第24話 帰宅
まどかを家まで送り届けると、 福島教授が「寄っていきなさい」と声をかけてくれた。
だが、レンタカーを返却する時間が迫っていたため、丁寧にお礼を言ってその場を後にした。
車が走り出すと同時に、HEROが静かに口を開いた。
「博樹。万座温泉で見た黒ずくめの男たちのこと……話しておきたい」
「やっぱり、あの付近にいたんだな」
「うん。液体になったり、人型に戻ったり…… あれは人間じゃない。記録映像はすべて保存してある」
博樹は深く頷いた。
「明日、警視庁に提出しよう」
レンタカーを横浜で返却すると、二人は伯父のビルへ向かって歩き出した。
夜の街は静かで、遠くの車の音だけが響いていた。
博樹は骨伝導式イヤホンマイクをつけ、HEROとひそひそ話を始めた。
「黒ずくめのやつら……今日は何をしていたんだろうな」
「目的は不明。でも、群馬県の地下資源を狙っているのは確かだと思う」
「液体になって逃げて、また人型に戻る…… あれ、全部ナノマシンなのか?それとも宇宙人か?」
「どちらも可能性はある。ただ、あの動きは……地球の技術とは思えない」
二人は推理を続けながら歩いた。
そして、店の暖簾をくぐると―― 伯父の井出彬が慌てた様子で出迎えた。
「頼む、手伝ってくれ。今日は客が多いんだ」
二人は笑顔で頷いた。
「伯父さん、三日も留守にしてごめんなさい」
「いいんだよ。バイトに来てもらっていたからね……黒いスーツの男が短期バイトで手伝ってくれたんだよ」
博樹とHEROは一瞬、固まった。
「最初は黒いサングラスをしていたから、なんだこいつと思ったんだけどね。 白い割烹着に着替えさせたら、これが結構動きがいいんだ。だけど、時々、俺が料理を作っているのをじーと見ていたんだよなー。今日は来ていないけどね」
博樹は心臓が跳ねた。
「伯父さん……その人の名前、わかりますか?」
「なにかあったのかい?」
「食堂の混雑が落ち着いたらお話しします。今は、お手伝いします。」
こうして食堂が閉店になると、母の愛が閉店準備をしているのを横目に昼間の話の続きを始めた。
「最近、黒ずくめの男たちが犯罪に関わっているらしいんです」
伯父は驚きながらも、 履歴書を持ってきてくれた。
「これ、HEROに記録させてもいいですか?」
「もちろんだよ。警察に提出するなら協力しなくちゃな」
HEROは履歴書をスキャンし、データを保存した。
――黒ずくめの男たちは、すでに博樹の生活圏にまで迫ってきていた。
翌日。 博樹とHEROは警視庁を訪れた。
多胡刑事が在勤しており、二人はすぐに面会できた。
HEROは空中プロジェクション装置で万座温泉での望遠映像を映し出した。
山奥でうごめく黒い影。 液体化し、また人型に戻る異様な姿。
さらに、伯父の食堂に短期バイトで来た男の履歴書も提示した。
多胡刑事は深刻な表情で言った。
「液体になったり、人型になったり…… ずいぶん忙しいやつらだな」
その声には、 冗談めいた響きと、 本物の危機感が混じっていた。
「二人とも、くれぐれも無理をしてくれるなよ」
「はい。提出した映像は普通に旅行をしていた時のものなので、無理はしていないです。」




