↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
罪と英雄(SIN-HERO)  作者: 三川三山
第2部 真編
PR
40/51

第8話 群馬決戦

群馬県嬬恋村。


深夜零時。


満天の星空の下。


キャベツ畑に囲まれた休憩所へ、何台もの大型車両が静かに集結していた。


トラック。


タンクローリー。


作業車両。


どれも一般車両を装っている。


しかし、その荷台には人類初の反撃兵器が積まれていた。


五千機の自爆ドローン。


山田真が人生の全てを賭けて作り上げた切り札だった。


「燃料注入開始」


霧島蓮が指示を出す。


イデア社の社員たちが素早く動き始めた。


彼らは全貌を知らない。


ただ社長命令で極秘任務に参加しているだけだった。


それでも優秀だった。


無駄な質問はしない。


今夜の霧島の表情が真剣であることだけは理解していた。


一方。


山田真は毛無峠にいた。


風が強い。


山の夜気が身体に刺さる。


しかし心は不思議なほど静かだった。


十年以上。


準備してきたのだ。


逃げる理由などなかった。


「いよいよだな」


補聴器型通信機から霧島の声が聞こえる。


真は小さく笑った。


「ああ」


「緊張してるか?」


「してない」


「嘘つけ」


「少しだけな」


「俺もだ」


二人は笑った。


高校時代。


ラジコングライダーを飛ばしていた頃と変わらない笑い方だった。


「博樹君のためにも」


霧島が言う。


「成功させようぜ」


真は一瞬だけ目を閉じた。


博樹。


愛。


二人の顔が浮かぶ。


そして。


「もちろんだ」


そう答えた。


真は洞窟へと入った。


左手に大型スタンガン。


右手には金属製のケース。


その中にはビーコン搭載ドローンが一機だけ収められている。


これが作戦の要。


核の位置へ誘導電波を発信するための案内役だった。


洞窟を進む。


冷たい風が吹く。


腐敗臭が漂う。


生臭い。


まるで巨大な獣の腹の中を歩いているようだった。


やがて。


現れた。


黒ずくめの男。


一体。


二体。


三体。


次々に。


「来たな」


真は足を止めた。


男たちは無言で迫る。


相変わらず感情がない。


まるで機械人形だった。


「悪いが急いでるんだ」


スタンガンのスイッチを押す。


青白い火花。


轟く放電音。


バチィッ!!


先頭の男が悲鳴を上げる。


身体が崩れる。


黒い液体になる。


粒子になる。


消滅する。


だが。


次が来る。


また次。


さらに次。


まるで無限だった。


「ちっ!」


真は走った。


戦うためではない。


奥へ進むためだ。


今夜の目的は核。


末端個体ではない。


何十体も突破し。


何度も放電を繰り返し。


ついに。


巨大空洞へ到着する。


そこにいた。


核。


直径十メートル。


黒い球体。


洞窟全体の主。


侵略者たちの王。


その表面は生き物のように脈動していた。


まるで心臓だ。


巨大な悪意の心臓。


「お前が……」


真は息を呑む。


十年越しの宿敵。


ようやく目の前まで来た。


ケースを開く。


ビーコンドローンを取り出す。


小さなプロペラが回転を始める。


「飛べ!」


ドローンが上昇する。


核へ向かう。


高く。


高く。


順調だった。


だが。


突然。


機体が揺れた。


「なに!?」


映像が乱れる。


通信が切れる。


制御不能。


ドローンは空中で失速した。


核まであと少し。


しかし。


届かない。


「嘘だろ……」


真の顔から血の気が引く。


その瞬間。


背後から黒ずくめの男たちが雪崩れ込んできた。


数え切れない。


何百体いるのかも分からない。


「くそっ!!」


真はスタンガンを連射した。


男たちは次々に消える。


だが。


減らない。


増えていく。


ビーコンドローンは核と真の中間に落下していた。


取りに行かなければ終わる。


だが前へ出た瞬間、包囲される。


真は覚悟した。


「行くしかない」


胸を叩く。


カチリ。


カチリ。


カチリ。


次の瞬間。


衣服の内側に仕込まれた装置が起動する。


全身が青白い光に包まれた。


電撃装甲。


真が開発した最後の切り札だった。


黒ずくめの男が飛びかかる。


触れた瞬間。


絶叫。


消滅。


「どけぇぇぇぇぇっ!!」


真は突撃した。


電撃の鎧をまとい。


ビーコンドローンへ向かう。


全身に液体がまとわりつく。


窒息させようとしてくる。


だが止まれない。


止まれば終わる。


一歩。


また一歩。


愛の顔。


博樹の顔。


霧島の顔。


仲間たちの顔。


全部を背負っている。


こんな場所で死ぬわけにはいかない。


そして。


ついに。


ビーコンドローンを掴んだ。


「あと少しだ……!」


真は核の目前まで辿り着く。


震える手でスイッチを押す。


緑のランプが点灯した。


ビーコン起動。


成功だった。


その瞬間。


全身の力が抜ける。


空気がない。


酸素が尽きていた。


「あとは……頼んだぞ……」


金属の箱が真の手をするりと抜けた。


そして、真の意識が闇へ沈む。


目を覚ました時。


そこは檻の中だった。


変化した粒体で作られた黒い牢獄。


周囲には黒ずくめの男たち。


「なぜだ」


一体が尋ねる。


「なぜ我々の弱点を知っている」


真は笑った。


傷だらけの顔で。


「教えるかよ」


男たちの表情が歪む。


「何を企んでいる」


真は空を見上げるように笑った。


「そのうち分かる」


ビーコンは作動している。


今この瞬間も。


夜空の向こうから。


五千機の炎が。


核へ向かって飛び続けているのだから。


その時。


洞窟入口から轟音が響いた。


バチバチバチッ!!


電撃。


悲鳴。


爆発音。


「待たせたな!」


聞き慣れた声だった。


霧島蓮。


その後ろにはイデア社の社員たち。


全員が電撃装甲を装備していた。


「お前……」


真は呆然とした。


「どうして来たんだ」


霧島は笑う。


昔と同じ笑顔だった。


「決まってるだろ」


スタンガンを構える。


「友達だからだ」


そして。


その直後。


洞窟の奥から。


五千機のドローンが飛来する音が響き始めた。


人類初の反撃作戦。


群馬決戦。


その本当のクライマックスが、今まさに始まろうとしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。