第28話 失われた一族
スノウとイツキの昔話を聞き終え、ダンジョンの案内を再開するニーナ。
クロとの顔合わせも済んだので、次の階層へと向かう。
第2階層ではイノシシとサルがテキパキ働いていた。
「ほう、よく統率が取れている」
その様子を見たスノウは思わず感心する。
日に日にかしこくなっていった動物たちは連携も上手くなっていた。
「「!?」」」
スノウに気付いた動物たちが固まる。
「大丈夫だよ、みんな。この方はスノウ様。しばらくここにいることになったの」
ニーナは動物たちに説明をし、安心させる。敵ではないと言われホッとする動物たち。
その後ニーナとスノウは第3階層、第4階層とどんどん先に進んでいき、第5階層までたどり着く。ちなみにモンスターたちはスノウにビビッてダンジョンの隅で縮こまり、一切近づくことはなかった。
「ダンジョンはここまで。で、あそこがボス部屋だよ」
「なるほど」
ボス部屋にはオークキングがいるという。どんなものか見てみようかと思ったが、今はやめておこう。今日はあくまで見学。楽しみは次回に取っておこう。
ダンジョンを回り終えたスノウとニーナは第1階層に戻っていた。
「中々よいところだな」
「ニャ」
「でしょ」
スノウの言葉にクロは自慢げに頷く。ニーナも褒められ嬉しそうにしている。
このダンジョンはスノウのお眼鏡にかなったようだ。
「ただいまー」
「おかえりニーナ」
「ニーナっちお疲れ~」
ダンジョンの案内が終わり、イツキの家に戻るニーナたち。
『イツキ、ちょっといいか』
『何だ?』
『大事な話がある。ニーナのことでだ』
スノウがイツキに念話で語りかける。
「ニーナ。せわしなくて悪いが、山の見回りに行ってきてくれないか」
「大丈夫だよー。クロ先輩、いこっ」
ニーナはクロと山の見回りへと向かう。
「……これでいいのか。で、話ってのは何だ?」
居間にはイツキとアゲハ、そして再び犬の姿に戻ったスノウの3人。
「うむ、単刀直入に言おう。ニーナには特別な血が流れておる」
「特別な血?」
「かつて我らの世界にはあらゆるものと対話ができる一族がいた」
「過去形ってことは今はもう滅んだってことなの、スノウっち?」
「ああ、そう聞いておる」
「で、それの何が凄いんだ?」
「その者たちは神とも対話ができたという」
「神様と話す、ね。それってそいつ等しかできないのか?あっちには確か聖女がいただろ?」
「聖女は神託を受け取ることしかできない。神と対話できるのはその一族のみだ」
「つまりニーナっちはその末裔ってこと!?」
「そういうことになろうな」
スノウからもたらされたニーナの秘密。異世界で滅んだとされる一族の末裔。神と対話できるというとんでもない情報。
「ちなみにだが、異世界では今でもその一族を信仰する教団が残っている」
「ニーナっち、こっちに来たのラッキーだったんだね」
「うむ。主の近くに転移したのも何かの意思によるものだろう」
スノウはニーナがこちらにやってきたのは偶然ではないと思っていた。
「で、俺たちはどうすればいい?」
「今まで通りで問題なかろう」
「その特別な能力ってのはどうなんだ?」
「動物と対話できる便利なものとでも思っておけばよい」
「いい加減だな」
「世界が変われば価値も変わる。そういうものだ」
ニーナはこれまで通りで問題ないとのことだった。
「スノウっち、パイセンはこのことを知ってるの?」
「気付いているはずだ。だから我が派遣された」
シルフィーもニーナの秘密について知っているらしい。
「我とイツキがいればここの守りは十分だろう」
異世界の勇者の力を持つイツキと神獣であるスノウ。
スノウの言う通り、ここは今、この世界で最も安全な場所となっていた。
「ニーナにこのことは話したか?」
「いや、まだだ」
「それがいいかもだね。ニーナっちもいきなりそんな話聞いたらびっくりしちゃうだろうし」
「だな」
「それがよかろう」
ニーナにはこのことは伏せておこうという話になった。




