第23話 山のヌシを元気にしよう
ボス部屋が発生した翌日。
ダンジョンはすっかり落ち着いていた。
アゲハが近々ダンジョン管理局に一度戻るという話なので、先送りにしていたことを済ませることにした
「確かこの辺のはずだったはず」
イツキは一人、山の中を歩いていた。ただ歩いている訳ではない。
その目的は、
「お、いたいた」
イツキは1匹のクマを見つける。ツキノワグマだ。今日は今まで放置していたクマのスカウトに来たのだ。
クマは木の根元にできた大きな穴の中で丸くなり眠っていた。
クマはイツキに気付き、目だけ動かしイツキを見つめるが起きてくる様子はない。
何だか元気がないようにも見える。体も心なしか一回り小さいように感じる。
この山はイツキが来るまではイノシシたちで溢れていた。一方クマはここにいる1匹のみ。
数に勝るイノシシたちに対抗できず縄張り争いに負け、クマはろくに食事もとれなかったのであろう。
弱っているようにも見えた。
イツキが来てからは山にいたイノシシたちは全て、ダンジョンに連れて行った。なので今は多少はマシになっているはずなのだが、クマには覇気がなかった。
もしかして年齢を重ねた個体なのかも。それなら仕方ない気もするが、イツキとしては少々困る。おそらくこいつはこの山のヌシのはずだから。
「そうだ。アレを食べさせてみるか」
イツキは異空間からオークキングのタマが入ったビンを取り出す。オークキングのタマを食べればきっと元気になるだろう。
動物に食べさせた話は聞かないが、きっと効果があるはずだ。
「ほら、コレを食べるんだ」
イツキはビンからオークキングのタマを取り出し、クマに近づけた。辺りに強烈な臭いが漂い始める。
クマは逃げ出すことはしないが、とても嫌そうな顔をして前足で鼻を覆う。
「ああもう、じれったい。とにかく食べろ」
顔をそむけるクマにしびれを切らしたイツキは、顔を覆うクマの前足を引きはがしオークキングのタマを無理矢理クマの口に突っ込む。
強引にオークキングのタマを口の中に入れ、飲み込ませることに成功する。
するとクマの様子に変化が起こる。
クマの体は膨れ上がり、力が全身にみなぎっていた。先程までの弱った姿と打って変わって自信に満ちたオーラが溢れている。
オークキングのタマはクマにも効果があったようだ。
すっかり元気になったクマはイツキに頭を下げていた。イツキのことをボスと認めたらしい。
話が早くて助かる。無理に従わせる必要がなくなりラッキーだ。
イツキは元気になったクマを早速、ダンジョンに連れていく。
「今日から仲間になったクマだ。仲良くしてくれ」
ニーナたちにクマを紹介する。
「よろしくねー」
ニーナは慣れた手つきでクマを撫でる。クマは気持ちよさそうにしている。
とそこへクロがやってくる。
「ニャ」
「ニーナ、クロは何だって?」
クロはイツキに何か言う。
「えーとね、このクマは山のヌシなんだって。だから山の見回りをさせた方がいいんじゃないかって言ってるよ」
このクマはイツキの予想通り、ここらの山のヌシだったらしい。ひとまずダンジョンに連れてきたが、山の見回りの方が適任らしい。
「それなら、山にいてもらった方がいいのか」
イツキがそう言うとクマは何か伝えようとしてきた。
「イツキ。この子、ダンジョンも山もどっちもやれるって」
クマは若手社員ばりに自分やれますというアピールとする。
それなら任せてみてもいいのか。本人もやる気があるようだし。
ひとまずクマにはダンジョンと山、両方を任せることになった。
全部任せきりという訳にはいかないが、それでもこまめに山の見回りをしなくていいのはかなりデカい。
ダンジョンの戦力アップ程度に考えていただけだったので、これは嬉しい誤算だ。
こうしてまた新たな仲間が加わった。




