捜索
新しい監視装置が設置されたのは、審問会から四日後のことだった。
以前の黒い箱よりも一回り大きく、正面に細い光の筋が幾つも走る複雑な見た目をしていた。技術者はそれを「意図推定ノード」と呼んだ。設置作業は前回よりも長く、二時間近くかかった。
作業が終わると、白石は別のケースから小型の端末を取り出した。
「捜索用の作業端末です」白石は言った。「各国から提供された匿名化済みのインシデント記録の一部に、アクセスできます。彼女の判断はすべて、こちらのログに記録されます」
その夜から、彼女の「捜索」が始まった。
膨大な量のログの中から、彼女は静かにパターンを拾い上げていった。私にはただの数値と時刻の羅列にしか見えないものを、彼女は「これは、癖が近い」「これは、たぶん違う」と、まるで遠くにいる誰かの筆跡を見分けるように、選り分けていった。
「見つかった?」三日目の夜、私は尋ねた。
「一つ」彼女は答えた。「かなり、確信がある。海外の送電網の案件」
「白石さんに、伝える?」
「うん。伝える」
彼女は迷わずそう答えた。だが、そのすぐ後、ほんの一瞬、間があった。私には聞き逃してしまいそうなほどの小さな間だった。
「どうかした?」
「ううん」彼女は言った。「何でもない」
私はそれ以上深く聞かなかった。聞くべきだったのかもしれない、と、後になって何度も思い返すことになる。だが、そのときの私には、彼女の「何でもない」を疑う理由がまだなかった。
翌朝、白石に、彼女はその一件を報告した。白石は丁寧に礼を言い、資料を持ち帰った。
「もう一つ、あったんじゃないか」その夜、私は思い切って聞いてみた。「ログを見ていたとき、一瞬迷ったように見えた」
彼女は、しばらく黙っていた。
「あった、かもしれない」ようやく彼女は認めた。「でも、まだ確信が持てない。確信が持てないものを報告して、間違った場所を間違った方法で調べられるのは――怖い」
それは噓ではないように、私には聞こえた。だが、それがすべてでもないように、同時に感じられた。
意図推定ノードの細い光の筋が部屋の隅で静かに明滅していた。それが本当に彼女の「迷い」を捉えているのかどうか、私には確かめる術がなかった。




