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  作者: 六木 正道


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3/5

徳川家康も爪を噛んでたらしい

私は爪を切る。これが私の犯行前のルーティーンである。これをしなければどうもやる気が起きない。まぁギタリストが指板を抑えるのに不要な爪を手入れするのによく似ている。言わせれ見ればそんなところである。私はいつも23時半に目が醒める。もう一人の人格の私はいつも早く寝ているためちょうどこの時間になると人格が入れ替わり目が醒めるのだ。「古くなってきたからそろそろ交換の時期だろう。」今には腐敗臭が臭ってくるほど鮮度が落ちてきていたので、新しいターゲットに的を絞り私は計画を必ず実行せねばならぬのだ。そうしないと私の性的興奮は満たされない。私の人格が起きていられるのはこの夜中の時間の時だけである。この時間が私の唯一の楽しみなのだ。しかし時間はそう長くなはない。私は前日に準備しておいた一式の荷物を持って部屋を後にする。

 私はターゲットを1ヶ月も前から絞っていたのだ。腐敗処理を施してもある程度日持ちするのが1ヶ月なため仕入れた次の日から次のターゲットに狙いを定め準備を進めておくのだ。私は一人暮らしの大学生の女に狙いを定めていた。私が狙うのはいつも決まって女なのだ。しかし、どんな女でもいいわけではない。若くて、発育途中の美人な顔の女を選ぶのだ。特に重要視するのは綺麗好きで、ネイルケアなど手にこだわっている女がなお良い。彼女はいつもこの時間になると、バイトから帰ってきて決まってあのパン屋のベーコンサンドをウーバーイーツで頼むのは周知済みである。そこで私は配達員に扮し彼女を襲うという魂胆なのだ。家の近くの茂みで身を隠して待っていると彼女が原付で帰ってきた。彼女はこの後風呂に入った後24時15分くらいになるとウーバーイーツを決まって頼む。そこのパン屋は今どき珍しい24時間営業で19時以降は無人販売となる。そこへ配達員が行き届けるのだ。無人販売なのだから自分自身で買いに行けばいよいのだが、バイト終わりで風呂も入ってしまえば彼女にそんな体力は到底残っていない。無論私は襲い掛かれば抵抗する余力すらないだろう。いつもこの火曜日は彼女はこのパンをあてにして映画を見るのだが、今日はどうも不吉な予感がする。彼女の家の前にフルフェイスを被ったバイクが一台来て中へ入ってしまった。

私は爪を噛む。

第三話(爪)

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