第30話 父の痕跡
HEROはゆっくりと歩きながら言った。
「黒ずくめの男たちは……完全に消滅したよ。核がなくなった以上、再生はできない」
博樹は深く息を吐いた。
「終わったんだな……」
だが、胸の奥には別の感情が渦巻いていた。
――父さんは、ここに来ていた。
地下空洞の片隅に落ちていた金属箱。
古いイデア社のロゴ。
ドローンの設計図。
黒ずくめの男たちの粒子構造のメモ。
その全てが、父・山田真がこの場所で戦っていたことを示していた。
「父さん……何をしていたんだよ」
博樹は一部が溶けた金属の箱を抱きしめるように持ち上げた。
◆ 父のメモ
そこには、もう一つのメモが入っていた。
父の筆跡でこう書かれていた。
『未知の物質は増殖する。黒ずくめの男たちは粒体の集合体。核を破壊しなければ次から次へと生まれて止められない。ドローンはガソリンを吸い上げ核に特攻する物量兵器。10億円はその製作費用として遣う。家族を守るため。』
博樹は震える声で言った。
「父さん……僕たちを守るために……」
HEROは静かに頷いた。
「父さんは、黒ずくめの男たちの脅威を知っていた。だからイデア社を辞めて、10億円を遣って対抗手段を作ったんだよ」
「じゃあ……父さんは悪人なんかじゃなかったんだ」
「うん。 むしろ、誰よりも戦っていたと思う」
博樹は涙が止まらなかった。




