第14話 就任、イノシシ係
第5階層にやってきたイツキとニーナ。
先程までの草原とは違い、薄暗い洞窟が続く。そんな不気味な雰囲気に怯むことなく進む二人。
洞窟の中を歩いていると早速、1匹のオークと遭遇した。
「ニーナ、任せた」
「うん、任せて」
ニーナはイツキの前に出て、オークと対峙する。
フォレストウルフの時では短剣は1本だったが、今回は両手に1本づつ構えている。
しばしの間、にらみ合うニーナとオーク。先に動いたのはニーナだった。
ニーナは猛スピードでオークに迫る。オークは微動だにしない。真っすぐ一直線に向かってくるニーナをその場で迎え撃つつもりのようだ。
オークまであと2メートルを切る距離でニーナは突然しゃがみ込み、一瞬でオークの後ろを回り込んだ。ニーナのスピードにオークは反応できず混乱している。オークからしたらニーナは突然消えたように見えたことだろう。ニーナはオークの背後から2本の短剣で首を掻き切る。
オークは抵抗する間もなく消滅した。
オークとの戦闘も問題なさそうだ。オーク相手でも全然余裕そうだ。このダンジョンのレベルは低いが、モンスターの強さは他のダンジョンと変わらない。オークは初心者探索者だと苦労するレベルの相手だ。
楽々倒したニーナの実力は、少なくとも中堅探索者以上はあるだろう。これならイツキが付きっきりで見なくてもこのダンジョンを任せることが出来そうだ。
「ニーナ、オークはどうだった?」
「シルフィーが言ってた通り、こっちのモンスター弱いね。私でも楽勝なんだもん」
異世界とこちら側ではモンスターの強さが違うらしい。以前シルフィーに聞いた話だと、こっちのモンスターは異世界より弱いとのことだった。
異世界では地上でも豊富に魔力があり、地上にもモンスターがいるという。一方、こちらには魔力がダンジョンにしかない。モンスターの強さの違いはその差ではないかと言われている。
オークを例にすると異世界のオークの強さはこちら基準だとオークジェネラルに相当するらしい。同じオークなのに異世界だと数ランク上の強さとなる。同じオークでもこんなに差があるのだ。
そんな環境ならスキル、魔法がないニーナは落ちこぼれと言われても仕方ない。
でもここならニーナの強さは十分通用する。こちらの世界にもスキル、魔法はあるが、異世界ほど成熟していない。獣人の身体能力の持つニーナであればそこらの探索者にも余裕で勝てる。
ここで自信をつけていってくれればいいのだが。イツキはそんな風に考えた。
その後は何度かオークと戦闘して第5階層の案内を終える。
第1階層まで戻り休憩する二人。
「ニーナ、このダンジョンは気に入ったか?」
「うん!」
イツキの問いかけに笑顔で答えるニーナ。このダンジョンを気に入ってくれたようで良かった。
「…あのねイツキ、お願いがあるの」
ニーナが真剣な顔でイツキに話を切り出す。
「私、あのイノシシたちのお世話がしたい」
動物と意思疎通ができるという新たな特技が見つかったニーナは、ダンジョンに住むイノシシたちの面倒をみたいと志願した。
「ああ、お願いするよ」
イツキは二つ返事で承諾した。あのイノシシたちをきちんと運用できるようになるのだ。これはニーナにしかできない仕事だ。断る理由がない。
「やった、ありがとーイツキ」
ニーナは大喜びでその場で飛び跳ねていた。こうしてニーナはイノシシ係に就任した。
ひとまずニーナがここでやっていけそうなのがわかってひと安心する。
ニーナには今後、ダンジョンにいるイノシシたちのお世話を担当してもらうことになった。これでイツキの仕事がまた一つ減り、ラクになった。
ニーナの意外な特技?が見つかり、仕事を振ることができた。シルフィーにいい報告ができそうだ。




