第21話 スマートフォン
博樹のスマートフォンは、いつも最新式だった。
伯父の井出彬を慕う、かつてのイデア社の部下たちが新製品が出るたびに必ず三台も持ってきてくれるのだ。
伯父、母、そして博樹。
三人でそれを分けて使っていた。
ロボット学会でHEROの研究発表をした日も、博樹はそのスマートフォンをポケットに入れていた。
そして――発表の最中に、タイニー・エヴォルブがそのスマホへ転送されて来た。
あの瞬間を思い返すたびに、胸がざわつく。
「……偶然じゃない」
博樹は確信していた。
タイニー・エヴォルブは、博樹のスマートフォンを狙って転送されてきたのだ。
そして、HEROのフィジカルAIと融合することを “最初から計画していた” のだ。
それはエヴォルブ本体だけの意思ではない。
そうタイニー・エヴォルブは言っていた。
――意思を持った人間がいた、と。
その協力者こそ、父・山田真ではないだろうか。
吸血鬼ドローンの制作費。
1台20万円、5千台で10億円。
父が会社から持ち出した10億円と一致する。
「父さん……本当に関わっているのか?」
胸の奥が重くなる。
そして今、未知の敵が博樹の周辺に踏み込んできた。
正確には、こちらから敵の領域に踏み込んでいったのだが―― その敵は液体に変化する。
絶対に人間ではない。
怪異か、宇宙から来た存在か。
いずれにしても、未知の敵と対峙するにはHEROとの通信機能が必須だった。
HEROのWEB接続は大学と警察から禁止されている。
だからこそ、デジタル無線トランシーバーの存在は大きい。
多胡刑事によると、あれから都内で黒ずくめの男たちの目撃証言はないという。
嵐の前の静けさのような、不気味な沈黙だった。
「父さんの10億円……タイニー・エヴォルブ…… 黒ずくめの男たち…… 全部、どこかで繋がっている」
博樹はスマートフォンを握りしめた。
そのスマホは、父の影と、未知の敵と、HEROの未来を繋ぐ “鍵” になっている気がした。




