第21話 イツキといると退屈しないね
アゲハの荷物の荷ほどきを終え、一息ついた後、ダンジョンへ向かう一行。
「あれが例の猫ちゃんね」
ダンジョンのど真ん中で寝そべるクロを発見したアゲハ。
「ニャ?」
クロは見慣れぬ新顔を見て、頭にはてなマークを浮かべる。
「ウチはアゲハ。よろしくねクロっち」
クロに挨拶するアゲハ。
「クロ、アゲハは俺の知り合いだから安心してくれ」
「ニャ」
イツキの言葉に納得したクロはアゲハに挨拶する。
「よろしく~」
(この子、普通の猫ね)
アゲハはクロに挨拶を返しながら鑑定していた。
クロは何の変哲もない普通の猫とわかる。このダンジョンを見つけ、セーフティエリア内ではあるがダンジョンを恐れない猫。
何か特別なものがあるかと思っていたが、そんなことはなかった。たまたまこの子がダンジョンを恐れない個体だっただけなのだろう。
「みんなー、集まってー」
第2階層へやってくると、ニーナが動物たちを集める。ニーナの呼びかけで集まるイノシシとサル。数が少ないが、おそらく残りは第3階層に行っているのだろう。
早速、イノシシとサルを鑑定するアゲハ。
クロ同様、突出して変わった特徴はないが通常の個体より成長している。ダンジョンという環境に身を置き、モンスターを倒しているからだろう。
この世界ではゲームのようにステータスを確認することができない。鑑定スキルや鑑定アイテムを使っても、スキルの有無を確認するのがせいぜいだ。しかし鑑定能力の高いアゲハは、ざっくりではあるがステータスを見ることができた。これにより個体差の違いを確認できるのだ。
(特にかしこさが高いのね)
ニーナの影響か、ステータスの中で特にかしこさの部分が高かった。これなら野生動物でも指示通りに動けるのも納得だ。
ドロップ品を仕分けしているイノシシとサル。その様子を見て、アゲハはそう思った。
ちなみにダンジョンやモンスターも鑑定してみたが、普通のダンジョンと変わりない感じだった。この様子なら、このままイツキたちに任せて問題ないだろう。
やはりおかしいのはダンジョン運営の仕方の方だった。
「イツキングは昔から面白いことするよね~」
「そうか?」
「そうだよ~」
アゲハの言葉通り、イツキは昔から突拍子もないことをしてはシルフィーに怒られていた。イツキがダンジョンから離れ、最近ではそんなこともなくなり寂しく思っていたが、どこにいてもイツキはイツキのままのようだ。変わらないイツキにホッとする。
ここにいれば退屈することはなさそうだ。
その後、第3階層以降も確認する。ダンジョン自体は問題ない。
順調に第5階層まで進む。ダンジョンコアを探すが見つからない。アゲハの鑑定でも見つかる様子はない。イツキも言っていたが、このダンジョンはまだ成長途中だと思われる。近い内に変化があるはずだ。
しばらくアゲハはここに滞在することになっているので、その間に進展があればいいのだが。
ダンジョンの調査を一通り終えたイツキたちは帰宅する。
「せっかくだからウチがご飯作るね~」
アゲハが食事の準備を買って出る。
「やったー、アゲハのご飯すきー」
ニーナが歓声をあげる。
確かアゲハは料理上手だと聞いたことがある。ニーナもアゲハの料理を食べたことがあるのだろう。とても嬉しそうだ。
普段ニーナの食事を用意しているイツキとしては複雑な気持ちだが、そこまで料理が上手くないことは自覚している。張り合っても仕方ない。ここはアゲハの作る料理に期待しよう。
「できたよー」
食卓にたくさんの種類の料理が並ぶ。普段の食事では考えられないほど豪勢だ。
「初日でこんなに用意してもらって悪いな」
「え?これくらい普通じゃないの?」
どうやら料理ができる人間にとってこの量は普通のことらしい。人間力の差を見せつけられた気分だ。
「おいしー!あっちはつまんなかったけど、アゲハの料理だけは楽しみだったんだー」
ニーナはニコニコしながら食事を楽しむ。保護されていた頃は、アゲハの料理だけが唯一の楽しみだったらしい。
「イツキングはどう?」
「ああ、ウマいぞ。毎日食べたいくらいだ」
「あは、プロポーズかな?」
「バカ、ただの世辞だ」
「わかってるよー」
こうしてアゲハとたわいもない会話をしていると昔を思い出す。現役時代はよくこんな感じでアゲハとくだらないやりとりとしていたものだ。
「何だか懐かしいねー、昔に戻ったみたい」
「いうほど昔でもないだろ」
「そだねー」
知人で旧友でもあるアゲハが加わったことでこれからの生活は、より賑やかになりそうだ。




