ヒリュウ家の秘伝書
「おーーい、出て来いっつ!」
砦の外でムラン軍が拡声器によって声を張り上げている。出て行けば死・・そんな事が分かって居て出る者も居ない。
しかし、挑発は相手を卑下するようなものでは無かった。
「大人しく出てくれば、何も危害など加えぬ。腹が減っているだろう。ここに用意してあるぞ!」
砦にはウラが殆ど食糧も武器も持って行っており、兵士達は空腹であった。
一人、二人と出て行く。彼等の様相は旧ベラ族から人型にかなり近くなっており、確かに強いのだろうが、どことなくその体と心が比例していないようにも思えた。
彼等の半数が出て来た所で、ムランは、
「もう観念せよ。抵抗した所でお前達に益も無し。空腹を満たすが良い」
美味しそうに食事を頬張る仲間達を見て、残った全員が出て来た。
「良し・・たらふく食え。食ったら、この砦は開け渡して貰うが、お前達は他の砦に行こうが、我らはこの砦を陣取るがここに残り仲間として加わろうが、又クラムのような姿になりたいと希望があれば、無条件で受け入れる。お前達の意志に任せる」
何と、その言葉でこの砦に残っていた80名弱の兵達が全てムランの配下に加わったのであるから、エツゴもビゼンも大層にムランを褒めたのだった。こうして西ゝ地区の大地にもかなりの足場が上原国は出来たのである。ただ、ウラは奥深い石洞に閉じこもり、仕掛けて来る事は当面無かったが、捲土重来を誓っているようだった。勿論周辺はガリの隠密隊が見張っている。
「ある洞穴には、毒虫が居るようだ。その虫を除去する為に殺虫効果のある薬物をウラは持っているらしい。尤もユウゴがそんな薬はとっくに作っているからな。ムランにはこの奪取した5つの砦の総括を任せた」
エツゴがビゼン、スエラに説明している。
「毒虫とは種類も多いですけど、毒蝶もおります。毒紛を撒くのでとても要注意ですね」
「霧吹状の物をこれもカガイが知っていて、対処法がある。森林部には特に多いがキキ族がその耐性を持っているらしく、エバが熱心に調べていたよ。多分、もう対処は出来るだろう」
「こうなると、やはり砦と言う地形的な場所は天険の要塞になりそうですね」




