エピローグ 傷だらけの英雄たち
二時間後。
群馬県を離れた車が関越自動車道を走っていた。
東の空が白み始めている。
夜明けだ。
運転席は霧島。
助手席は真。
二人ともボロボロだった。
服は破れ。
顔には傷がある。
だが。
不思議なほど気分は悪くなかった。
「なあ」
霧島が口を開く。
「ラジコングライダー以来だな」
「何が?」
「こんなにワクワクしたの」
真は吹き出した。
「あのなあ……」
「事実だろ?」
「命懸けだったんだぞ」
「冒険だからな」
霧島は笑う。
人生は冒険だ。
高校時代から変わらない口癖。
「真」
「なんだ」
「会社へ戻らないか」
真は窓の外を見る。
朝日が昇ってきていた。
「まだだ」
静かな声だった。
「核が残ってる」
霧島はうなずく。
反論しない。
二人とも分かっている。
今日の戦いは終わりではない。
始まりだ。
「次は勝とう」
「ああ」
「絶対にな」
「ああ」
真は小さく笑った。
そして。
遠く東京の空を見つめる。
愛。
博樹。
会いたい。
だがまだ帰れない。
核が存在する限り。
奴らが地球を狙う限り。
戦わなければならない。
自分が始めた戦いだから。
車は朝日の中を走っていく。
誰も知らない。
群馬県の地下で起きた戦いを。
人類を救った男たちのことを。
そして。
遠い未来。
山田博樹という青年が。
この戦いの意志を受け継ぐことを。
こうして。
山田真の物語は幕を閉じる。
だが。
人類と粒体生命体との戦いは、まだ終わっていなかった。




