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第2話 黒い液体
群馬県の高山村役場へ到着した時、真は妙な違和感を覚えた。
助手席に座る男の様子がおかしい。
ずっと無言だった男が、窓の外を見つめながら眉をひそめている。
「着いたぞ」
そう言うと男は周囲を見渡した。
だが。
明らかに不満そうな顔をしている。
「……どうした?」
男はゆっくりと真を見た。
そして初めて怒りの感情をあらわにした。
真はそこでようやく気付いた。
「あっ!」
毛無峠。
長野県高山村。
群馬県高山村。
同じ名前の村だった。
「ご、ごめん! 長野県の方だと思ってたのか!」
男は無言。
だが怒っていることだけはよく分かった。
真は何度も頭を下げた。
しかし男の機嫌は直らない。
やがて男は立ち上がった。
すると。
その身体が崩れ始めた。
「え……?」
服が溶ける。
腕が溶ける。
顔が溶ける。
黒い液体になっていく。
まるで映画の特殊効果だった。
いや、それ以上だ。
現実ではあり得ない。
男だったものは完全な黒い液体へ変化すると、車のドアの隙間から流れ出した。
そして駐車場のアスファルトの上を走り去る。
「な……なんだよ、それ……」
真は動けなかった。
黒い液体は闇の中へ消えた。
残されたのは沈黙だけだった。




