ではオークが出現し、戦闘を開始する。
「1匹だけだし、手早く倒すか」
イツキは剣を構え、オークへと駆け出す。
オークはこん棒を持ち身構えている。
「遅い」
イツキは素早くオークの後ろに回り込み、剣を振るう。オークの首が落ち、胴体が倒れ消滅する。残ったのは魔石と肉。
「オーク肉か。このダンジョンは当たりかもな」
この辺りは農家が多く、野菜は販売所で手に入る。だが畜産家はいなかったので肉を買うには遠出する必要があった。しかしこのダンジョンのおかげで簡単に肉を入手できる可能性が出てきた。今後の生活のためにも危険がないかしっかり調査しよう。
イツキは気合を入れてダンジョンの調査を再開する。
「うーん、ここで行き止まりか。野良ダンジョンだし、まだ成長途中なのか?」
道中、遭遇するオークを倒しつつ階層を見て回ったが、次の階層に続く階段は見当たらない。特殊な例を除くと階段がない場合、そこが終点となる。
「ダンジョンコアを探すか?でも、そこまでするのは面倒だな」
第5階層が最深部であれば、この階層にダンジョンコアがあるはず。だがそれらしきものは見当たらなかった。セオリー通りでいくとどこかに隠し部屋などがあるはずだが、今のところダンジョンを攻略するつもりはない。なら放っておいてもいいだろう。
幸い、このレベルのダンジョンであればイツキだけでも十分対応できる。調査はこのくらいでいいだろう。引き上げることにした。
第5階層までの探索を終えたイツキは第1階層まで戻ってきた。
「クロ、ただいま」
クロを探すと草原の真ん中で寝転がっていた。ここはダンジョンの中であるというのに無防備で熟睡していたようだ。
「ンニャ?」
クロはイツキの声で起きると用事は終わったのかといった感じで近づいてくる。
「ああ、帰ろうか」
クロの歩幅に合わせ、ダンジョンの出口にゆっくり向かう。ダンジョンから出たクロとイツキはその場で解散した。どうやらクロの目的はイツキにこのダンジョンを見せたかっただけらしく、満足した足取りで帰って行った。
自宅へ帰ったイツキはドロップ品の肉を早速昼食として食べることにした。家を出たのは朝だったが、帰宅した頃にはすでに昼を過ぎていたのだ。
「ここは簡単な豚丼にするか」
オーク肉を取り出し、食べやすいサイズに切り分ける。タレを絡ませ、手早く肉を焼く。キッチン中に暴力的な匂いが充満し、腹の音が早く食べさせろと催促してくる。
どんぶりに米を敷き詰め、その上にタレでコーティングされたオーク肉をのせ、豚丼もといオーク丼の完成だ。
「っ~、やっぱり普通の豚肉とは違うな」
やはりダンジョン産の食材だけあって、味は上等。素材の良さのおかげで、簡単な料理でも十分美味しい。
そういえばここ最近はダンジョン暮らしだったからレーションしか食べてなかったことを思い出す。それも相まってオーク丼はあっという間に完食してしまった。
「ふぅ、満足満足」
やっぱり肉はいい。よし、ダンジョンは残そう。イツキは改めて決意した。
昼食を終えたイツキは今後の方針について考える。
あの野良ダンジョンはイツキでも十分対応できるので、このままでも残しておいても問題ない。それに食材、特に肉が手に入るのがデカい。今後の生活を考えるとこのまま利用していきたい。食材が手に入る手段が多いのは助かるからだ。
ただここで一つ問題が発生する。
それは野良ダンジョンの扱いについて、だ。基本、未発見の野良ダンジョンはダンジョン管理局に報告しなければならない。が、それをするとここに人が来ることになる。
調査のために人員が来るのは仕方ないとして、その後ダンジョンを残すとなると、ここに他の探索者が来る可能性があるのだ。いくらイツキが探索者として優秀だからといっても、ダンジョンをたった1人で管理することはおそらく認められないだろう。
なので黙っておくことに決めた。
せっかく人のいない場所を手に入れたのに、人が集まってしまうのは本末転倒だ。それだけは絶対に避けたい。最悪、バレたらダンジョンを消滅させてしまえばいいだけだ。残しておきたいといっても、便利なだけだという理由だからなくても問題ない。
それにペナルティで探索者活動できなくなる可能性もあるが別にいい。探索者の仕事にはもう未練はないのだ。そうなったら畑仕事などして、細々と暮らしていけばいい。
そんな訳で野良ダンジョンは隠すことにした。
次は野良ダンジョンを今後どう管理していくかについて。
まずは第1階層。あそこについては特に害はない。何かする必要はないだろう。それにクロも気に入ってるし、変にいじると怒られそうだ。
第4階層以外の階層は毎日モンスターの間引きをする必要があるが、そこまで苦ではない。むしろ毎日肉が手に入るので、買い物に行くみたいなものだ。
肉以外のドロップ品、魔石や素材はどうするべきか。今のところ思いつかないので保留でいいだろう。
細かいところはおいおい考えていこう。ひとまず大まかな方針は決まった。ダンジョン管理局には内緒で野良ダンジョンを管理する。
久々に真面目な考え事をしたので気疲れしてしまった。食休みも兼ねて、イツキは昼寝をすることにした。




