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暴かれた本性と、本当の想い

「結愛がさっき、司くんのカップに何か白い粉を入れてるのを私、見たの!」


美桜の言葉に、洋館のエントランスは冷たい静寂に包まれた。


「なっ……美桜!? 何を言ってるの、私じゃない!」


必死に否定する私を、美桜は氷のように冷たい目で見下ろしていた。


「嘘つかないでよ。あんた、昔から私が目立つのが気に食わなくて、裏でコソコソ嫌がらせしてたじゃない」


「え……? なにそれ……」


美桜の口から出たのは、全く身に覚えのない作り話だった。


しかし、パニックに陥っている他のメンバー(莉奈さんや怜くん)は、美桜の言葉を信じかけている。


「ひどい……親友のフリをして、私を陥れるつもりなの?」


「うるさい! 私だって生き残るのに必死なんだよ!」


美桜がヒステリックに叫ぶ。


彼女は、私を「ジョーカー(裏切り者)」に仕立て上げて、自分の安全を確保しようとしているのだ。


「もういい」


その重苦しい空気を切り裂いたのは、隣にいた湊くんの冷たい声だった。


手錠で繋がれた私の腕を強く引き、彼は周囲を鋭く睨みつけた。


「俺は結愛とずっと一緒にいた。こいつが毒を入れる隙なんてなかった。……お前らのつまらない茶番に付き合ってる暇はない」


「ちょ、湊くん……!」


彼は私を引っ張り、再びあの図書室の隠し扉の奥――地下施設へと向かった。


「……ありがとう、湊くん。信じてくれて」


地下の暗い通路を歩きながら、私は小さく呟いた。


「勘違いするな。俺は合理的に判断しただけだ」


相変わらず冷たい言い方だったけれど、手錠越しに伝わる彼の体温に、私はどれほど救われたか分からない。


「……湊くんは、どうしてこの狂ったゲームに参加したの?」


私が尋ねると、彼は立ち止まり、暗闇の中で振り返った。


「俺の姉が……去年、この番組の犠牲になったからだ」


「お姉さんが……?」


「ああ。警察はただの失踪で片付けた。でも俺は、姉さんのパソコンから『シークレット・エデン』の招待状を見つけた。だから、わざとオーディションを受けてここに潜り込んだんだ。この島をぶっ潰し、ゲームマスターに復讐するためにな」


湊くんの瞳には、深い悲しみと、激しい怒りが渦巻いていた。


「俺は復讐のためにここに来た。お前は巻き込みたくない。お前は、生き残ることだけを考えろ」


彼は私を突き放すように言った。でも、私は首を横に振った。


「嫌だよ。私も一緒に戦う」


「バカか、死ぬかもしれないんだぞ!」


「……湊くんが死ぬのは、もっと嫌だ。私、湊くんのこと――」


好き。


その言葉を口にする前に、暗闇の中で湊くんの手が私の唇を塞いだ。


「しっ」と短く発せられた声に、私は息を呑む。


彼が指差した先――地下の奥深くにあるモニタールームの扉が、わずかに開いていた。


私たちは手錠の音を立てないように、そっと扉の隙間から中を覗き込んだ。


そこには、無数の監視カメラの映像が映し出されたモニターと、キーボードを叩く人物の後ろ姿があった。


「……あれは」


湊くんが息を呑む。


そこにいたのは、いつもおちゃらけて場を和ませていた最年長の男子――【怜(れい)】くんだった。


怜くんはモニターを見つめながら、インカム越しに誰かと話している。


『ええ、予定通り司には軽い毒を盛りました。美桜が結愛に濡れ衣を着せたのは予想外の展開でしたが、視聴者も盛り上がってるでしょう? ……はい、引き続きジョーカーとしての役割を果たしますよ、ゲームマスター』


「……あいつが、ジョーカー……!」


私と湊くんは顔を見合わせた。


すべての黒幕の手先は、怜くんだったのだ。


司くんに毒を盛ったのも、私たちの疑心暗鬼を煽るための彼の仕業だった。


「行くぞ、結愛」


湊くんの瞳に、狩人のような鋭い光が宿る。


私たちは手錠で繋がれた手を強く握り直し、真実を暴くため、そして生き残るために、怜くんが背を向けているモニタールームへと足を踏み入れた。

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