第三九話 乗る前に
さぁ、今日は蓮子と私の旅行準備よ。
蓮子ったら……私冗談で言ったつもりだったから、まさか当てるなんて思ってもみなかったわ。本当に運がいいのね。
私達は宝くじでお金を受け取ったわ。その時の受付の人、何処かで見たことあるなって思っていたら、早苗だったわ。まぁ、そこそこの関係ね。
それで、今はリニアの切符売り場に来てるの。
今ではリニアが全国に普及してて、国内旅行では飛行機は必要じゃなくなったのよ。しかも全自動。国内ではあちこちが磁石だらけね。方位磁石がおかしくなりそうだわ。っていうか、もうとっくにおかしいけど。
「んー。メリー? 岡山行だけでいいかな?」
「なんでよ」
「だってさ、もしかしたらもう一日居たいなんて事になったら、キャンセルするかそのまま行くかになるじゃん」
「行き当たりばったりね。まぁ、いいわよ」
「やった!」
旅行なんだから、行き当たりばったりもたまにはいいかもね。
「じゃあ、岡山行だけっと! さて買ったよ。まだ時間があるし……何処行く?」
「そうね……洋服見ましょうよ。折角の機会なんだし」
「そうだね。なら行こっか!」
蓮子ってよく語尾にエクスクラメーションマークを付けたがるわね。何でかしら? 田舎者だから感情が激しいとか? それはないか。
「どうする? どれにする??」
「まだ見てるわ」
私達はいつの間にかショッピングセンターに居たわ。そして買い物してるわ。
「んー。これにしようかしら?ちょっと行ってくる」
「はいはいはい」
私は試着室に行って着替えたわ。その間、蓮子は何をしていたのかしら?
「着替えたわー」
「おぉ、いいじゃん」
「いいでしょ? ドヤァ」
「ドヤァは余計だよ、ドヤァは」
蓮子と同じような半袖シャツに前と同じスカート。何か合うわね。
「じゃ、買う?」
「んー、これは取っておくわ。もう少し廻りましょ」
「いいよー」
私達はそれから二時間の買い物をした。あれこれ迷っていたけど、あの半袖シャツに赤いリボンの付いた白い帽子を買ったわ。帽子は蓮子に似た感じの物よ。結構似合うわね。大切な事なので二回言ったわ。
「いいね、それ」
「なら蓮子も買ったら?」
「んー、いや。いいよ。今の方が快適だから」
「あらー。そうなの? いいの、あると思うけど?」
「もう出ちゃったし」
蓮子はあははと笑ったわ。私もそれにつられて、少しくすっとなったわ。
「戻ってあげてもいいのよ?」
「私がめんどくさい」
「あら、そう」
私達は蓮子の家に帰ったわ。
そういえば私の家はどうなってるのかしら? まさか空き巣……はないか。家に鍵がかかっている限り、ピッキングはできないし窓も割れないわ……多分。家はカードキー式だし、企業しか造れないもので厳重管理だから多分大丈夫だと思うわ。
「じゃ、準備するか」
「そうね。長旅だから沢山持ってかないとね」
私達はいちゃいちゃしながらも中国地方観光の準備をしたわ。
日本海側の山陰、瀬戸内海側の山陽。略して中国陰陽観光ってところかしら? センスない? 悪かったわねー。
取り合えず、明日から岡山県に行くわ。なんか不思議に出会う気がするわ。どんな不思議に会えるかしら? 楽しみね。
私は口元で笑ったわ。
「どうしたの? なんか笑っちゃって」
「何でもないわー」
「えー! 教えてよー。教えて教えて教えて教えて教えてぇぇぇ!!」
しつこいから足を踏んだわ。
あの後、旅行前の説教をしたわ。
メリーは暫くはこの服装ですね、はい。




