↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
罪と英雄(SIN-HERO)  作者: 三川三山
第1部 博樹編
PR
9/51

第9話 2度目のお見舞い

翌日。 博樹は、胸の奥が少しだけ高鳴るのを感じながら、まどかの病院へ向かった。


昨日のニュース――骨髄移植のドナーが複数見つかったという報せが、 まどかにとって希望になるはずだ。


病室のドアを開けると、まどかは窓際のベッドで静かに微笑んだ。


「博樹君。来てくれたんだね」


「HEROも、ママに会いたいって言っていたよ」


まどかの瞳がぱっと輝く。


「HEROを連れてきて。お願い」


「今度、大学にかけあってみるよ。今のルールでは外には連れて来られないからね」


「昨日、HEROに新しいデバイスをつけたんでしょう? 連れてきた時に見せてね。楽しみにしてる」


「もちろん。すごいのを付けたよ」


まどかは嬉しそうに笑い、ふと冗談めかして言った。


「ママの私がいない間に、いろいろ進化してしまうのね。まあ、親はなくとも子は育つって言うものね。でもパパの博樹君がいるから、親がいないっていうのも変かな」


「パパ」と呼ばれた瞬間、博樹の心臓が跳ねた。


まだ告白もしていないのに、こんな言葉をもらえるなんて。


その幸福感に浸りながら、博樹は昨日のニュースを伝えようとした。


「昨日、ニュースで、骨髄移植のためのドナーが――」


しかし、まどかがその言葉を遮った。


「昨日ね、私の骨髄移植のドナーが見つかったの」


「えっ……!」


博樹は思わず立ち上がった。 胸の奥が熱くなり、視界が少し滲む。


「そうか……そうだったのか……!たくさん見つかったって言っていたから、もしやと思っていたけど…… よかった……本当によかったよ、まどかさん……!」


まどかは嬉しそうに微笑んだが、すぐに少しだけ曇った表情を見せた。


「でも、一つ、心配ごとがあるの」


「心配ごと?」


まどかは枕元のノートパソコンを指差した。


「私、たまにプログラミングをしたり、AIの研究をしたりするんだけど…… 昨日、メールで『骨髄移植のドナー、見つけます』っていうのが届いたの」


博樹は眉をひそめた。


「怪しいメールだね。普段なら開かないだろう?」


「そうなの。でも……不安でいっぱいの今、そんなメールが来たら開いちゃうの。それでね、ドナーを見つける代わりに『あなたの一番大事なものを差し出してください』って書いてあったの。 私、思わず……イエスって押しちゃった」


博樹は息を呑んだ。


「それで、その後、ドナーが見つかったってコーディネーターから連絡があったから…… 驚いてしまって。偶然だと思うけど……一番大事なものって、何のことなのかしら」


まどかは指を折りながら考え始めた。


「まず、両親でしょ。兄さんに、私。そんなところかな。でも……大切なものを忘れている気がするの」


博樹は、心のどこかで “それが自分だったら嬉しい” と思ってしまった。


だが、まどかは続けた。


「でも、人じゃないと思うな。だって『一番大切なもの』って言ってたんだもの?」


「それもそうだね」


「じゃあ、このパソコンの中のAIかしら。ああ、家に忘れてきたぬいぐるみのトラちゃんシリーズも大切だわ。トラちゃんシリーズってね、トランジスタのぬいぐるみなの」


「トランジスタのぬいぐるみなんてあるの?」


「うん。エミッタ、コレクタ、ベースのセットなの。」


「では、それだね。トラちゃんだよ。大丈夫、トラちゃんだったら僕が新しいのを買ってあげるから」


「うん。よろしくね」


まどかは安心したように微笑んだ。


博樹は、それでも胸の奥に小さな不安を抱えたまま、病室を後にした。


帰り道。


歩道ですれ違った男性が、蚊の化け物のようなドローンに血を吸われていた。


「あなた、血を吸われていますよ!」


博樹が声をかけると、男性は恐怖で尻もちをついた。


吸血鬼ドローンは血を吸い終えると、ブーン……とモスキート音を残して夜空へ消えていった。


博樹は男性を近くの交番まで案内し、再び歩き出した。


「……さっきのが、吸血鬼ドローンか」


まどかの手術は二日後。 次に会えるのは二週間後になる。


その時は―― 絶対にHEROを連れて行こう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。