第20話 捜査状況
ヴィランズのライブから一週間ほど経った頃、 研究室のドアがノックされた。
入ってきたのは――警視庁の多胡刑事だった。
「やあ、こんにちは。博樹君。HERO君」
多胡刑事は深刻な表情をしていた。
「ヴィランズの件だが……やはりテレビでもライブステージでも洗脳行為をしていた。あまりにも悪質だったため逮捕状を取ったが、事務所に乗り込んだ時には、すでに姿を消していた」
博樹は息を呑んだ。
「逃げた……?」
「所属事務所でもロボットとして登録されていたらしい。テレビ局にもライブスタジオにもロボットとして登録していた。だが、実態はロボットに擬態する”人間のようなもの”だ」
多胡刑事は腕を組んだ。
「正体はまだわからない。 だが、君たちが言っていた黒ずくめの男たち―― あれがヴィランズの人間形態である可能性が高い」
HEROが空中プロジェクション装置を起動し、ヴィランズの人間形態の映像を映し出した。
黒いスーツ、黒いサングラス。
無表情で、どこか“人間ではない”雰囲気。
多胡刑事は映像をUSBにコピーし、深く頷いた。
「助かる。これで捜査が進む」
◆ 黒ずくめの男たちの正体
一ヶ月後、多胡刑事が再び研究室を訪れた。
「都内某所に黒ずくめの男たちが出入りしているという通報があった。 内偵したところ、USBの映像と一致する者がいた」
博樹とHEROは身を乗り出した。
「それで……どうなったんですか?」
多胡刑事は重い口を開いた。
「がさ入れに入ったところ、黒ずくめの男たちは三十人ほどいた。だが――全員がバターのように溶けて液体になり、流れるように逃げていった」
研究室の空気が凍りついた。
「液体に……?」
「人間ではない。 警視庁では未詳事件として重点捜査を行うことになった」
多胡刑事は深刻な表情で続けた。
「そこでだ。 博樹君、君たちに捜査協力をお願いしたい」
「えっ……僕たちが?」
「HERO君の能力を見せてもらった。正直、その辺の警察官よりも優秀だ。ぜひ協力してほしい」
博樹はHEROと目を合わせた。
「……やるしかないな」
HEROは静かに頷いた。
◆ バディ捜査、始動
警視庁は、博樹とHEROの間で通信ができるように デジタル無線トランシーバーの使用を許可した。
博樹は第一級アマチュア無線技士の資格を持っているため、地球の裏側までの距離を通信できる高性能トランシーバーを作成した。
しかも、電波を傍受しても聞こえないように、特別な暗号化をかけたのだった。
HEROの体内のマザーボードのコネクタにトランシーバのハーネスをコネクトした。
デバイスドライバはHEROが回路図を見て自分でプログラムを作成した。
一方、博樹側は骨伝導式のイヤホンマイクにした。
「これで、いつでも連絡できるね」
HEROは嬉しそうに言った。
こうして――博樹とHEROの“バディ捜査”が正式に始まった。




