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罪と英雄(SIN-HERO)  作者: 三川三山
第2部 真編
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第3話 天才技術者

あの出来事から2年ちょっとが過ぎた。


真は東京大学工学部を卒業した。


ロボット。


通信。


電子工学。


どれも彼の大好物だった。


子供の頃から機械が好きだった。


分解しては組み立てる。


壊しては直す。


そういう遊びばかりしていた。


大学ではロボット工学に没頭し、趣味でラジコングライダーを作り続けた。


さらに一級アマチュア無線技士の資格を取得し、世界中の人々と交信を楽しんだ。


通信技術への情熱は少年時代に見た大阪万博から始まっている。


未来の技術。


未来の通信。


未来のロボット。


それらすべてが彼の心を捉えて離さなかった。


卒業後、真は携帯電話メーカーであるイデア社へ入社する。


当時の携帯電話業界は成長真っ只中だった。


小型化競争。


高性能化競争。


どの会社も必死だった。


そんな中で真は次々と成果を生み出した。


誰よりも技術を愛していたからだ。


やがてイデア社の携帯電話は爆発的なヒットを記録する。


端末メーカーだった会社は通信サービスにも進出した。


会社は急成長を続けた。


そして。


イデア社は巨大IT企業へと姿を変える。


「山田君」


社長室に呼ばれた時。


真はいつもの技術会議だと思っていた。


しかし違った。


社長の井出彬は椅子にもたれながら微笑んでいた。


「次の事業を任せたい」


「次の事業ですか?」


「家庭用ロボットだ」


真の目が輝く。


ロボット。


その言葉だけで胸が躍った。


「本気ですか?」


「ああ。本気だ」


「やります」


即答だった。


その瞬間。


井出は満足そうに笑った。


「言うと思ったよ」


それからの真は凄まじかった。


昼も夜も研究室。


休日も研究室。


自宅より会社にいる時間のほうが長かった。


だが苦ではない。


好きなことを仕事にできるのだから。


AI。


センサー。


アクチュエーター。


自律制御。


あらゆる最新技術を投入していく。


そして。


後にHEROと呼ばれるロボットの原型が誕生した。


研究開発は大成功だった。


家庭用ロボット事業は瞬く間に軌道に乗る。


その功績により真は取締役へ昇進した。


まだ三十歳にも届かない若さだった。




その頃には社長室へ出入りする機会も増えていた。


そして。


ある女性と親しくなる。


井出愛(いで めぐみ)。


社長秘書だった。


最初は仕事上のやり取りだった。


会議の連絡。


スケジュール調整。


来客対応。


そんな日常の延長だった。


しかし。


ある日、真は資料を抱えて廊下を急いでいた。


曲がり角で人とぶつかる。


資料が盛大に散らばった。


「あっ!」


「すみません!」


二人同時にしゃがみ込む。


そして目が合った。


愛だった。


「また徹夜ですか?」


愛が苦笑する。


「だいたい、そうなるな」


「無理しすぎです」


「愛さんもだろ?」


「私は仕事ですから」


「俺も仕事だよ」


「趣味でしょう?」


真は返事に詰まる。


愛はくすりと笑った。


それが始まりだった。


仕事帰りに食事へ行く。


休日に映画を見る。


気付けば一緒にいるのが当たり前になっていた。


真が技術の話をすると。


愛は楽しそうに聞いてくれた。


普通なら退屈する内容でも。


彼女だけは違った。


だから真はどんどん惹かれていった。


そして。


ある夜。


東京の夜景を見下ろせるレストランで真は言った。


「俺と結婚してくれないか」


愛は驚いた。


そして少しだけ泣いた。


「はい」


静かにそう答えた。


真が三十一歳になった年。


二人は群馬県高山村にあるロックハート城で結婚式を挙げた。


青空の下。


本物の城を背景に。


多くの祝福を受けながら。


幸せな時間だった。


そして一年後。


長男が生まれる。


博樹。


名付け親は愛だった。


「たくさん学んで、大きく育ってほしいから」


そう言って優しく息子を抱いた。


真も同じ願いだった。


この時の彼はまだ知らない。


その息子が。


いつの日か自分の意思を継ぎ、地球を守る戦いの中心人物になることを。


そして。


毛無峠で出会ったあの黒ずくめの男が、再び彼の前に姿を現すことを。

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