第13話 落ちこぼれのニーナの秘めた才能
ニーナは異世界で探索者をしていた。向こうの探索者の主な仕事はダンジョンの探索。やることは異世界もこちらとそんなに変わらないとシルフィーに聞いたことがある。
ニーナは探索者だったが、スキル無しで魔法が使えなかった。
こちらの世界ではそう珍しくないことだが、異世界では違った。向こうではスキルは誰でも持っているものだった。
魔法も生活魔法であれば、探索者でなくても使える。それに簡単な魔法であれば探索者ギルドで習得できた。
獣人は種族の問題で魔法が使えない代わりに身体能力が高く、身体強化スキルを所持していることが多い。
しかしニーナは身体能力は一般的な獣人並みであったものの、スキルは何一つ持っていなかった。
スキル無し、魔法無しの探索者はいわゆる落ちこぼれと呼ばれ、パーティを組むことができなかった。
ニーナもそんな一人だった。
ニーナは孤児で成人の年齢である15歳を迎えるとすぐに探索者となる。というか他に選択肢がなかった。
唯一の救いはニーナがいたのが獣人差別のない国だったこと。落ちこぼれと呼ばれていたが、それは純粋に探索者としての評価であった。
そうして一人でダンジョンに入っていたある日、イレギュラーに遭遇しこの世界にやってきたのだった。
※※※
「ねぇイツキ、私ここにいてもいいの?」
ニーナは不安そうに聞く。落ちこぼれである自分に自信が持てていないようだった。
「ああ、いいぞ」
そんなニーナに対しイツキは即答する。元々、ニーナが探索者でなくても問題なかった。手伝ってもらいたいことはダンジョン以外でもたくさんある。
「ウチは見ての通り人手不足だからな。ニーナみたいな元気な子は大歓迎だ」
笑顔でそう答える。
「うん、ありがとうイツキ」
イツキの言葉でニーナは元気になった。
「それにしても何でニーナの言うこと聞くんだろうな。ニーナ、向こうでもこんなことはあったのか?」
「ううん、なかった。でもここだと何となくできる気がしたの」
どうやら動物との対話はここで初めて行なったらしい。獣人だからできるのか。それともニーナだからできるのか。それはわからない。あとでシルフィーに報告しておこう。
とにかくニーナのおかげでイノシシたちがドロップ品を回収してくれるようになった。これは大きい。今後は今まで以上にラクが出来そうだ。
その後、第3階層に向かうイツキとニーナ。
「ここはまだ制圧途中でモンスターが襲ってくるから注意してくれ」
第3階層は現在もイノシシたちがフォレストウルフと縄張り争いをしている最中だ。ボーっと歩いているとフォレストウルフに襲われてしまう。
「ニーナ。1回、戦ってみるか?」
イツキはニーナに提案する。1度ニーナの実力を見ておいた方がいいだろうと考えた。
「うん、いいよ」
ニーナは二つ返事で承諾する。
少し歩くとフォレストウルフの気配を感じる。木の後ろに隠れている。ニーナもそれに気付いているようだ。
「それじゃあいくね」
ニーナはフォレストウルフが隠れている木に一直線に駆け出す。獣人だけあってかなり早い。
「そこっ」
あっという間にフォレストウルフの背後に回り込んだニーナは、短剣でフォレストウルフに斬りかかる。危なげなくフォレストウルフを倒すニーナ。
フォレストウルフ程度なら問題なさそうだな。この感じならオークとも戦えるだろう。
ニーナの動きを見たイツキはこのダンジョンでニーナが問題なくやっていけそうだと判断した。
その後何度か戦闘をして次へ進む。
第4階層は川と牛がいるだけのエリア。
「この牛知ってる。ミルクが美味しいんだよ!」
牛型モンスターを見たニーナが興奮していた。ここにいる牛たちは全てメスで、ミルクを入手できる。ミルクの入手方法は普通の牛と同じなので戦闘する必要もない。
他にモンスターもいないので、ここは牧場にしてもいいかもしれない。牛たちの周囲を駆け回るニーナを見て、イツキはそんなことを思った。
そして第5階層。
「ここは普通のダンジョンなんだね」
のどかな風景の第4階層と一変して、ダンジョンらしくなった第5階層に入ったニーナは気を引き締める。
「ここはオークが出る。ニーナ、やれるか?」
「うん、任せて」
ニーナは自信たっぷりに答えた。




