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罪と英雄(SIN-HERO)  作者: 三川三山
第3部 霧島蓮編
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第5話 探偵ごっこ

「探偵ごっこ?」


霧島蓮は思わず聞き返した。


スマホ越しの山田真が笑う。


『らしいぞ』


「まったく……」


蓮は額を押さえた。


二十歳を超えた青年に言う言葉ではないが、どうしてもそう思ってしまう。


博樹は昔から好奇心の塊だった。


危険そうな場所に首を突っ込み。


謎があれば調べずにはいられない。


その上。


今はあのHEROがいる。


止め役がいないのである。


「それで?」


蓮は尋ねる。


「何を見つけたんだ?」


『黒ずくめの男たちだ』


蓮の顔から笑みが消えた。


黒ずくめの男たち。


宇宙粒体生物。


あの日。


完全には根絶できなかった敵。


『博樹たちは連中を追っていたらしい』


「……やっぱりか」


『しかも超視力と超聴力の装置まで作ったそうだ』


「誰に似たんだろうな」


『お前じゃないか?』


「違う」


『俺か?』


「それだ」


二人は同時にため息を吐いた。


間違いなく二人に似ていた。


「それで収穫は?」


蓮が聞く。


真の声が少し低くなった。


『連中は人を操ろうとしている』


空気が変わった。


蓮は椅子から立ち上がる。


『テレビ』


『ライブ』


『映像』


『音響』


『それらを利用して国民を洗脳する計画だったらしい』


「……本気か?」


『警視庁も裏付けを取った』


「証拠は?」


『掴んだ』


蓮はゆっくり息を吐いた。


最悪だった。


もし成功していたら。


日本中が奴らの支配下に置かれていたかもしれない。


「警察は?」


『踏み込んだ』


「捕まえたか?」


『逃げられた』


「だろうな」


『液体化したらしい』


蓮は苦笑した。


宇宙粒体生物相手に通常の警察捜査が通用するわけがない。


むしろよく追い詰めたものだ。


すると真が言った。


『やるぞ』


短い言葉だった。

 

だが意味は分かる。


第二次群馬決戦。


蓮は即座に答えた。


「ああ」


「準備はできている」


真が笑った。


『だろうと思った』


二年前と違い、


今回は万全だった。


休業中のスキー場。


広大な駐車場。


そこには五千機のドローン。


さらに予備五千機。


「今回は勝つ」


蓮は静かに言う。


「絶対にな」


車を飛ばしながら現場へ向かう。


その途中だった。


蓮のスマホに信号が入る。


映像転送。


送信元。


HERO。


そこに映し出された光景を見て蓮は目を見開いた。


「なんだ……これは」


ナノマシーン。


大量のナノマシーン。


巨大な網を形成していた。


宇宙粒体生物を捕獲している。


「真!」


『どうした?』


「HEROだ!」


『HERO?』


「ナノマシーンを自在に操ってる!」


真が数秒黙る。


『誰が教えた』


「誰も」


『自分で考えたのか』


「そうだ」


真の笑い声が響いた。


『すごいな』


蓮も思わず微笑む。


博樹たちは確実に父親たちを超え始めていた。


さらに通信が入る。


長野原警察署。


粒体生物の一体を捕獲成功。


農薬用ポリタンク。


閉じ込め。


「やったぞ!」


蓮が叫ぶ。


真も歓声を上げた。


『名前を付けよう!』


「なんだ突然」


『ブラックタンクマン!』


「却下だ」


『なぜだ』


「黄色いポリタンクだから」


『なら?』


「イエロータンクマン」


『そのままだな』


二人は笑った。


だが。


すぐ真顔に戻る。


通信が続いている。


捕獲された個体が喋りだした。


核。


弱点。


仲間の居場所。


すべて吐いている。


「終わらせられる」


蓮は確信した。


そして。


五千機のドローンが発進した。


夜空を埋める光。


圧巻だった。


まるで銀河そのものが飛び立つようだった。


「洞窟まであと十分」


蓮が言う。


「あと五分」


真が答える。


「博樹たちは?」


「まだ中だ」


蓮は歯を食いしばった。


心配だった。


だが信じるしかない。


そして。


HEROの声が洞窟内に響いた。


『全員退避してください!』


『ドローンが抱えているガソリンの爆発が始まります!』


警察官たちが走る。


博樹も走る。


HEROも走る。


ドローン到達。


そして。


波状自爆攻撃開始。


轟音。


閃光。


衝撃波。


夜が昼になる。


五千機のドローンが連続爆発を起こした。


前回を遥かに超える火力。


改良されたアルゴリズム。


完璧な連携。


洞窟が揺れる。


地面が揺れる。


山が唸る。


そして。


静寂。


誰も言葉を発しなかった。


長い沈黙の後。


HEROから通信が入る。


『核の反応消失』


『粒体生物反応ゼロ』


『殲滅完了』


蓮は目を閉じた。


真も目を閉じている。


終わった。


本当に終わったのだ。


二年間。


誰にも言えず。


諦めず。


戦い続けてきた。


やっと。


終わった。


蓮はそっと手を差し出す。


真がそれを叩いた。


乾いた音が夜空に響く。


「やったな」


「ああ」


真の目に涙が浮かんでいた。


「これで家族のところへ帰れる」


その一言を聞いて、


蓮も泣いていた。


「真」


「ああ」


「本当にお疲れさま」


夜空には星が輝いていた。


まるで。


二人の長い冒険を祝福するかのように。

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