ヒリュウ家の秘伝書
「成程・・そう言う観点で言えば、戦意を鼓舞しながら緊張を高めておいて、急撃に下げてしまったと言う事か。なら、ムラン、お前に今度は任せるからバラキ族の砦の幾つかを切り取って来い。ただし、肉弾戦はするな。現バラキ族の捕虜を確保する作戦だ」
「なかなか殺さず、捕虜にすると言うのも難しそうだな、それぞれにかなりの戦闘力がある」
ムランは難題を突き付けられて、自軍に戻って行った。その足でビゼンの所へ。真意を確かめたかったのである。
「おう、ムラン。お前が俺の所に来るなんて珍しいな」
「初めてかも知れんな、ところでな、俺はバラキ族の砦の幾つかを切り取れ、そして捕虜を生け捕って来いとエツゴから言われた。それで、何でウラの砦を攻撃しなかった事も含めて聞きたくてな」
「ふ・・今度はムランに攻撃せよと?ただ、ウラの砦は、奥を破壊した。恐らく武器庫があった筈だ。故にもう砦は捨て、他へ移動しているだろう」
「ほう・・そうか。なら、その本拠を奪おう」
「何か・・策が?」
余りに簡単にムランが即断即決したので、ビゼンは苦笑いしながら聞いた。
「はは・・今は無い、だから考える。エツゴの本旨は、こちらの戦力を出来るだけ削るなと言う事だろうが?こちらが消耗しないで、相手の戦力を削ぐ。だから今回お前は軍を引いた。だろう?」
「ふ・・」
ビゼンは短く笑った。
「まあ、こちらの兵士は前面に出す事は無い、無いが、大声を張り上げさせる。出て来い臆病者達よとな。砦にもうウラが居ないんだから、どこまでこいつらは忠誠心を持っているのかのう、やって見るわ。こっちの水の方が甘いぞ作戦だ」
「わははは」
ビゼンは膝を叩いて大笑いした。ムランもやはり戦略家の一人であった。伊達に第一将とエツゴが持ちあげている訳では無い事を、先日もこの日も証明しているようだ。
「ははは・・俺の考えを察してくれているのか、グエンも二つの砦を奪取したようだ。殆ど無血でクラムの豪勇振りは知っているからな。膝を折り、上原国の姿になりたいと希望する者が増えている。何かとこちらの武具の扱いであるとか、動きが便利なんだそうだ」
ビゼンは、報告を終えるとすぐ自分の戦場に戻って行った。グエン、ムランを見る限り自分の出番は、今は必要無いと判断したようだ。




