第31話 そして日常へ
博樹とまどかは、今、机を並べて研究をしている。
そして、後ろのクレードル型チェアにはHEROが腰かけて本を読んでいる。
「博樹君、ちょっときてくれ」 福島教授から教授室にくるように呼ばれた。
教授室には多胡刑事と田口警部がそろって来訪していた。
多胡刑事はあらためて見てみると背が高く、精悍な男だ。
田口警部はとても穏やかでやさしそうな顔をしている。
「こんにちは。先日は大変お世話になりました。ありがとうございました」
「いやいや、こちらこそ、多くの国民を救ってくれてありがとうございました」
「あんなものが群馬県でうごめいていたなんて、考えただけでも恐ろしいよ」
「それでね、国民を救った博樹君とHERO君に警視庁の警視総監から感謝状を授与したいのだけれど、どうかな?」
「群馬県警察本部も本部長からの感謝状を授与したいのだけれど、受けてくれないだろうか?」
「いやあ、有名になってしまうと今後、捜査のお手伝いをする時に支障になるかもしれませんので、遠慮させたいただきます。」
「君たちならそう言うと思ったよ。あの未詳事件は国民には知らせないでおきたいので、こちらとしてもその方がありがたいと思っています。でも、功績を考えると表彰もしなければならないという意見も多くて困っていたというのが正直なところでした」
「そのかわり………これからも、なにかお役に立てる時には呼んでくださいね。ご協力いたします。」
「ありがとうございます。それはありがたいです。HERO君の力を生かして捜査をすれば、きっと早期解決ができますから助かります」
「そういえば、捕まえた敵はどうしていますか?」
「ああ。報告していなかったね。捕まえた黒ずくめの男は群馬県の科学捜査研究所に送ったが、核が消滅した時に消えてなくなったのだよ」
「でも、動いている時に、やつらの目的をさらに問い詰めたら、かなり白状していたよ。君の伯父さんの料理を食わせる条件でね。やつは黄色い農薬用タンクの中で人間形態に変化して飯を食っていたよ。出すと逃げちゃうからね。私もその隣で同じ料理を一緒に食べたけど、旨かったよ。」
「はい。星二つなんです。」 博樹が誇らしげに言った。
「やっぱりそうか。そうだよな。では、やつらが白状したことを言うね」
田口警部は手帳を見ながら以下のように話した。
「奴らの目的は、
・人間を奴隷にする
・黒ずくめの男たちが人間と融合して進化する
・進化して高圧電流という弱点を克服する
・政治家や国家元首など地位の高い人間に融合した後、その人間になりすまして国を奪う
・外国でも同様にして国を奪う
・言うことを聞かない国には地道にサブリミナル漫才をして国民の意識を操る
・最終的に世界征服をする
・地球のどこかにいるであろう仲間を探す。
・宇宙から仲間を呼ぶ。
・地球を核と黒ずくめの男たちだけの星にする。
だって。恐ろしいこと考えていたんだね。漫才だけなら面白いのにね。でも、外国語で漫才なんてできるのかなあ」
多胡刑事が言った。
「地球のどこかに同様の事件が発生する可能性があるということがわかったので、連絡手段のある国には情報提供したいと考えています。日本国内で同じことがあったら、今度は警察が万全を期しますので、お二人は今後、関わらなくて良いです。博樹君のお父様は立派な方だったのですね。お父様による粒体の研究成果や、倒し方など、とても参考になりました。お父様は地球を救った英雄です。これからも誇りに思って生きてください。」
「では、今後も、解決が困難な事件の際には協力をお願いすることがあると思いますが、よろしくお願いします。それでは、私たちはこれで失礼します」
二人の警察官は深々とお辞儀をして、最後に最敬礼をして研究室を後にした。
博樹にとっては、感謝状よりも、今回、父の足跡に触れることができたことで既に報われていた。
それ以上に、まどかと付き合うきっかけとなったことが一番嬉しかった。
博樹にとっては、これ以上のご褒美は必要なかったのだ。
研究室に戻るとまどかが「なんだったの?」と聞いて来た。
「警視総監と群馬県警察本部長からの感謝状を断ってきたよ。そんなことよりも、君と付き合えたことの方が嬉しいもの」と答えた。
「あなたらしいわね。でも、本当は、あなたのお父さんを探すのをやりにくくなるからでしょう?」
「それもそうなのだけれど、やっぱり、まどかちゃんといっしょに普通のありふれた日々をすごせることの方が一番いいんだ。」
他の学生が、研究で行き詰っていることをHEROに相談している。
福島教授を囲碁でやっつける方法を考えている学生もいる。
コーヒーを飲みながら、父がつくったドローンの研究を始めた学生もいる。
10億円を横領して僕たちの前から消えた父さんは、地球の平和を守った英雄だった。
自分たちもこの平和な日々がつづくことに貢献できてよかったなと思う博樹だった。




