第11話 クロとニーナ
「イツキ、ニーナのことを頼んだわよ」
「はい、任せて下さい」
無事、野良ダンジョンの件について上手く収まったところで、イツキは家に帰る支度を始める。
ここでの滞在時間はまだ30分にも満たないが、イツキは久しぶりに会うシルフィーと積もる話に花を咲かせることもなく帰るようだ。
イツキが元々人付き合いが悪いというのもあるが、これ以上長居してしまうと帰宅が深夜になるかここに1泊することになる。しかしダンジョンのこともあるので1泊するのは避けたい。
まぁ今から出発しても夜に到着するのは確実なのだが、それは仕方ない。こういう時、田舎に住んでいるのは不便だと感じる。
しかしこれはイツキが望んだこと。理想の田舎暮らしのためなのだから仕方ない。それにこんな呼び出しは頻繁に起こることはないだろう。
ニーナの準備は既にできていたのですぐに出発できる。何だか準備が良すぎる気がする。イツキがニーナを連れて行くのは確定事項と言わんばかりの手際の良さだ。…深く考えないことにしよう。
「シルフィー、行ってくるね!」
ニーナを車に乗せ、出発する。道中何事もなく順調に進む。
そしてダンジョン管理局を出発し数時間、ようやく帰宅する。辺りはすっかり真っ暗だ。山奥ということもあり、より一層暗く感じる。
「すごーい、こんな場所があったんだね」
ニーナのテンションが高い。車を降りると早速深呼吸をして、目の前の自然を堪能している。長時間車に乗っていたのに元気だ。
獣人は自然が好きなのだろうか。もしそうだとしたらダンジョン管理局があった場所は都会のど真ん中。コンクリートジャングルでここみたいに緑は全くない。異世界はいわゆる中世ヨーロッパ風の世界だと聞くし、さぞ居心地が悪かったことだろう。
それに機密のために出かけることもできず、不便な生活をしていたに違いない。しかしここならのびのびと過ごすことができる。ニーナには存分にこの自然を満喫してもらおう。
「えー!この辺全部イツキの山なの⁉」
ここら一帯がイツキの所有物と知り驚くニーナ。まぁ向こうの世界を基準に考えるとそうなるだろう。こちらのように簡単に自分の土地を持つことはできない。しかしまぁこうも驚かれると何だか少しうれしくなる。リアクションの良いニーナは一緒にいるとこちらまで楽しくなる。
「…ニャ」
家の前で騒がしくしていたからか、少しうるさそうに物陰からクロが現れる。
「ゴメンクロ、騒がしくして。今戻った」
イツキはクロに挨拶する。
「イツキ、その子は?」
ニーナがイツキの後ろからクロをのぞき込む。
「ああ、こいつはクロ、この辺に住んでいる野良猫。俺よりも長くここにいるからまぁ先輩みたいなものかな」
ニーナにクロを紹介する。
「私はニーナ。クロよろしくね」
「ニャ」
「うん、わかった。よろしくねクロ先輩」
ん?ニーナとクロは会話が成立しているように見える。
「ニーナ。もしかしてクロの言葉がわかるのか?」
「うん、わかるよー」
ニーナはクロと言葉が通じるらしい。獣人だから動物の言葉がわかるのだろうか。それとも同じ猫同士だから?
クロを先輩と慕い、ニーナは楽しそうにおしゃべりをしている。何だかよくわからないがとりあえず仲良くやれそうで良かった。
今日はもう遅いし明日、森を案内することにしよう。




